Yahoo!ニュース

久保建英に望まれる「トップ下幻想」からの脱却

杉山茂樹スポーツライター
(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

 右ウイング、左ウイング、真ん中(トップ下)。たとえば4-2-「3」-1なら、「3」のどこでもできる多機能性が、久保建英の魅力の一つだ。それがなければ、出場機会はその分、減っていた可能性が高い。多機能性が久保の成長を後押ししている印象だ。

 その中でも一番やりたいポジションについて久保は、何日か前にWOWOWで放送された、彼自身の特集番組の中で、こう述べていた。

「トップ下」。

 しかし、一口にトップ下と言っても種類は様々だ。4-2-3-1なら1トップ下になるが、それでも様々なタイプがある。中盤的な1トップ下もあれば、FW的な1トップ下もある。1トップ(センターフォワード=CF)との関係で、1トップ下に求められるものは変わる。

 トップ下ありきなのか。CFありきなのか。監督にとって真っ先に使いたい選手は、そのどちらなのか。トップ下に求められる適性は、CFが大物であればあるほど、そのキャラに左右される。場合によっては、ゴールに背を向けたポストプレーが求められることもある。ハマるかハマらないか。トップ下として大成するためにはある程度、運が必要になってくる。

 周囲の影響を受けやすい、不確かなポジション。当人の実力だけで片づけることができない、不安定な仕事場だ。

 トップ下が1トップ下ではなく、2トップ下を意味した時代(=欧州で言えば1990年代)とは、大きく事情が変わっている。当時のトップ下=2トップ下は、仕事内容がイメージしやすかった。

 ポジションは1トップ下より低め。FW、アタッカーと言うより中盤的で、攻撃的MFそのものだった。司令塔、ゲームメーカーともてはやされ、CFよりはるかに脚光を浴びていた花形ポジションでもあった。

 日本では特にその傾向が強かった。欧州で、2トップ下が存在する代表的な布陣=3-4-1-2が廃れても、トルシエ、ジーコという当時の日本代表監督及びJリーグ監督たちは、この布陣に固執した。

 その結果、日本では好選手が攻撃的MFにひしめく「中盤天国」の時代が到来した。あるいは「トップ下幻想」と言うべき感覚は、2トップが減ったいまなお根強く残っている。トップ下に憧れる選手は少なくない。

この記事は有料です。
たかがサッカー。されどサッカーのバックナンバーをお申し込みください。

たかがサッカー。されどサッカーのバックナンバー 2021年1月

税込550(記事4本)

※すでに購入済みの方はログインしてください。

購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。
スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

杉山茂樹の最近の記事