何とユニーク!『真田丸』の見られ方~1000人追跡調査が暴く意外な視聴実態~

『真田丸』ホームページから

 NHK大河ドラマ『真田丸』が好調を維持している。

 視聴率は、初回19.9%・2回目20.1%と久々に20%前後の好スタートを切った。その後すこし下がり始めるとネガティブな声が喧しくなったが、多少の上下動はあるものの第5話19.0%、第18話19.1%と粘り強く数字を維持している。当初4回が20%を超えた『江』(2011年)も、実は11回目には15.7%と4分の1以上の視聴者を失うことがあった。『平清盛』(2012年)も、6回目には4分の1の視聴者を失った。中には10回目に4割以上の視聴者を失った『八重の桜』(2013年)の例もあった。如何に『真田丸』が善戦しているかがわかる。

シングルソースパネルによる視聴実態調査

 それでも視聴率に拘り、何かとケチを付けたがる方々に、今日は視聴率以外の指標を使って、『真田丸』の見られ方が如何にユニークかをご紹介したい。ドラマの意外な側面に気づき、視聴率だけで評価することが如何に浅薄か気づいて頂けると考えるからである。紹介するのはデータニュース社が今年から導入した「テレビウォッチャー」のシングルソースパネル調査。同じ1000人の視聴実態を継続的に追いかけたものである。

 例えば今年1月スタートのドラマで、初回から7話までを見続けた人の比率を見ると(注1)、フジ『ナオミとカナコ』が初回視聴者57人のうちの38.6%と最も高かった。2位はテレ朝『警視庁ゼロ係』で、初回視聴者39人中38.5%で、両ドラマはほぼ同じ比率。ただし初回の満足度は共に3.6台と普通の成績に過ぎない(注2)

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 次に継続視聴率が高かったのは、3位がフジ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』で34.2%。4位もフジ『フラジャイル』31.4%となった。『いつ恋』の初回満足度は3.77、『フラジャイル』は3.86と両ドラマは高い部類に入った。そして継続視聴率が極端に低かったのは、共に日テレとなった。『火村英生の推理』が14.6%、『怪盗山猫』は12.1%だった。初回の満足度は3.52と3.23。最も低い方に属する。

 こうして見ると、満足度の高いドラマは継続視聴率が高い傾向にあり、満足度が低いと継続視聴率も低くなると言えそうだ。ただし例外もある。例えば4位『フラジャイル』は、初回満足度が3.86、次回の視聴意向で「絶対見る」と答えた人の率も47.1%と断トツだった。それでも実際には、満足度が平均並み、かつ「絶対見る」率35.9%の『警視庁ゼロ係』に、継続視聴率で7ポイントも負けてしまった。

 実は『警視庁ゼロ係』は初回視聴率7%、その後多少の上下はあるものの、最終回も6.9%とあまり大きな変動はなかった。録画数も初回31と多くなく、最終回には8掛けまで減っている。つまり多くはない固定ファンが見続けたが、途中から見始めた人も少なく、録画視聴に転じた人もなかったと推測される。

 一方『フラジャイル』の視聴率は、9.6%から最終回は10.5%と尻上りだった。録画数も初回60と全ドラマの中で最も多く、最後までその数字は減らなかった。「絶対見る」率の高さから推測すると、リアルタイムで視続ける人こそ減ったが、途中から見るようになった人が一定程度いたために、視聴率は下がるどころか逆に後半上昇した。しかも内容の良さから、録画再生で自分の好きな時間に落ち着いてじっくり見るようになった人が多かったと考えられる。つまり良い作品と多くの人が認定したドラマだった可能性が高いのである。

『真田丸』の見られ方はユニーク!

 さて、今回の本題は『真田丸』の見られ方である。同じ時期にスタートした同作品は、民放の他のドラマと比べ、同じ1000人の視聴者の見方はどう違っていただろうか。

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 まず初回視聴率は、民放トップだったテレ朝『スペシャリスト』と良い勝負だった。共に満足度・次回絶対見たい率も高かった。ところが『スペシャリスト』の視聴率は右肩下がりとなり、最終回までに5ポイント以上を失った。実は同ドラマの録画数は最後まであまり減らなかった。テンポの速い展開に、録画再生でじっくり見る人が増えた可能性がある。そしてリアルタイムで視ていた人の満足度や次回絶対見たい率では、共に徐々に下がってしまっていた。録画再生に回ってしまった分を、新たに見始める人で補うだけの吸引力に欠けていたようだ。

 一方『真田丸』は少なめで始まった録画数が、その後もあまり増えない。登場人物の多さ、人間関係の複雑さ、歴史ものという難しさから言えば、当然録画再生視聴が増えても不思議ではない。ところがそうなっていないところを見ると、土曜午後の再放送やBSで先行放送があるため、録画再生に回る人がさほど多くなかったと推測される。現にBS先行放送の視聴率は初回3.3%から、次第に上昇しここ数回は5%台まで増えている。土曜午後の再放送も含めると、累積視聴率は25%を超え、録画再生視聴率も含めると30%超の“お化け番組”である可能性がある。

 質的な評価結果は一段と面白い。初回3.81で始まった満足度は、次第に高くなり傾向にあり、3.9~4.1台を行くようになっていた。次回絶対見たい率も、初回は44%だったが、徐々に高まり60%台が普通になっている。「絶対見る」「たぶん見る」を含めると、90%超が当たり前、6・11・12・13話に至っては97%以上が「次回視聴意向」を示している。しかも新たに視聴する人も毎回数人存在している。つまり日曜9時枠の視聴率は上下に変動することはあっても、事情でその時間に見られなくとも録画再生や土曜の再放送、あるいはBSの先行放送を見ており、視聴総数は大きく変動していないと考えられる。世帯視聴率20%以上に相当する人々の心を掴み、18話を終えても大きく逃げられていない作りは、やはり“お化け番組”の名に相応しいであろう。

待たれるドラマ評価のイノベーション

 では『真田丸』の勝因は何か。相手の心を探り、交渉を有利に運ぼうとする武将たちの息を飲む心理戦、男女のコミュニケーションが成立していない様を露呈させるチグハグな会話、表情だけで2分半持たせるなど役者の迫真の演技など、要因はいろいろあるだろう。これらを視聴者がどう受け止め、満足度評価、次回視聴意向、実際の視聴行動にどう出たのかは、シングルソースパネルゆえに具体的に分かる。その詳細な分析は次の機会に譲るが、視聴率だけに一喜一憂し、「行く末に暗雲!」「打ち切り必至!」などと無責任に決めつけない方が良い。

 いずれにしても、ドラマの視聴率は過去20年下がり続けている。特に近年の減少速度は顕著だ。しかし録画再生視聴など別の手段が視聴者にあるがゆえの部分も大きい。要はリアルタイム視聴の多寡だけでドラマの価値は測定できなくなったのである。この辺りを勘案して、業界関係者は早急に新たなドラマの評価指標をデザインすべきだと考えるが如何だろうか。

注1:今年1月スタートの民放ドラマでは、7話から10話と放送回数がバラバラなので、最小だった『警視庁ゼロ係』   にあわせ初回から7話まで全部見た人の比率を比較してみよう。

注2:データニュース社「テレビウォッチャー」満足度調査は、5段階で評価しているが3.6~3.7がドラマの平均値。