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【パリ】五輪に空飛ぶタクシーが登場!? アーバンエアモビリティ計画進行中

鈴木春恵パリ在住ジャーナリスト
ドイツのスタートアップVolocopterが開発した電気垂直離着陸機(写真:ロイター/アフロ)

こんなご時世だからこそ、未来の話をしたいと思います。

2024年、パリ五輪のときには空飛ぶタクシーが見られそうです。

というのも、パリ首都圏ではアーバンエアモビリティ、空飛ぶ都市交通とでもいえるでしょうか、近未来の計画が進行中です。RATP(パリ交通公団)、ADP(パリ空港グループ)、Choose Paris Regionという組織が中心になって進めているもので、昨年、まずは開発グループへの参入募集がありました。

25の国から150の応募があり、先週1月18日には、そのなかから選抜された企業、組織などが発表になりました。具体的な組織名は、記事の終わりのリストをご覧ください。

発表によると、このアーバンエアモビリティ計画では、ひとまず2024年のパリ五輪時に有人飛行のデモンストレーションを繰り広げることを目標にしています。

空港から15分でパリ市内到着?

空飛ぶタクシー実用化の未来が見えてきたところで、まずそのルートとして考えられているのが空港と都市間の移動です。

パリの北にあるシャルル・ド・ゴール国際空港と市内中心部との距離は約35キロ。現状では、郊外電車か空港バス、もしくはタクシーという交通手段がありますが、所要時間は最速でもおよそ40分、実際のところは余裕をみて1時間半くらいは見積もりたいところです。

道路は渋滞が常ですし、郊外電車はストや遅延のリスクがあります。さらに言えば、正直なところあまり治安のよろしくないエリアを通過しなくてはならないので、電車の中でうっかり居眠りなんて絶対にできません。というわけで、より速く快適で安全な移動手段の確保は長年の課題になっていました。

そこで期待の星と目されているのが空飛ぶタクシー。現在すでに開発済みの機体速度なら、空港から新都心のデファンス地区まで15分以内だそうですから、少なくとも時間と快適性という点でかなり有効な解決策になるはずです。

実用化が期待されている空飛ぶタクシー(PHOTO by Boris PANKIEWICZ)
実用化が期待されている空飛ぶタクシー(PHOTO by Boris PANKIEWICZ)

人が乗れるドローン

今年の6月にはパリ近郊の専用フィールドで試験飛行も始まるようですが、具体的にどんな機体が飛ぶのでしょう?

いまのところアーバンエアモビリティの分野で一歩先を行っているのが、Volocopter(ヴォロコプター)というドイツのスタートアップ企業。なんだか、『ドラえもん』の「タケコプター」を思わせるような名前ですが、この企業が実用化を進めている機体は100%電動の垂直離着陸式。つまり、CO2を出さないクリーンエネルギーで動くドローンのようなものが人を運ぶ乗り物になるのです。現状は二人乗り。そのうち一人はパイロットという規模だそうです。

ちなみに、1月18日付の『ル・フィガロ』紙の記事によれば、アーバンエアモビリティの欧州での市場規模は、2035年には80億ユーロ(およそ1兆円)に達すると予想されていているのだとか。

もしもパリ五輪の際に、空飛ぶタクシーのデモンストレーションが注目を集めれば、その波及効果は推して知るべし。実際に商業利用が始まるのは2030年が目処になっているようですが、それまでの開発にも拍車がかかることでしょう。

モデル機に試乗するイル・ド・フランス地域圏知事ヴァレリー・ペクレス氏(右)(PHOTO by Boris PANKIEWICZ)
モデル機に試乗するイル・ド・フランス地域圏知事ヴァレリー・ペクレス氏(右)(PHOTO by Boris PANKIEWICZ)

機体開発部門

Airbus (フランス)

Ascendance Flight Technologies (フランス)

Ehang (中国)

H3 Dynamics (シンガポール)

Pipistrel (スロヴェニア)

Safran Electronics & Defense (フランス)

Volocopter (ドイツ)

Vertical Aerospace (英国)

Zipline (アメリカ)

オペレーション部門

Air France (フランス)

CAE (カナダ)

Dassault Falcon Services (フランス)

ESTACA (フランス)

Helifirst (フランス)

Helipass(フランス)

都市インフラ部門

Green Motion (スイス)

IDEMIA I&S (フランス)

Leosphere (フランス)

Skyports (英国)

空域統合部門

Cergy University and ESSEC (フランス)

ENAC (フランス)

Internest (フランス)

M3 Systems (ベルギー)

Thales SIX (フランス)

パブリックアクセプタンス部門

Bruitparif (フランス)

Ecole Polytechnique (フランス)

Envirosuite (オーストラリア)

UC Berkeley Institute of Transportation studies, NEXTOR (アメリカ)

ONERA (フランス)

Royal Netherlands Aerospace Centre (オランダ)

パリ在住ジャーナリスト

出版社できもの雑誌の編集にたずさわったのち、1998年渡仏。パリを基点に、フランスをはじめヨーロッパの風土、文化、暮らしをテーマに取材し、雑誌、インターネットメディアのほか、Youtubeチャンネル ( Paris Promenade)でも紹介している。

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