これからの働き方においては、2つの「マネジメント」が必要になる!

多様な働き方に必要な新しいマネジメントとは?(写真:アフロ)

少子高齢化、人口減少社会においては、従来の手法や考え方においては、生産労働人口は確実に減少することが予想される。特に日本社会においては、そのような状況が急激に短期間で起きる(より厳密には、起きつつある)と考えられる。そのことは、日本社会の活力や経済などにおいて、大きな問題や課題をはらんでいると終える。

現在の安倍政権では、出生率の上昇などの政策を打ち出してきているが、たとえ出生率が短期的に改善、向上しても、子どもは当座そして当分は生産労働人口にカウントされることはないし、短中期的にはむしろ財政負担も増大することになるのであり、短期的には生産労働人口の増加に貢献することはない。

また近年では、移民や定住外国人に関する政策も徐々にではあるが、少しづつ議論されるようになってはきたが(注1)、日本の社会や経済状況を考えると、今後急激に定住外国人が、短期間に急増するということも考えられない。

このように考えると、現在日本で実際に生活している人々にまずはできる限り活躍していただくしかないといえる。そのことは、先に紹介させていただいた政策提言「新しい勤勉(KINBEN)宣言」においても、明確に述べられている。そのことは、性別、年齢別、障害の有無、人種や出自の別などの違いに関係なく、多種多様な人材に、本人が望む場合に、可能な時に、多様な働き方をしてもらい、全体としての労働力を向上させていくということである。また、安倍政権の推進しようとしている「一億総活躍社会」もその線に沿うものであると考えることができる。

だが、そのような働き方を可能にしていくには、従来とは異なるアプローチや方向性が必要とされることになる。

まず、社会や企業をはじめとする組織の側でも、多様な個々人の有する能力・スキルや時間を出来る限り有効かつ効果的に活かせる仕組みを構築していく必要が生まれる。その場合、組織内では管理(職)層にそれらの個々の人材をより的確に管理し、活かしていく「マネジメント力」が求められていくであろう。

より具体的にいえば、「日本企業は、システムと姿勢の両方の側面で変化が必要である。システムの側面では、企業が決めた職務と勤務場所を不平なく受け入れることを正社員に要求するモデルからの脱却が必要である。企業への貢献を望んでいるが、自分の仕事人生を自分でコントロールしたいと考えている人材をもっと活用することでこれが達成される。同様に、日本企業が、勤務場所と勤務時間に対して柔軟性を示し、職場にいた時間ではなく仕事の結果で社員を評価することで、多様な社員を効果的に活用することができるようになる」(注2)ことや複数のきめ細かな人事制度が必要である(注3)と考えられるのである。

このように、「個別化され、柔軟性があり、作業グループのニーズに応え、社員の満足度に焦点をあて、より流動的な労働市場を活用する人事管理アプローチは、全員により多くの時間と努力を要求するもので」(注4)もあるのだ。

資生堂は、女性の活躍の推進の重要性を認識し、女性の活用が最も進んでいる企業の一つであるが、女性の育成・登用を推進するにあたり、「一人別人材育成計画票」を作成している。同票には、従業員個別に作成されている育成シートであるが、上述したようなマネジメントや人事制度を実施していく上での参考になるであろう。

そして、このような組織では、先述した個人の状況と相まって、組織で働く個々人も、自分を守ったり、自己の状況を組織内(含上司、同僚、部下、組織)で的確に伝えられるような力も含めた「自律力(セルフ・マネジメント)」の力も問われるようになっていくと考えられる。

このような方向において仕事を進め、組織を運営させていく上で最も重要なことの一つは、「多様性」および「時間」を活かして成果を上げていける「マネジメント」なのである。つまり今後は「だれでも」「いつでも」「どこでも」(Whoever, Whenever, Wherever[3We])働ける社会や組織を目指すことになるだろうが、その場合の重要なポイントの一つが、「マネジメント」となるのである。

ここにおける「マネジメント」は、「さまざまな多様な人材」やそれらの人材の働ける「さまざまな時間」という多様なピースを、的確かつ有効に組み合わせて、仕事を完成あるいは遂行していくことになる。それは、写真や絵などを細かい様々なピースに切り分けたものを組み合わせて完成させるパズルである「ジグソーパズル」に似ており、「ジグソーパズル・マネジメント」とでも呼ぶことができるであろう。

このマネジメントは、同質性の高い人材を、拘束性の低い同質的な時間において、管理し成果を出してきた従来の日本型のマネジメントとは大きく異なり、人材の状況と組織や業務とをよりきめ細かく熟知し、調整しながら、出来る限り効率よくかつ最大の成果をだしていくものになるであろう。その意味では、マネジメントの立場にいる人材の能力と力量が、これまで以上に大いに問われることになる。

また、多様な人材が、どこにいても、自分の活用できる時間を活かして働くということは、上司のマネジメントと共に、社員にとっては、自分自身の生活と仕事をどのようにバランスをとりながら、よりよい成果をだしていくかという「自律力(セルフ・マネジメント)」が問われるということでもある。

このように、今後の多様な働き方を実現していくためには、「組織・上司によるマネジメント」および「個人のマネジメント」の両面を考慮しそれらに立脚した、「ダブル・マネジメント」とでも呼ぶべき、新らたなマネジメントを構築し、それができる人材および組織を育成していくことが必要となるのである。

(注1)たとえば、定住外国人に関する政策提言も作成されるようになってきた。たとえば、定住外国人政策研究会(協賛:未来を創る財団)が、最近「『定住外国人の受け入れ』に関する提言」および「政策提言『定住外国人受け入れビジョン』―明るい未来を創るために」を、2015年11月16日に杉田副官房長官に手交し、公表した。

(注2)『日本企業の者委員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』(ロシェル・カップ著、クロスメディアパブリシング刊、2015年) p266およびp210参照。

(注3)『ホワイト企業』(高橋俊介著、PHP新書、2013年)

(注4)『日本企業の者委員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』(ロシェル・カップ著、クロスメディアパブリシング刊、2015年) p297およびp210参照。