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【フランス】禁止だけでなく補償も強化 新型コロナ続報

鈴木春恵パリ在住ジャーナリスト
1月14日の記者会見映像(フランス政府のサイトから)

1月14日夕方、カステックス首相をはじめ関係大臣による新型コロナ対策についての記者会見があり、18時からの夜間外出禁止令が発表されました。

これまでは、本土の東側を中心に、ほぼ4分の1の県が18時からで、首都圏を含む大半の地域では20時からだったのですが、これが2時間早まって全国一律18時からになります。16日土曜日からの実施で、すくなくとも2週間は継続されます。

感染爆発の事前防御策

このところの1日の新規感染者数はおよそ16,000人。クリスマスシーズンのツケが感染爆発になるのではないかと懸念されていましたが、いまのところ、ほぼ横ばいというところです。首相は、国民の節度ある行動の結果であると記者会見の冒頭で述べつつ、隣国にみられるような急激な感染拡大を防ぐ措置として、外出制限の強化に踏み切ったということです。

2時間早めることで、逆に帰宅、買い物の時間に人が集中するのでは、という懸念もありますが、18時からの禁止を先行している県での感染拡大が、20時の県に比べて低くなったという実績も判断の基準になったようです。

今回はまた、次のようなことも発表になりました。

イギリスの変異種による感染が毎日200〜300件確認されている。

これは新規感染100件中1〜1,5件という比率で、従来のウイルスより30〜70%感染力が強く、特に子供がかかりやすいとのこと。

●18日月曜から、EU以外の国からの入国者は、出発前72時間以内に行ったPCR検査の陰性証明の提示が必要さらに入国後7日間は自主隔離をしたうえで、さらにPCR検査を受けること。

EU域内からの入国については、1月21日以降に発表。

●学校は閉めない。

そのかわり、屋内でのスポーツは停止、食堂での衛生管理を徹底。

児童生徒、教職員を対象に、毎週30万人規模で検査を実施。

高校については、在宅、出席並行の授業形態を継続。

逆に、ずっとリモート学習とされていた大学は、小グループ単位で対面授業も再開可能にしてゆく方針で、精神的、経済的に厳しい状況にある学生への支援、カウンセラーの増強を続ける。

●1月18日からのワクチン接種キャンペーンの対象拡大75歳以上に加え、年齢にかかわらず重症化リスクの高い疾患を持つ人も対象になる。

こういったあたりが、今回の主なポイントですが、さらに重要だったのは経済大臣による発表です。

説得力のある経済補償

最初のコンフィヌモン(ロックダウン)が始まったときから、フランス政府は巨額の連帯基金を確保し、休業せざるをえない事業体の従業員らに、部分的失業手当として給与の手取りの約7割を政府が負担するなど、さまざまな形で経済支援を実践してきています。休業を強いるからには補償を、それも具体的、重層的な措置によって、国民と企業をできるだけ救おうとしている姿勢が見えます。

ルメール経済大臣(フランス政府サイトの記者会見映像から)
ルメール経済大臣(フランス政府サイトの記者会見映像から)

筆者は経済が専門ではなく、また今回の発表はかなり多岐にわたる仔細な内容なので、以下、在フランス日本国大使館が在留邦人らにメール配信してくれる概要翻訳から、いくつかの項目を転載してご紹介したいと思います。

・レストラン等の宅配、テイクアウトによる売上は、連帯基金の支給額算定の根拠となる売上として計上されない。このルールは2020年12月分から適用され、今後も維持される。

・レストランやカフェに関係する卸売業者、納入業者等のうち、売上が70%以上減少している企業は、連帯基金から、月20万ユーロを上限に2019年の売上の20%に相当する額の給付を受けることができる(月1万ユーロの給付との比較でいずれか高い方を受給可能)。企業の規模に関わらず、2020年12月分から支給。

・休業措置の対象となっている企業及びそれらに関連するセクターに属する企業のうち、月の売上が100万ユーロを超える企業に対して、固定費の70%を支援。

・事業内容、規模に関係なく、すべての企業は、政府保証付融資の返済開始時期を一年遅らせることができる。(2021年4月返済開始となっていた融資が2022年4月から返済開始となる。)

・2020年12月に実施された社会保険料の支払免除等の措置を2021年1月も継続。レストラン・カフェ・ホテル・文化・スポーツ等のセクターに属する企業で、休業中又は売上が50%以上減少しているすべての企業が対象。

・完全な休業措置の対象となっている企業(レストラン、体育館、ナイトクラブ等)、部分的な休業措置の対象となる企業(18時以降の夜間外出禁止措置の影響を受ける商店等)については、政府は、企業が従業員へ支払う休業補償を100%助成。これは衛生規制が適用される限り継続される。

・ホテル、イベント関連等の企業については、政府は、2月末まで、従業員への休業補償の100%助成を実施。3月以降は、売上が80%以上減少している企業については100%助成を維持。その他の企業については、15%の企業負担が発生することになる(政府助成85%)。

・その他の企業については、2月末まで、企業負担15%、政府助成85%を継続。感染状況が落ち着けば、3月以降は、企業負担は40%となる(政府助成60%)。

ワクチン接種予約開始

記者会見のあった14日はまた、ワクチン接種キャンペーンの予約開始日でもありました。電話、もしくはサイトからアクセスするというものだったのですが、1秒間に8,000件のアクセスが殺到し、サイトはパンク状態。結局翌日朝8時からの再開ということになったようです。

その予約サイトを見ると、ワクチン接種センターは現状パリ市内で19か所ありますが、全国に700か所以上が開設される予定で、1月末までに100万人の接種が目標になっています。

ちなみに、1月15日付けの『ル・フィガロ』紙に掲載されている、ワクチン接種に対するフランス人の意識調査によると、「Oui(ウィ)」つまり、接種したいと答えたのは56%。同じ調査を11月にしたときには50%、12月は42%が「ウィ」だったようで、気持ちの揺れがあるものの、ワクチンに対してより好意的になっていると言えるかもしれません。

また、年齢別で見ると、次のとおり。

25〜34歳 45%

35〜49歳 45%

50〜64歳 57%

65歳以上 77%

重症化リスクが高いとされる世代ほど接種に積極的、というのが明らかなようです。

パリ在住ジャーナリスト

出版社できもの雑誌の編集にたずさわったのち、1998年渡仏。パリを基点に、フランスをはじめヨーロッパの風土、文化、暮らしをテーマに取材し、雑誌、インターネットメディアのほか、Youtubeチャンネル ( Paris Promenade)でも紹介している。

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