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古典的サッカーか。日本戦で露呈した本命ブラジルと10番ネイマールの問題点

杉山茂樹スポーツライター
(写真:岸本勉/PICSPORT)

 ブラジル代表に0-1。日本は来るカタールW杯で優勝候補の本命に挙げられているFIFAランキング1位の強豪を、PKによる1失点に抑えた。これを善戦と見るか。

 スコア的には善戦だが、内容的には振るわなかった。惜しいチャンスはゼロではなかったが、決定的なチャンスはゼロだった。惜しいチャンスにしても、「惜しい度」をABCに分類すると、最低ランクのCが2、3度あったに過ぎない。耐え忍ぶことはできたが、キチンと崩すことができなかった。最少失点差の敗戦に満足したとすれば進歩はない。筆者はそう見るが、善し悪しが日本以上にハッキリしていたのはブラジルになる。

 ブラジルのサッカーは、全然よく見えなかった。余計なお世話かもしれないが、筆者は日本と同じぐらい心配しながら、試合を観戦することになった。世界最強国の看板に相応しいサッカーができたかと言えばノーである。このサッカーではW杯で優勝できない。本命ブラジルがこの程度のサッカーしかできないなら、フランス、イングランド、スペイン、アルゼンチン、ドイツ、ベルギー、ポルトガル、オランダ……と言った2番手以降の国にもチャンスは大いにある。この日本対ブラジル戦は、カタールW杯が混戦になることを想像させる一戦と言えた。 

 試合の前々日に行われた公開練習を見る限り、ブラジルはもっといいサッカーをしそうなムードを漂わせていた。相手ボールになった瞬間、どう動くかを、チッチ監督は欧州で活躍するトップ選手たちに、ユース年代の監督のように手取り足取り、事細かに伝えていた。高い位置からボール奪取を狙いにいく姿勢を見せていたが、試合で日本に激しくプレッシャーを掛けてきたかと言えばノーだった。4日前に行われた韓国戦さえも劣っていた。

 国立競技場は激しい雨に見舞われたが、最新式のスタジアムということで、ピッチコンディションは上々。湿度は高めながら、気温は10度台と肌寒いほどだった。まさしくプレッシングサッカーを実践しやすい条件下にあった。にもかかわらず、ブラジルは緩いサッカーを展開した。日本の守備陣が破綻しなかったことと、それは大きく関係する。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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