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外国人労働者から労働・生活相談を無料で受け付け、連合大阪とRINKが3月24~26日に電話相談

巣内尚子研究者、ジャーナリスト
相談先を確保しにくい外国人労働者に向けた支援の広がりが期待されている。(写真:アフロ)

連合大阪(日本労働組合総連合会大阪府連合会)は、RINK(すべての外国人とその家族の人権を守る関西ネットワーク)と連携し、3月24日から26日に外国人からの労働や生活にかかわる相談を無料で受け付ける「外国人労働者のためのなんでも電話相談」を実施する。主に電話で相談を受けるが、必要に応じて面談でも相談に対応するという。外国人は言葉の壁や社会的に孤立しやすいことなどから、相談の機会を持てない人もおり、こうした取り組みが各地で広がることが期待されている。

◆9カ国語で無料相談、毎日午後3~8時まで

連合大阪によると、「外国人労働者のための何でも電話相談」では、相談希望者は24、25、26日のそれぞれ午後3時から8時まで電話(06−6949−0005)により無料で相談ができる。

相談は英語、中国語、朝鮮・韓国語、スペイン語、ポルトガル語、タガログ語、タイ語、インドネシア語、ベトナム語の9カ国語で受け付ける見通し。日本に暮らす外国にルーツを持つ人は増えており、その母語や使用言語も多様化しているため、さまざまな言語に対応するようにするという。

連合大阪のウェブサイトからは、各国語のチラシも確認でき、このウェブサイトから外国人それぞれに適した言語のチラシをダウンロードすることができる。

◆弁護士と社労士が相談受け付け、外国人の抱える問題把握へ

労働分野の相談は連合大阪が、それ以外の分野の相談についてはRINKが相談に応じる。連合大阪法曹団から弁護士が1人、大阪府社会保険労務士会から社会保険労務士が1人相談に加わっており、専門分野の相談もできる。

「外国人労働者のためのなんでも電話相談」の目的は、外国人労働者がどのような問題をかかえているのか、その実態を把握するとともに、それを連合大阪の日常的な相談業務にいかすこと。さらに、連合大阪では、問題解決のために、必要であれば政府や自治体への政策提言なども行い、外国人労働者の処遇改善につなげていきたいという。

◆年金や社会保険に関する相談が増加、ベトナム人の相談者増える

連合大阪による外国人向け無料相談の取り組みは90年代にさかのぼる。

連合大阪は1990年に労働者からの相談を受け付ける「労働なんでも相談」を始め、それ以降5年間で1,000件を超える相談があったという。一方、当時はバブル経済が崩壊した直後で、解雇問題をはじめとした労働問題だけではなく、生活相談や個別の案件も多かった。これら多岐にわたる問題には連合大阪だけでは対応できないものもあったことから、労働問題を中心に活動する弁護士に相談し、1995年に連合大阪法曹団が結成された。

さらに1998年と1999年に連合大阪法曹団の取り組みとして「外国人労働者の相談キャンペーン」を実施した。この結果、労働相談にとどまらず、入管関連の問題や社会保障・税金の問題にまで相談が及ぶなどしたことから、現在に続く継続した取り組みとなっていったという。

日本に定住・永住する外国人の増加を反映してか、ここ数年は年金や社会保険に関する相談が増えているようだ。年金事務所などには通訳者がいないため、聞きたいことが聞けない外国人が多いとみられている。

また以前は在留資格に関する相談が多かったが、最近は少なくなっている。これは、行政書士など専門家に相談する人が増えているからのようだ。

そのほか、「外国人労働者のためのなんでも電話相談」では弁護士に直接相談できるため、交通事故や金銭トラブルなど弁護士の対応が必要な相談が寄せられており、そうした相談の割合が他の相談案件に比べて増えている。

相談者についても変化がみられる。

2016年に実施した「外国人労働者のためのなんでも電話相談」では、ベトナム出身者からの相談が多かった。連合大阪は、日本に暮らすベトナム出身者が最近急激に増えているものの、どこに相談すればいいかわからないベトナム人が多いのではないかとみている。

◆「使い捨てはダメ」、外国人労働者も日本人労働者と同じ労働条件・処遇の確立を

今回の大阪連合の取り組みの背景には、日本に暮らす外国にルーツを持つ人が増えていることがある。

しかし、かねてより外国出身者に関連する問題も起きている。例えば、アジア諸国から労働者を受け入れる外国人技能実習制度では、受け入れ企業による違反行為や技能実習生への人権侵害やハラスメントなどの問題が発生し、制度自体の見直しが求められてきた。

厚生労働省はホームページで、技能実習制度の目的について「我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力すること」と説明している。しかし、実際には企業が製造業や農業、水産業、建設業などにアジア出身の労働者を受け入れ低賃金で就労させるなど、実質的には単純労働者の受け入れになっており、制度の「建前」と現実のかい離が指摘されてきた。

最近では外国人留学生のアルバイト就労をめぐる課題も指摘されているなど、外国出身の労働者に対するさまざまな支援が必要になっている。

連合大阪の久保真光氏は、「政府は労働者不足に悩む業界の要請を受けて、『単純労働』分野での外国人受け入れを拡大する傾向にあるが、受け入れを拡大する場合、外国人の労働力をただ利用するだけの受け入れではなく、内外人平等の原則のもと外国人労働者の処遇を改善する必要がある。」と語る。

さらに「技能実習制度など職場の移動が認められない外国人労働者の受け入れは、労働者の権利を担保できないだけでなく、使用者の人材育成努力や就労環境改善の放棄につながっている。単に、被雇用者が途中や辞めたり、休んだりするという使用者の雇用上のリスクの減少を図っているにすぎないため、即時廃止するべきだ」と指摘。その上で、「現在の受入状況を成功したものとして継続・拡大するようであれば、拡大された分野での就労環境の悪化を招くことは必至であり、賛成できない」としている。(了)

研究者、ジャーナリスト

東京学芸大学非常勤講師。インドネシア、フィリピン、ベトナム、日本で記者やフリーライターとして活動。2015年3月~2016年2月、ベトナム社会科学院・家族ジェンダー研究所に客員研究員として滞在し、ベトナムからの国境を超える移住労働を調査。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。ケベック州のラバル大学博士課程に在籍。現在は帰国し日本在住。著書に『奴隷労働―ベトナム人技能実習生の実態』(花伝社、2019年)。

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