変わらないといわれる行政。だが、新たなる行政、新たなる行政改革が必要ではないか?

中央官庁街・霞が関のあるべき姿とは?(ペイレスイメージズ/アフロ)

本年5月、小泉進次郎衆議院議員を中心とする自民党の若手議員が厚生労働省を分割する改革案をまとめた。これに関しては、多くのメディアでも取り上げられ、話題になった。

この改革案の是非はともかくとして、橋本行革により、2001年1月に中央省庁の再編がなされて、すでに15年以上が経ち、さまざまな課題や綻びが起きてきているようだ。また、筆者が今年のはじめから若干なりとも行政に関わった経験からも、個々の官僚の方々は、現場で頑張っているが、従来の延長線上でどんなに対応しても、それだけでは、現場で起きてきていることに的確に対応できにくくなってきていることを実感する。また官僚の方々もかなりそのことに気づいてきている。

そのことは、多くの問題や課題が各省内だけで対応できないので、内閣府や内閣官房に、省庁横断の課題に対応するための多くの会議体できていることにも現れている。

ここでは、話をより具体的にするために、筆者が関わっている厚生労働省(以下、厚労省と呼ぶ)における事例を取り上げて、本記事に関連することを論じてみたい。

厚労省は、労働者の権利や福祉などが対象領域であるために、これまで往々にして何かを守ることを主眼とする省であった。ところが、社会が大きく変化し、すでにあるものを守るだけでは、その対象を守ることができないようになってきた。つまり、あるものを守ると共に、あるいはそれ以上に、起こりつつあることや今後起こることを予想しながら、それに対応していかないことには、今後の対象となるものだけではなく、現時点で対象であるものも守ることもできないような状況も生まれてきているということである。それは、別の言い方をすれば、厚労省は、「守り」の役所から、「攻め」の役所あるいは「守り」と「攻め」の両刀使いの役所に変わらなければならなくなってきているということである。

そのことを象徴する、2つの具体例をあげておきたい。

まず、本年8月に発表された「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」懇談会の報告書である。同報告書は、今後起きてくるであろうAI等の飛躍的かつ急速な技術革新によって、時間・空間における制約が激減し、既成の概念などから解放される。その結果、多様な働き方のチャンスが大幅に拡大し、そしてそのチャンスを生かしていく必要がある。そのためには、技術革新や産業構造の変化に即して、あるいはそれを先取りしていくために、働く人が適切に選択できるための情報開示や、再挑戦可能な日本型のセーフティーネットの構築などという新しい労働政策を構築していくことの必要性があることなどを指摘し、将来を見通した多くかつ多面的な非常に示唆を呈示している。

これはつまり、現在ある働き方や労働における問題や課題への処方箋を描いているのではなく、これから起こる社会の将来を予測し、そこからバックキャスト的にこれから向かうべき労働法制や福祉などの制度への提言をしているのである。

もう一つは、本年7月末に発表された「医療のイノベーションを担うベンチャー企業の振興に関する懇談会」の報告書「医療系ベンチャーをイノベーションの牽引車に! 『規制から育成へ』『慎重からスピードへ』『マクロからミクロへ』」だ。

ベンチャーといえばこれまでは、主に経済産業省の独壇場の分野であったが、その成果が大きく生まれてきたとは言い難いところがある。それは、経産省には、必ずしもベンチャーに結びつく現場がないことも原因であるといえる。

それに比して、厚労省には、病院や製薬会社などの多くの医療現場が密接に関係している。そのことを考えれば、同省が、これまでベンチャーに関わってこなかったことが不思議なくらいだ。

このような状況も踏まえて、同報告書は、厚労省の医薬品・医療機器行政は、規制を厳守させるという意識が従来は先行してきたが、今後は、ベンチャー等の取り組みを支援・育成するという視点に大きく変えていかなければならないと指摘している。そして、それを体現すべく、報告書のサブタイトルにある、「規制から育成へ」「慎重からスピードへ」「マクロからミクロへ」という3つの視点に基づいて、今後、厚労省が取り組むべき重要な施策を明確にした非常に画期的な内容の報告書になっている。

以上のことからもわかるように、このような報告書が立て続けに出された。従来の「守り」だけで済んでいた厚労省では、このような報告書が出るということは、たとえ懇談会の報告書であれ、考えられないことであった。

正にこの報告書に示されているように、厚労省は、社会の現在そして今後の大きな変化に対応していくために、労働分野でも厚生分野においても、「攻め」の役所に変わっていくことが必要であるといえるのであろう。

このような状況は、単に厚労省だけではなく、他の省庁においても起きてきていると考えるのが自然であろう。その意味において、先述したように橋本行革による中央省庁の再編から15年以上が経っていることを考えると、もうそろそろその中央省庁再編の評価や点検を行い、その今後に向けた動きを始めてもいいのではないかと考える。どうだろうか。