『断捨離婚』 「片付けられない」は離婚の理由だったのか?

手放す 手に入れる 人生は出会いと別れの繰り返し

「私、断捨離婚……離婚しました」

 その一言で始まった、断捨離シェア会での50代女性を紹介します。ご主人を突然の病で亡くした数年後再婚したその女性。出会って数か月でのスピード再婚でした。

「でも結局一緒に住むことなく終わったんです」

◆再婚は通い婚

 付き合い始めたばかりの時に招かれた男性の自宅の一軒家。「ここで一緒に暮らしてくれますか?」そう言われたのが真剣に結婚を考えるきっかけでした。しかしその時の男性の自宅はモノで溢れていて、女性は「ここには住めない」と思い、彼に自宅の断捨離をお願いしました。手伝おうかと女性は申し出ますが、その時男性は「自分でやる」と答えます。

 その後、付き合いは深まり入籍。彼の家が片付くまでお互いの家を行き来する通い婚をスタートさせます。

◆進まない断捨離

 しかし男性の自宅は一向に片付く気配がなく、いつまでも一緒に暮らし始めることができません。しばらくすると、彼が「やっぱり断捨離してほしい」と言ってきました。

 女性は時間を作り、彼が仕事で外出している間に断捨離を敢行。片付いた家の一部を彼は喜んでくれましたが、ねぎらいの気持ちをそれほど表してはくれず、女性はむなしい気持ちを抱き、半ば怒りも感じます。

 そのようなことが数回。通い婚状態のまま時は過ぎて行きました。

◆始められなかった新生活 婚姻関係を断捨離

 その後更に断捨離をすすめる中で、女性は家そのもののリフォームが必要だと感じます。けれども決して贅沢な新築新品を求めているわけではなく、普通に清潔で心地の良い空間を求めているだけ。しかし男性にリフォームの意志は一切ありません。女性が男性宅に足を運ぶ回数は減っていきました。

 最終的に、男性に「水漏れしたトイレの修理」さえする気が無いと分かり、その時点で一緒に暮らすことを諦めます。さらに、自ら手配して費用を支払うのであれば修理しても良いという流れになり、女性は離婚を決意しました。

◆断捨離で見えてくる

 このように『断捨離ができずに離婚に至る』という例はさほど多いとは言えないかもしれません。また逆に『断捨離をしたら結婚相手が見つかった』という例も実際にあります。一概に『断捨離をしたから結婚した、離婚した』ということではもちろんありません。

 ただ言えるのは『断捨離を続けていたら、見えてくることがたくさんある』ということ。それは相手だったり、自分の気持ちだったり。そしてその結果、出会いも別れも含め『新しい縁』につながることはあるといえるのではないでしょうか。

 この女性の例では、家が片付くまで自分のマンションで暮らす提案をした時、彼は一軒家にこだわり、また自分の住む町を出たがらず、『結局、結婚をしても、自分の生活や家を変える気が全くないんだ』とわかり、それが部屋を全く片付けようとしないことに表れていました。

 この女性が「彼と付き合う中で何か少しでも心に引っ掛かることがあると、そのたびに彼の自宅が思い出され、家とモノに向き合う彼の姿勢がそこに表れているような気がしていた」ことが、この女性の『断捨離婚』だといえるでしょう。

◆いい悪いではない

 この女性はずっと断捨離を続け、一緒に暮らす家族のモノも含めて自分の周りのモノと向き合い、自分の住む家や環境を整えてきました。一方の彼は断捨離をする意志がありませんでした。

 それでも誤解してほしくないのは、断捨離できないことを責めたり否定しているのではないということです。

 この女性が言うように「いい悪いではないのです。彼はこういう人。私はこう。断捨離を通してその確認ができた」それが大切なのです。

 断捨離はとても個人的なもの。するしないは個人の自由で、するにしてもその時期がいつなのか、出来る時やりたい時、本当に様々で、やりたいと思ったまま一生を終える人だっているでしょう。真摯に断捨離に取り組めば取り組むほど、その時期がその人のタイミングでやってくることは充分に理解でき、相手を尊重する気持ちも生まれます。断捨離はやりたい人が、やりたい時にすればいいのです。

◆離れた彼への感謝の気持ち

「でも、彼には感謝しています」

 女性は足の悪い父親が一人暮らしをしていて、普段の生活が少し不自由になってきているにもかかわらずほったらかしにしていることに少し罪悪感がありました。その実家に彼はマメに一緒に行ってくれたり、父親への気づかいや心配もしてくれました。しかし『いつか親と同居する』という選択肢が彼には全くないことがわかり、とてもさみしく感じ、同時に自分が父親と暮らすことを望んでいることに改めて気が付いたのだそうです。

 女性が離婚の報告に実家を訪れた時、自然と父親と一緒に暮らす話の流れになったそうです。

「彼はそれまで直視できなかった親とのことを考えさせてくれました。これは今本当に感謝していることなんです」。

 関係性を手放した後、別れた相手に感謝の気持ちを送れることも、とても断捨離のセオリーにかなっています。

◆断捨離を人生の選択過程の手助けに

 生病老死。人が一生を終えるまで、様々な出会いと別れが繰り返されるのが世の常。自分の意志で決められることばかりではありませんが、自らの選択が必要な局面も多々あるのも事実。

 この女性が自ら「断捨離婚した」と言うほどに離婚への過程で断捨離がヒントになったのであれば、自分自身の責任の下で選択したことなので、その後ご機嫌の日々を過ごすことができていることでしょう。

 そして断捨離をして手放すモノもあれば、その分手に入るモノもある。

 一人暮らしを続けていた父親を自分の家に引き取っての同居生活は、女性にとって手に入れた新しい生活。長い間離れて暮らしていた親との生活はいろいろ大変な面もありますが、今は本当に良かったと思っていると話していました。