11月7日木曜日、パリの有名デパートのひとつ「プランタン」でクリスマスイルミネーションの点灯式があった。フランスのクリスマスといえば、ちょうど日本のお正月のように家族が顔を揃え、プレゼントを交換し合うというのが一般的。つまり、この風習のある家庭のメンバーなら、クリスマスに顔をあわせる家族ひとりひとりのプレゼントを用意するわけで、商業的にみてかなり重要な時期ということになる。だが、それにもまして、デパートという存在そのものが、いまではすっかり都会の歳時記。ここパリならば、デパートを皮切りにして、シャンゼリゼ大通りのイルミネーション点灯のニュースが聞こえると、人々はいよいよクリスマスを実感する。

そんなわけで、とりわけ力の入るこの季節のウィンドー装飾だが、一番のよびものは操り人形のスペクタクル。「プランタン」とそのお隣の「ギャルリー・ラファイエット」とが揃ってこの仕掛けを行っていて、毎年テーマを決めて、数ヶ月がかりで制作される華麗な世界を楽しみにする人は少なくない。たくさんの人形やぬいぐるみが愛らしい動きを展開するこれらのウィンドーはパリの風物詩。すでに40年の伝統がある。手がけるのは、ジャン=クロード・ドゥイックスさんファミリーで、パリ広しと言えども、ほかにここまでの仕事をするところはなく、40年間ずっと同じ一家によって受け継がれている。ちなみに、その仕事については3年ほど前、JBPressのコラムとして紹介したので、ご興味のある方はこちらで。(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5005

さて、点灯式に話を戻す。

「プランタン」の今年のテーマはイタリアの高級ブランド「プラダ」とのコラボレーション。セレモニーが行われるウィンドーには幕がかかり、往来には赤絨毯ならぬ、シックなグレーの絨毯が敷かれ、恰幅のいい黒服のガードマンらが仁王立ち。「本日が点灯式」と宣伝をしないサプライズイベントなのだが、いつもと違うものものしい雰囲気を察して、イベントの開始を待つ人たちが柵の外で待ち構えているのをはじめ、プレス専用のコーナーには、すこしでもいいポジションを確保しようというプロカメラマンたちが黒山のようになっている。

17時30分、横付けになった黒塗りの車から登場したのは、白いドレスに身を包んだグゥイネス・パルトロー。フラッシュのシャワーにドレスのスパンコールがキラキラ、キラキラ。文字通りのスターである。

「プランタン」の社長、パオロ・デ・チェザレ氏とひとしきりカメラマン達の呼びかけに応えたのち、ウィンドーのほうへ向いて赤い紐を引いた。すると、プラダを着た悪魔ならぬ、プラダを身につけた熊のぬいぐるみたちが登場。色とりどりのデコレーションのなかで、なんとも愛嬌たっぷりににぎやかに踊る世界がご開帳とあいなった。

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ほんの5分ほどのセレモニーだが、昨年はマリオン・コティヤール、ことしのグゥイネスといい、アカデミー賞クラスのスターの登場が恒例になっていることからも、イベントの重要度がおわかりいただけるだろう。

ウィンドーを一巡りしたあと、店内に足を向ければ、グランドフロアのセンターに11メートルの高さのツリーが飾られ、足元にはプレゼントグッズが満載になっている。なかでも人気は、ウィンドーから抜け出たようなテディ・ベア。限定50体のシリアル番号付きで、お値段は520ユーロ。ことしはテーマにちなんで、プラダのリュックを背負っている。ちなみに、このリュック、中に入っているストラップを装着すれば、ポシェットとして使えるそうだが、それ以前に、年ごとの扮装をしたこのテディ・ベアを楽しみにしているコレクターは少なくないようで、1体目はすでに男性コレクターの手に渡ったという。

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例年に比べると、今年の秋は温か。とはいえ、マロニエの落葉が終われば、空も街も鈍色一色に染まるパリ。日に日に冬の気配が濃厚になるこの時期にクリスマスシーズンが始まるというのは、なんともよく考えられた人間の暦、と、感心する。イブ・モンタンがコートの衿をたてて歩いているようなモノクロのパリも大人っぽくて美しいには違いないが、そこにぽっかりと温かな光があることで救われる。この時期にパリにいらっしゃる機会があれば、ぜひデパートのウィンドーの色に頬を染めてみてはいかがだろうか。

※「プランタン」のイルミネーションは2014年1月5日まで。

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