フジ月9ドラマに“胸キュン派”増殖中!~2016夏ドラマ総括(1)~

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2016夏ドラマ 指標別ベスト5

GP帯に放送される2016年夏ドラマ民放14本が終了しようとしている。

ビデオリサーチ社の視聴率と、データニュース社「テレビウォッチャー」での満足度と録画数でランキングすると、各指標のベスト5は図の通りとなった。

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今のところ視聴率では、トップが日本テレビ『家売るオンナ』の11.4%。2位TBS『仰げば尊し』10.4%。3位テレビ朝日『刑事7人』10.3%と続く。二桁に乗ったドラマは以上の3本のみ。在宅率の下がる夏クールはドラマ視聴率が低迷し勝ちといわれるが、今夏はオリンピックの影響もあり過去5年で最低となった。

5段階評価で示される満足度では、トップがフジテレビ『HOPE』の4.11。2位TBS『仰げば尊し』3.91。3位日テレ『そして、誰も~』3.88。そして録画数では、トップが日テレ『家売るオンナ』の62.1人。2位フジ『好きな人~』50.3人。3位日テレ『そして、誰も~』49.1人と続く。

視聴率とは、放送に合わせてリアルタイムで番組を見る世帯の比率。今のところスポンサーからの広告収入に直結する最も重要な指標となっている。いっぽう満足度は、実際に番組を見た人の内容に対する評価となる。ドラマの平均は3.6~3.7だが、夏クールでは7本が平均を上回った。つまりドラマの視聴率は低迷したが、内容に対する評価は必ずしも悪くなかったようだ。

そして録画数は、自分の都合にあわせて視聴するために録画した人の数を意味する。「じっくり見たい」など、番組に対する関心の高さを示す指標と言えよう。リアルタイムを前提とする視聴率は芳しくないが、逆に録画再生視聴は近年どんどん旺盛になっている。

以上3つの指標を勘案すると、今クールのベスト5は日テレ『家売るオンナ』・TBS『仰げば尊し』・日テレ『そして、誰もいなくなった』・フジ『好きな人がいること』・テレ朝『初めまして、愛しています。』となる。また3指標のどれかで5位以内に入ったドラマとすると、『好きな人~』『HOPE』『ON』の3本を入れてきたフジの健闘ぶりが目立つ。特に本日最終回を迎える月9『好きな人~』は、視聴率低迷が目立つ同枠にあり、F1(女20~34歳)を捕まえる“胸キュン”路線の可能性を示している。

というわけで2016夏ドラマ総括の1回目としては、かつて一世を風靡し今新たな路線を模索しようとしているように見える月9の考察から始めたい。

世帯視聴率で苦戦するフジ月9

ビデオリサーチ社によると、過去40年ほどの間に放送された一般ドラマ“ベスト20”の中で、この四半世紀に放送されたのは12本。うち5本を月9が占めている。

歴代 7位:「ひとつ屋根の下」第11回   :37.8%(1993年)

歴代11位:「HERO」第8回と最終回  :36.8%(2001年)

歴代12位:「101回目のプロポーズ」最終回:36.7%(1991年)

歴代13位:「ロングバケーション」最終回 :36.7%(1996年)

歴代18位:「ひとつ屋根の下2」最終回  :34.1%(1997年)

ただし以上のように30%台が出ていたのは90年代から2000年代初めのこと。その後視聴率はじわじわ下がり始めた。月9の年間平均視聴率で見れば、20%を超えたのは01年が最後。木村拓哉主演の『HERO』が放送された年である。

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その後13年からは、年間平均は15%も切るようなった。個別シリーズとしては『ガリレオ』『HERO』などが相変わらず高視聴率をとっていたが、それらに匹敵する新たな大ヒットは出なくなっていた。そして今年は、ついに年間平均が一桁で終わる可能性が濃厚だ。トレンディドラマ全盛期を象徴した月9は、視聴率だけでみると今や並み以下の番組になり始めているのである。

月9の新たな可能性

世帯視聴率は低迷しているが、月9ならではの視聴傾向は健在だ。その最たるものがF1(女20~34歳)の占める割合の高さ。スポンサーから見ると、商品の購買意欲が旺盛で、かつCMによる影響が大きい層となるので、視聴者に占めるF1率の多寡は注目すべき指標となる。

夏クールでも『好きな人~』のF1率は25.2%と、他のドラマを大きく引き離した。ちなみに同様に若者を描いた日テレ『時をかける少女』は14.8%、TBS『仰げば尊し』は12.3%だった(以上、「テレビウォッチャー」1000人シングルソースパネル調査)。テレビ離れと言われて久しい若年層に、20代の恋愛を真正面から描いた月9が今も一定の支持を得ていることがわかる。

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しかも過去5クールで月9を比べると、テーマ設定や出演者の年齢により、明らかに各種指標に違いが出てくることがわかる。視聴率では15年秋クール『5→9 ~私に恋したお坊さん~』がトップ。視聴率が高くなり勝ちな季節という点を差し引かなければならないが、石原さとみ・山下智久のコンビも大きかったようだ。「テレビウォッチャー」に答えたモニターの声には、「山ピーかっこいい」「山ピーの純粋さにきゅんきゅん」共にF1・「さとみちゃん可愛い」F2など、キャスティングを評価する声が多かった。F1率も23.9%とかなり高い。

15年夏クール『恋仲』も視聴率・F1率ともまずまずだ。「青春を思い出しドキドキ」「福士蒼汰がかっこよかった。キュンキュンした」共にF1・「懐かしい感じ」M1と、幼馴染からの恋愛ストーリーに、若年層の手応えは十分だったようだ。担当プロデューサーは、「昨今のドラマの多くが高い年齢層をターゲットにしている中で、あえて若い視聴者が熱狂できるようなラブストーリーを作りたかった」と語っている。狙いはある程度当たったと言えよう。

ところが16年冬クール『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』は視聴率・F1率ともに今ひとつだった。「切ない」F1・「感情移入してしまった」F2など、高く評価する声も少なくなかった。ところが「全体的に暗かった」「めんどくさそうな話」(共にF1)など、辛い過去を背負う若者2人の物語に乗れない視聴者もいたようだ。特に『ラヴソング』になると、満足度でも低迷してしまう。「見ていてイライラする」「あまり面白くなかった」(共にF1)などの声が少なくなかったが、吃音症のために対人関係に苦手意識を持つヒロインと元ミュージシャンの物語は、かつて『ガリレオ』で大ヒットとなった福山雅治を起用したにも関わらず若年層には届かなかったようだ。

そして今クールの『好きな人がいること』。視聴率はドラマが夏枯れし勝ちな季節だったこともあり、二桁には届かなかった。それでも『ラヴソング』よりは上がっており、満足度も回復している。特にF1率が傑出した点は特筆に値する。「かっこよいとかわいいが詰まっていた」「月9らしい」(共にF1)と評価も上々だったようだ。「夏の爽やかなキュンキュンドラマ」(F1)の声が象徴するように、夏・湘南・パティシエ・イケメン3兄弟などトレンディドラマ全盛期を彷彿とさせる設定は、確かに若年層に一定程度届いたようだ。

今年で21回目となる結婚相手紹介サービスのオーネットの調査によれば、交際相手がいる新成人は4人に1人。草食化や恋愛離れが進んでいると言われていたが、実は2011年を底に全体は下げ止まりにある。交際経験ゼロの新成人も減少し始めているという。

『恋仲』担当プロデューサーは、「(若年層を狙っていかないと)テレビドラマが終わってしまう」という危機感を持っていたが、確かに過去5回の月9を見る限り、“胸キュン派”視聴者が顕在化しており、そこをターゲットにしたドラマに可能性を感ずる。大人のドラマが増えている中、トレンディドラマ全盛期を担った月9には、何としてでも若者恋愛ドラマという王道の中で新たな路線を確立してもらいたいものである。