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今後の改憲論議を、仮説を立てて、大胆に予測する。

鈴木崇弘一般社団経済安全保障経営センター研究主幹
日本国憲法の改正論議は今後どう進むのか?(写真:ロイター/アフロ)

去る参議院選挙において与党が勝利し、同院でも改憲勢力がほぼ三分の二を占めることになった。これに伴い、安倍晋三総理の悲願である改憲の可能性が、正に現実味を帯びてきた。

日本が第二次世界大戦に敗北し、現行憲法である日本国憲法は、1946年11月3日に公布され1947年5月3日に施行されて以来約70年間改正されたことはない。

だが、同憲法の制定の過程などから、「押し付け憲法」などと主張する者なども存在しており、長らく与党である自民党はその結党以来、自主憲法の制定を党是としてきた。特に、その結党時の党幹部であり、安倍総理の祖父にあたり、総理にも就任した岸信介氏は、一貫して憲法改正の必要性を持論としながら、政治活動をし続けたといわれる。安倍総理は、その岸元総理の影響を幼少期から強く受けて成長し、憲法改正への思いは、非常に強いといわれる。

このような状態の中、国内においても、憲法改正に関するさまざまな動きや反対も起きてきている。特に、日本国憲法論議の中で、最も注目されるのは、いわゆる憲法9条の問題であり、護憲派の多くは、その改正により、日本は戦争に巻き込まれることを恐れている。

だが、筆者はその点に関して、別の仮説をもっている。それは、次のようなものだ。

・安倍総理は、現行憲法を何としても改正したいと考えている。

・安倍総理は、自衛隊を軍隊とし、日本を強い国にしたいと考えている。

・だが、憲法9条を改正するつもりは少なくとも現時点ではない。

一見すると、上記の仮説は矛盾しているともいえよう。だが、筆者は、安倍総理が、現行憲法を改正し、日本を軍事的にも戦える国にしたいが、憲法9条を変えるつもりはないと考えている。

それは、安倍総理は、国民や国会において多くの反対にも関わらず、昨年安保法制を改正し、日本は実質上集団的自衛権を有し、海外派兵ができるようにしたことで、実質上憲法9条をすでに変えてしまっているからである。であれば、今さら、反対が強くそして多く、国論を二分しかねず、その論議と改正に多くの時間やエネルギーが必要とされる同9条の改正に踏み込む必要はないのである。

しかも、安倍総理の自民党総裁としての任期は、党則変更で延期できようが、それにしても、大幅延長をすることは、政治的にもかなり困難である。また今後の衆参選挙の今よりも厳しいと予想される結果を踏まえると、野党や党内にも強い対応勢力はないにしても、安倍総理の時間的余裕は実はそれほどないのである。

これらのことを考えていくと、憲法第9条よりもむしろもっと国民や国会での支持を得やすく、ハードルの低いテーマ、例えば環境権の問題や第96条の憲法改正のおける国会の発議などの制度論に関する条文を加えるなり、変更することに着手するのではないかと考える。

それでもできれば、憲法改正を実現し、その改定と安保法制による集団的自衛権が認められてことを合わせ技として、実質上の憲法第9条の改正をしたことになるといえる。

また、それにより、戦後70年間行われることのなかった憲法改正を成し遂げ、祖父の岸元総理を超え、自己の願望を実現すると共に、安倍総理の名は歴史に残ることになるのである。

筆者のこの考えや論法はどうだろうか。読者の皆さんはどう思われるだろうか。

これはあくまでも、筆者の仮説に過ぎないが、その仮説と比較しながら、今後の安倍総理の実際の憲法改正論議の行方をぜひ注目していただきたいところである。

一般社団経済安全保障経営センター研究主幹

東京大学法学部卒。マラヤ大学、イーストウエスト・センター奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。日本財団等を経て、東京財団設立に参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・フロンティア研究機構副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立に参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与、城西国際大学大学院研究科長教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。㈱RSテクノロジーズ 顧問、PHP総研特任フェロー等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演等多数

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