「ピクニック」で地域を変え、社会に多くの可能性を創り出していきたい。

ご自身の将来ビジョン「新しい価値の創造」と書かれたフリップを掲げる對中剛大さん

「リ☆パブリカンNeo  Who’s Who…何故彼らは社会を変えたいのか? 2025年のリーダー像を探る…」 その3

(本インタビューは、WEBRONZAで掲載してきた「リ☆パブリカン」の新バージョンである「リ☆パブリカンNeo」として行ったものです。)

對中剛大 タイナカ_オフィス代表/ピクニックコーディネーター/ランドスケープデザイナー/GULIGULIプロデューサー

聞き手:鈴木崇弘(城西国際大学大学院国際アドミニストレーション研究科客員教授)

最近の日本社会は、閉塞感や停滞感が漂う。明るいイメージがない。

そんななか、「ピクニック」というコンセプトで、地域を変え、社会を変えようとしている方がいる。對中剛大さんだ。

「ピクニック」という言葉を聞くだけで、青い空、広々とした草原、笑顔や笑い声、走り回り子ども達等々が思い浮かび、心が浮き立つ。

對中さんは、食と地域を通じて人の交流を促し、新しい可能性を生み出す、世界で唯一の「ピクニックコーディネーター」だそうだ。

彼がなぜ「ピクニック」というコンセプトに思い至り、それを中心に活動をしているのが、その背景と思いを伺ってみた。

―「ピクニックコーディネーター」とはどんな仕事なのですか。なぜそれを始めたのかを教えてください。

對中剛大さん  建築やデザインが専門で、野球場をつくりたいと思っていました。野球場は日米で異なります。日本は野球場はほぼ同じ形です。米国の場合は、敷地に合わせて野球場が変わるのです。たとえば、極端にライトの距離が短かったり、雁行形していたり。また、米国では、野球場は「ボール・パーク」と呼ばれていて、野球を楽しむ広場であり、野球をしていない時も人が集まり、使われているところもあります。このように、その地域に合わせて特色をつくり建築をパブリックとして使えないものかと考えていたのです。

日本の家での、「縁側」は元々はコミュニティーの役割を果たすものでもあったと考えています。それが廃れてきて、家と街、コミュニティーの関係が変わってきていると感じています。そんなことから、街に対して家がどうあるべきかを考えないわけにはいかなくなるのです。

また場所やコミュニティーの価値を高めるには、風景をつくることも必要になります。それは建築や建物だけでは問題解決できないわけで、ハードとソフトを結び付ける必要がでてきます。

私は元々料理が好きで、ある時レシピをWEBで公開するお仕事をいただきました。単なる料理レシピではなく、そのレシピでつくった料理をお弁当として屋外に持っていくようにアレンジし、外と食が繋がり、人とのコミュニケーションを楽しむことができるツールにできないかと考えました。

このようにして、「建築やデザイン」と「食」という、ハードとソフトが融合してコミュニティーをつくったり、再生できるのではと考えたわけです。

―なるほど、それで「ピクニック」になるわけですね。では「ピクニック」について、もう少し詳しく教えてください。

對中さん  日本と欧米では、建築の意味が異なるのです。元来日本は、家の屋内で自然を感じるように作られてきたわけです。他方、欧米では、家は石造りでしたので、家に光がなかなか入らず自然を感じるには外に出るわけです。屋外を自宅の一部として使う。アウトドアリビング(outdoor living)と呼ばれるものです。

4年前に、公園の事例を見るためにフランスに行ったのです。公園はまだまだ日本ではあまり使われてないのですが、フランスでは、本を読んだり、日光浴をしたり、椅子を移動し自分のスタイルに合うように使用し、思い思いに使いこなしているわけです。私の考える公共の場所は使われないと意味はないわけで、自分が今つくっているものも使われていないと意味がものだと思います。

また魅力的に使われることで風景が良くなり、それが街の風景を良くすることに繋がると考えています。そのような公園などを使える人を育てることが重要だと考えたのです。そのための発信の仕方として、先に申し上げたハードとソフトを融合できる「ピクニック」が使えると考えたのです。ピクニックは、欧米では元々は貴族が食事を持ち寄りから交流することから始まったもので、その意味でも面白いと思ったわけです。

―具体的にどんなことをされているのですが。

對中さん  具体的には、自国の郷土料理を持ち寄り「料理」をきっかけに風土や習慣、思い出など語り交流する「Picnic Summit」、夢と夢を語り合い交流する「きっかけはピクニック」、自分のマンションの屋上をバルにしてコミュニティーの人々を呼んで街づくりをする「うちの屋上バル」や住宅街のまち開きの前に居住予定者が災害時の非常食の備蓄や食事などをして交流する「サバイバルピクニック」などです。

他のところでも、さまざまなイベント等をしていますが、食は会話のタネになり、コミュニティーづくりのきっかけになるのです。

―他に行っている活動はありますか。

對中さん  大阪府池田市にあるGULIGULI(GULI GULIはGREEN GREENの略)にプロデューサ―として関わっています。

ここは、荒木造園設計のショールームという役割も果たしています。程よい値段で飲食ができるカフェ、アーティストに発表の場を提供するギャラリー、地域のイベントや緑をテーマにしたワークショップなどを行うコミュニティールーム、屋久島の緑をテーマとしたガーデンなどから構成されていて、多くの方々の交流の場になっています。

ご存じのようにアートで生活できない現状があります。芸術予算や美術教育の時間も削減され、芸術に興味のない人が増えていると感じます。アートが身近にない現状です。それに対して、欧米では、自宅に絵画や作品を飾るなどアートは普段から日常にあるわけです。

そこで、GULIGULIは、アーティストのために、ギャラリーを設けたり、そこで行われるウェデイングなどのイベントで仕事を提供したりもしているのです。そのようにして彼らに、アートやモノづくりなどの多くの人々に作品を見ていただく、自己表現できるきっかけをつくってあげたいと考えています。そうすれば、伝統産業や価値あるモノが残っていけて、今は必ずしも価値のないモノの価値を上げることや価値あるモノの価値をさらに上げることができると思います。

また、GULIGULIでは、「みどりの教室」というのを開催しています。これは、荒木造園設計の職人さんなどが講師となって、苔玉づくりや多肉植物の寄せ植え、器の中で庭をつくる教室などを行っていて、みどりや造園などについて話をするものです。この教室を開催することで、造園会社は男の世界というイメージが元々強いのですが、今年は女性が1人入社することになりました。会社のイメージや価値が高まったのです。

この施設とは別に、個人でピクニック・ウェデイングというものも行っています。これは、ウェデイング・パーティーをつくるプロセスに多くの人を参加させて、その人たちをずっとつなげていくというものです。たとえば、使われていない庭や倉庫があるとします。参加者がその手入れや片づけをすることで、そこを安く借りて、パーティーをするのです。それをつくっていくプロセスやそのパーティーで、交流のきっかけを提供して、幸せのお裾分けをするのです。そしていろいろなジャンルの方が交わって、次の展開が生まれてくると良いと考えています。

ランドスケープデザイナーとしては現在大阪で既存の樹木を最大限に活かし、なるべく開発しないキャンプ場の設計をしています。グランピングが出来るほか自然を最大限に生かすことを価値としています。

また京都府の障がい者施設の広場の設計を行っています。施設の人々が工事や植栽管理などに関わりながら地域の人々を招き入れる場所を目指しています。

―大変面白いですね。最後に、對中さんの今後のビジョンを教えてください。

對中さん  将来、ピクニックをすることが活かせるランドスケープやコミュニティ-づくりもしてみたいですし、「ピクニック」に代わる新たなものも生み出したいとも思います。

また今の日本社会では、レールの上の決まった人生を必死に歩く人が多いわけです。それが、社会を生きにくくして、多くの問題や閉塞感を生んでいる面もあるのではないかと考えています。

そのような状況を変えるために、個々人の力を集めて大きなことが実現できる仕組みや窓口をもっと増やしたり、面白い事例をもっともっと増やしていきたいと思います。そうすることで、今後、社会でのチャンスが広がり、面白いことができる人が増え、個人が引き立つ社会のモデルをつくっていきたいと思います。

―本日は、前向きで明るく、楽しいお話しありがとうございました。

鈴木コメント

「ピクニックコディネーター」という言葉を初めて聞いたとき、私の頭の中は「?」でいっぱいだった。なんか単にチャラくて、遊びじゃないかと予想していた。だが、對中さんの話を聞いて得心した。

對中さんは、「ピクニック」に対して大真面目であり、それは自身の持つ専門とスキルそして趣味を掛け合わせて生み出されてきたものなのだ。對中さんは、建築やランドスケープの専門性を持ち、趣味である料理ができる、正に世界で唯一の「ピクニックコーディネータ」なのだ。

話を聞けば聞くほど、「ピクニック」への関心は高まり、その可能性への期待が高まった。ピクニックは実に面白い。しかも、明るく、誰でも気軽に参加できるイメージがある。コミュニティ-や人間関係そして社会を大きく変えていく潜在力がありそうだ。

對中さんの今後ますますの明るく自由な発想に期待していきたい。

對中剛大(たいなか・まさひろ) タイナカ_オフィス代表/ピクニックコーディネーター/ランドスケープデザイナー/GULIGULIプロデューサー

大阪府生まれ大阪市在住。成安造形大学住環境デザイン学科卒業。デザイン会社などに勤務後、フリーランスを経て、2014年タイナカ_オフィス開設。まちすべてを遊び場としてとらえ 「まちと人の接点を考える」をコンセプトにハードづくりのとしてのランドスケープデザイン、ソフトづくり、場所の使いこなしのピクニックコーディネーターとして、食事の提供を含めた活動に展開。2014年ギャラリーあべのま「ひるのま/よるのま」tetete project実施。2014 年プロデューサーとして関わるGULIGULIが大阪府第4回「みどりのまちづくり賞」受賞。さらに、グランフロント大阪の食に関するイベント「Umekiki」ディレクターやWEBでお弁当を紹介する弁当男子「webOSOTO」の運営者なども務めている。