『実家の断捨離』(7)~実家に住むという選択~

今の自分に必要な場所は?

 高齢の親が住む実家と溢れる荷物が気になる熟年世代を取り上げている『実家の断捨離』シリーズ。今回は断捨離の結果「実家に住む」という選択をした方を紹介します。

◆ケース1:家族5人で実家に引っ越し

 東京都在住の男性(46歳)は、今年の春、それまで一人暮らしだった母親が転出した実家に家族5人で引っ越しました。

 きっかけは、男性所有で賃貸に出していた実家近くの2LDKのマンションが空いたこと。9年前に伴侶をなくし一人暮らしの母親が、実家の二階建ての一軒家は段差が多く、10年先の事を考えて段差の少ないマンションで暮らしたいと希望したためでした。

 「いつか親が亡くなったら自分が実家に住むことになるかもしれないと漠然と考えたことはありましたが、思ってもみなかったタイミングでした」

 男性は妻と小・中学生の子供3人の5人家族。実は新築マンションを購入し暮らし始めたばかりで、家族は皆築33年の古い一軒家に引っ越すことに反対します。

 それでも、実家に引っ越せばマンションを賃貸に出し家賃収入が得られる、学区が同じで子供たちも転校せずに済み、実家の方が駅から近く利便性に富むなど、家族を説得し引っ越しが決定したそうです。

 母親は引っ越しに当たり必要なモノを持って行けるだけ持って行きましたが、1.5トントラック1台分は残り、これは基本すべて処分。男性の家族5人のマンションから実家への引っ越し時に出た不用品とあわせ1.5トントラック2台分になりました。

 この男性の場合、母親が将来を見越し自ら自宅(男性にとっての実家)の断捨離をすすめた流れで、二軒分の不用品の処分という断捨離が一気に進みました。

 「自分は昔住んでいた家に戻ったわけですし、特に不満はないです。いろいろいらないモノも一気に処分できたし、今回の引っ越しは満足しています」 

 お子さんたちからも今のところ不満は出ていないそうです。

◆ケース2:一人暮らしに見切りをつけて

 25年前に実家を出て東京で一人暮らしをしていた48歳の女性。賃貸マンションの更新が数か月後に迫り引っ越し先を探していました。プライベートで一区切りしたこともあり、思い切った断捨離を実行中でした。ところがなかなか引っ越し先が決まりません。

 そんな折、長野県の実家近くに住む姉から「父のお腹に腫瘍が見つかった」というメールが届きます。75歳を超えても誰よりも元気に動き回り、自身の会社を続ける父の突然の知らせ。

 「その瞬間『介護生活がとうとう自分にも回ってきたー』と思いました。そして部屋を探しても条件が合うところに全然出会えなかったことも、腑に落ちました」

 女性は東京で看護師をしながら一人暮らしを続けてきました。数年前までは結婚を考えて付き合っていた男性もおり、その人と一緒になったら両親に何かあっても帰れないかもと、漠然と考えていたそうです。「でも同時に、実家や実家のモノ、親の面倒も含めて『いつか何とかしなきゃいけない日がくるんだろうな』とも思ってて……よく考えたら矛盾しているんですが」。

 女性は実家に戻ることを決意。「せっかく地元に住む家があって、部屋も空いている。東京での一人暮らしにこだわり高い家賃を払い続けるよりも、実家で暮らせばその分のお金を別の事にも使えるし、将来にそなえることもできます」。

 幸いなことに父の精密検査の結果、腫瘍は良性。手術の必要もなく、姉からも「帰ってこなくても大丈夫だよ」といわれましたが、予定通り引っ越しをすすめました。

 大規模な断捨離をすすめていたので引っ越しの荷物こそ少なかったそうですが

「25年前に家を出る時実家の自室に残した自分の荷物が気になっていたんです。25年使わなかったということは、きっとほとんどがいらないモノなんですよね」と、断捨離を開始すると話していました。

断捨離と実家への移住

◆ハードルが低い?「実家に住み替える」という選択

 親が健在で実家があれば、誰しも、実家と実家の荷物は『いつかは何らかの形で片付けなければいけないと思っている』のではないでしょうか。今回紹介した方も漠然とそう感じていたといい、加えて『このタイミングで自分が実家に住むというのは直前まで予定も想像もしていなかった』といいます。

 そしてきっかけ一つでことが動き出すと、比較的短時間で実家への引っ越しが決まることも共通しています。

 実家への住み替えは

  • 昔暮らしていたので土地勘がある
  • 親戚、友人・知人がいて馴染みのコミュニティがある(場合が多い)
  • 住む場所、帰る家があることで、転居するという発想になりやすい

 などの理由からも、選択しやすいといえるかもしれません。

 実家に住むという選択をすれば『実家の断捨離』でテーマの一つになっている「空き家問題」も回避できるかもしれませんし、時間がかかりがちな「実家のモノの処分」も、進めやすい状況と環境になりそうです。 

◆事がスムーズに運ぶ時は前へ進めのサイン?

 断捨離では、身の回りの不要なモノを処分してスッキリすると、身の回りのいろいろな滞りがほぐれて流れ始め、結果、自分に必要なモノ、事、人、そして状況までもが巡ってくるようになるといわれています。

 逆に言えば、断捨離で目指すところはこのように「自分に必要なモノを自然と引き寄せられる状態になる」ことでもあるといえます。

 今回紹介した2組のケースは(本人以外の家族が実行する断捨離含め)断捨離を続けることで様々な滞りを解消した結果、実家への引っ越しにつながったと言えるでしょう。

◆心の断捨離の結果の選択だった

 実は長野の実家に引っ越した女性は、昨年末、以前付き合って別れた男性からよりを戻したいといわれます。しかしその申し出を断りました。このことをきっかけに大規模な断捨離をはじめたそうです。自身の住むマンションの家具や車も売りに出し、たくさんのモノを処分しました。

 

 この時の女性の断捨離は『過去の思い出を捨て去るため』だけではなく『次のステージの準備のために心も環境も更地にしていた』といえるでしょう。ところがやってきたのは父の病の知らせ。

 動揺せずにいられたのは、まさに「心の断捨離」をしていたからでしょう。女性は長い間付き合っていた男性との別れを経て、大規模な断捨離を実行し、物を捨てながらさまざまなこだわりや執着を捨て、なにがあっても動じない自分に近づいていたのです。

 そう遠くない将来やってくる親との別れについても、誰もが避けて通れないことと覚悟しているそうです。

参考記事 メダリスト小平奈緒が語った「心の断捨離」とは