夏の音楽特番が、先月末から今月半ばにかけ、テレビ東京・日本テレビ・TBS・フジテレビの4局から放送された。

トップバッターが6月29日(水)に合計4時間強放送したテレ東の『テレ東音楽祭り』。

二番手は7月2日(土)、11時間に及んだ日テレの『THE MUSIC DAY 夏の始まり』。

次が7月16日(土)、8時間ほどのTBS『音楽の日』。

そして最後は7月18日(月)、11時間ほどのフジ『FNSうたの夏まつり』だった。

音楽特番の視聴率

各局とも複数のパートからなる長時間の特番だったが、視聴率では14.2%を獲った日テレ『THE MUSIC DAY』第3部がトップ。続いて10.9%のフジ『FNSうたの夏まつり』第2部。僅差で10.6%のTBS『音楽の日』第2部が3位。そしてラストが7.9%の『テレ東音楽祭り』だった。

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歴史が最も古いのはTBS『音楽の日』。2011年に始まり、今回が6回目。中居正広と安住紳一郎アナが6回すべてで司会を務めている。今回のテーマは“ツナグ”。尾崎豊の息子・尾崎裕哉がテレビで初めて歌ったり、被災地とスタジオを生中継でつなぎ、松山千春が「大空と大地の中で」を300人と合唱したりした。6回の視聴率では、11年の初回第1部が16.2%で最も高く、その後は10~11%台で推移している。

TBSの次に始めたのが、フジテレビ。12年の司会は草なぎ剛と高島彩、13~14年が草なぎ剛と加藤綾子。15年からは渡辺建と森高千里に代わっている。当初3回の視聴率は14%台だったが、去年13%台に落ち、今年初めて昼からの11時間放送としたが、G帯の第3部でも10%台と率下落に歯止めがかかっていない。他局と比べ、ジャニーズから11組・62名と最多出演だったが、数字にはつながらなかったようだ。

3番目に音楽特番を夏に組んだのは日テレ。嵐の櫻井翔・羽鳥慎一・徳島エリカアナの3人が4回すべてで司会をしている。『嵐にしやがれ』との特別コラボや、恒例のジャニーズ50人シャッフルメドレーが威力を発揮して、4回すべてで視聴率14%以上。ただし14年の16.0%、15年15.2%から今年は14.2%とやや勢いが衰えているように見える。

そして2014年の開局50周年を記念して始まったのが『テレ東音楽祭り』。14年の第一回は、五木ひろし・北島三郎・小林幸子・坂本冬美など演歌歌手が大半を占めた。ところが2回目からはポップスの歌手中心の構成に変わり、今回は『THE★カラオケバトル』『たけしのニッポンのミカタ!』などテレ東人気番組とのコラボ色が強まった。ところが視聴率は初回の9.7%が最高で、他局と出演者がかぶるようになった2~3回は6~7%台とあまり奮わない。

音楽特番はどう見られたのか?

各局それぞれの変遷を経て迎えた今年の4特番。視聴者の評価はちょっと興味深い結果となった。データニュース社が同じ1000人に対して毎日行っている視聴実態調査に基づく分析である。

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視聴率トップの日テレ『THE MUSIC DAY』は、録画した人も1000人中43人と他局を大きく引き離して1位だった。そして視聴者におけるF1(女20~34歳)の割合も22.5%と他局を圧倒した。櫻井翔の司会、『嵐にしやがれ』との特別コラボ、ジャニーズ50人シャッフルメドレーが、量的評価では大きな力になっていたと思われる。

ただし質的評価では、F1を含めジャニーズファンの女性が占める割合が高かったために、満足度は3.42と3位に甘んじてしまった。さらに次回の番組に対する視聴意向も、3.73で3位に終わっている。

「ジャニーズシャッフルはもっとゆっくり見たい」(F2・女35~49歳)

「エグザイル一族を贔屓しすぎ」(F1)

注文の多い視聴者をたくさん抱えたが故に、質的評価が厳しくなったようだ。ただし企画力を評価する声は確かに多い。

「嵐のイベントや、『嵐にしやがれ』とのコラボ企画は面白かった」(F1)

「パフォーマンスの演出が良かった」(M1・男20~34歳)

「いろんな局で同じような番組をやっているが一番楽しい」(F3・女50歳以上)

一見低めに出ている質的評価だが、企画内容に深く突っ込んで高く評価している人も少なくない。

日テレと同様に、視聴率や録画数など量的評価が高いのに、満足度や次回視聴意向など質的評価が低いのがフジ。量では2位なのに、質では最下位となってしまっている。やはりF1の含有率が高いために、厳しい声が散見される。

「女性アイドルメドレーが酷かった。思わず消音にした」(F1)

「好きなアーティストが出る時間帯をもっと詳しく教えてほしかった」(F1)

さらに、音楽特番が4局中最後となり、企画に対する食傷感も響いたようだ。

「各局の出演者がほとんど同じ。各局季節分散開催をお願いします」(M3・男50歳以上)

「結局、どの局もやるとこ同じなんだよね。早いもの勝ちかな」(M2)

日テレやフジと真逆で、量的評価はいまひとつだが、質的評価が高くなったのはテレ東とTBSだ。

背景としては、F1など若年層の比率が低く、F3・M3の中高年の比率が高いことがある。視聴者の中で50歳以上が占める割合は、テレ東で42%、TBSでは49%にも及んだ。質的評価で、満足度は3.72でテレ東がトップ、3.67のTBSが2位。次回視聴意向では、TBSが1位、テレ東が2位となった。

「(対テレ東)懐かしく当時を思い出しながら楽しめた」F3

「(対テレ東)懐かしい曲が多く子どもと盛り上がった」F2

「(対テレ東)非常に懐かしい歌がいっぱい出てきた。思わず歌ってしまった」(M3)

「(対TBS)音楽って素晴らしいなと思える場面が多々あって、時には涙して時には笑顔になって、とても楽しい一日だった」(F3)

「(TBSに対して)音楽の持つ力の大きさを感じることができ心温まりました」(F3)

高評価の企画あり!

以上が量的および質的評価の概要だが、今回の4番組の中では、震災と関連させた企画に特に高い評価が与えられていた。TBSの松山千春・フジの桐谷健太のコーナーだった。TBSは、被災地の福島・宮城・岩手・熊本と東京のスタジオを5元同時生中継でつなぎ、松山千春が「大空と大地の中で」を300人と合唱した。フジでは、桐谷健太が東日本大震災で影響のあった岩手県大槌町を訪れ、子どもたちに歌のプレゼントとして「海の声」を贈った。

「特に松山千春の歌声に感動した」(F2)

「(桐谷健太の)熱唱する姿が特に印象的でした」(M3)

「(桐谷が)“海の声”を歌ったのに感動した」(M2)

もう1つ、TBSの“尾崎豊の息子・尾崎裕哉のコーナー”にも称賛の声が多く集まった。

「鳥肌立った」(F2)

「(尾崎裕哉の)お母さんへのアンサーソング泣けました」(F3)

“長すぎ”&“重なり過ぎ”

音楽の長時間特番は、様々なアーティストの懐かしい曲が披露されるため、多くの人がそれぞれの思い出を歌に重ね合わせ、“生”をしみじみ味わっているようだ。その意味では貴重な機会を提供する番組になっていると言えよう。ただし同じ時期に4局が同じような出演者で、同じように長時間放送する事態には、確実に反発の声も高まっている。

「懐かしい歌も聞けたけど、長すぎて退屈する」(M3)

「どこの局も出演者が似たり寄ったり。結局、どの局もやるとこ同じなんだよね」(M2)

「各テレビ局ともこの時期、同じ様なロングランの歌番組を放送していますが、それほど大きな違いも無く、何が何やら分からなくなります」(M3)

放送時期の重なり、長すぎる尺、ジャニーズや女性アイドルグループがどの番組でも大きなウェイトを占めている事実など、局側ももっと配慮をした方が良さそうだ。TBSやフジの震災関連の企画や、TBSの尾崎豊と息子の裕哉コーナーに高い評価が集まるのも、全局が一色に見える中で異彩を放っているからだろう。

“なぜ今それをやるのか?”は、放送の原点である。単に「期末期首だから」「長時間編成は話題になりやすいから」など、送り手の論理だけに胡坐をかくのではなく、視聴者が感動し納得する企画を開発するなど、音楽特番を良い方向に進化させてもらいたいものである。