なぜ官僚主導になるのか?…政治・政策リテラシー講座17

  日本において政策形成が官僚主導だとよくいわれることがあります。皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか。

  日本では国民が主権者ですから、その代表である議員(特に国会議員)が、政策や法案づくりをすることにおいて、本来は主導的な役割を果たすべきはずです。しかし、実際にはそうなっていないのです。

政治やメディアでは、政策形成において、「政治主導」が必要であるとか、「脱官僚」すべきだなどということがよく主張されることがあります。そのようなことが主張されること自体、日本の政治や政策形成が実は官僚主導であるということを物語っているのです。

  では、なぜそのように「官僚主導」になっているのでしょうか。

  別の記事「議員内閣制とは?…政治・政策リテラシー講座13」でも書いたように、日本は議院内閣制をとっています。ということは、国会、特に衆議院で多数を取った与党が、総理大臣を選び、その総理を中心に内閣をつくるのです(いわゆる組閣です)。そして、その内閣の大臣が自分の担当の省庁(行政)をコントロ-ル、運営していくことになっています。

ところが、その大臣になる議員などは必ずしも自分の専門領域でない省庁の担当になったり、その省庁を長期間担当したりすることはめったにありません。また自分独自のサポートをしてくれる人材もほとんどもっていませんし、必ずしももてるようになっていないのです。それらのことから、多くの大臣、ひいては内閣は、コントロールするはずの官僚機構に多かれ少なから依存してしまうことになるのです(注1)。

また、日本の場合、法律は内閣提出法案(閣法)が中心ですが、その法律案のほとんどを作成しているのは、元々は官僚機構つまり官僚なのです。しかも、与党は、自分が組閣した内閣が提出する法案との整合性をとるために、国会に閣法を提出する前に、与党内部で、閣法の法案を審議・審査、調整し、党内の了解をとっているのです(注2)。しかも、その党内における審議や審査のプロセスでは、官僚が与党の政策を審議する会合に参加し、法案の作成や修正および説明、裏での調整など法案作成のかなり多くの部分を引き受けています。それを別のいい方でいうと、官僚なしでは、党内の審議などができませんし、議員も法案を作成していけないというのが現実なのです。これは、官僚以外に、党内人材や外部人材を含めて、そのような政策や法案づくりなどができる人材がほとんど存在していないからなのです。

議員立法の場合は、議員や他の人材がもっと主体的に動きますし、衆参の法制局などの立法補佐機関がサポートします。しかしながら、官僚機構と比較すると、それらの補佐機関はかなり脆弱で消極的です(注3)。また、議員立法の場合も、実は官僚がサポートしてことも多いのです。

  このようにして、日本の政策形成過程では、官僚および官僚機構が政策形成や政治において、主要かつ重要な役割を果たしているのです。

  そして、このような現状に即して政策形成過程が構築されてきているために、官僚でないか官僚経験のない人材が、政策や法案をつくったり、それらの作成に関わることは非常に難しい仕組みや対応になってしまっているのです。極端な言い方をすると、官僚の使う専門用語やノウハウなどがわからないと政策がつくれないようになっていて、日本のおける政策形成やそのプロセスが官僚機能の枠組みの中でつくられているのです。

その結果、官僚機構以外で政策形成に有効な力を発揮できる多様な組織(たとえば、海外にあるシンクタンク)や官僚以外の多彩で多元的な政策人材が生まれにくくなっているのです。

  

これらさまざまな要因から、日本では政策形成が「官僚主導」になっているのです。それを打ち破ろうという試みは何度かありましたが、「政治主導」は実現していないのです。

(注1)近代国家において、官僚機構が大きな力を持ってきているのは、日本だけではありません。そのような官僚機構をいかにコントロールするかということは、官僚機構なしでは機能しないということもあり、近代国家における大きな問題でもあります。

(注2)これを、事前審査といいます。民主党は、2009年に政権を取る前にはこの事前審査の仕組みを批判し、政権交代後その仕組みを廃止したのですが、結局はうまくいかず、現在の与党自民党内部では同様のことが行われています。

(注3)日本の立法補佐機関は、議院内閣制を採用する国々のなかでは、それなりに充実しているといわれています。『立法補佐機関の制度と機能…各国比較と日本の実証分析』(蒔田純著、晃洋書房、2013年)参照。