久保建英にCL出場100回越えを期待したくなったアトレティコ戦のウイングプレー

マジョルカ対アトレティコ(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

 サッカー選手で18歳と言えば、まさに伸るか反るかの分かれ目だ。レアル・マドリーからマジョルカにレンタル移籍した久保建英は、将来どのレベルに落ち着くのか。すでに日本代表に選ばれているので、怪我なく順調に年齢を重ねれば、代表キャップ100回越えの選手にはなれるかもしれない。

 現在そのラインに到達した人数は計7人。152回の遠藤保仁を筆頭に、井原正巳、長友佑都、岡崎慎司、川口能活、長谷部誠、中澤佑二と続く。しかし、その視点はあくまでも国内的だ。国際的な評価基準を示す物差しは何かといえば、チャンピオンズリーグ(CL)の出場回数になる。

 1位はイケル・カシージャス(ポルト)で177回。以下、クリスティアーノ・ロナウド(2位=163回・ユベントス)、チャビ・エルナンデス(3位=151回)、ラウール(4位=142回)、ライアン・ギグス(5位=141回)、リオネル・メッシ(6位=136回・バルサ)、アンドレス・イニエスタ(7位=130回・神戸)、クラレンス・セードルフ(8位=125回)、ポール・スコールス(9位=124回)、ジャンルイジ・ブッフォン(10位=122回・ユベントス)と続く。100回越えの選手は計38人。トニ・クロース(レアル・マドリー)とぺぺ(ポルト)が現在98回で、そのラインを目前にしている。

 ちなみに、日本人の最高位は香川真司の32回。以下、内田篤人(29回)、中村俊輔(17試合)と続くが、久保に目指して欲しいラインは、もちろんここではない。目指すは100回だ。となると、チャンピオンズリーグにコンスタントに出場しなくてはならない。さらに、決勝トーナメントにもコンスタントに出場したい。CL本大会の試合数は現行では年間最大13試合。10試合戦おうとすれば、準々決勝に進出する必要がある。それを10年続けてようやく100試合だ。久保がCLで100試合越えするためには、その前にそれなりの強豪チームでプレーする必要がある。

 1位レアル・マドリー、2位バルサ、3位バイエルン、4位アトレティコ、5位チェルシー、6位ユベントス、7位マンチェスターU、8位ポルト、9位PSG、アーセナル(※マンC=12位、リバプール=14位)

 これは欧州カップ戦(CLとヨーロッパリーグ)の過去10年の戦績をもとに弾き出したUEFAクラブランキングのトップ10だ。CL出場100回越えは、具体的に言えば、これらのクラブに在籍し、中心選手として長くプレーできるかに懸かっている。

 そうした意味で注目されたのが、先週の水曜日(9月25日)に行われたスペインリーグ第6節、マジョルカ対アトレティコだった。

 過去10年のランキングで4位に付けるアトレティコ(過去5年では3位)。この強豪との一戦で久保がどれほど活躍できるかは、その将来を占う上で貴重な一戦となった。

 久保はアトレティコとプレシーズンに1度戦っていたが、その時はレアル・マドリーの一員としてだった。相手にも好選手がいたが、味方にもそれを上回りそうな好選手がいた。一方、マジョルカは弱小チームだ。選手個々のポテンシャルも高くない。周囲から質の高いサポートを期待することはできない。そうした苦しい状況の中で何ができるか。

 久保にチャンスが訪れたのは後半開始早々だった。中盤でパスを拾うとスルスルと前進。周囲とコンビネーションを図りながら強固で知られるアトレティコの守備陣を崩し、右足シュートに持ち込んだ。ゴールこそならなかったが、それはこの日、両軍を通じて最も鮮やかな攻撃と言えた。言い換えれば、アトレティコの選手としてもやって行けそうなプレーだった。

 そうした意味でより評価したくなるのが、後半25分に見せた縦抜き&センタリングになる。この日、4-1-「4」-1の「4」の右を任されていた久保は、その場所でアトレティコの中心選手トーマス・パーテイと1対1になった。ガーナ代表のアスリート系MF。見るからに怖そうな186センチの大型選手に対して久保は怯まず向かっていった。1対1を仕掛け、縦抜けを敢行。逆取りに成功すると右足でマイナスの折り返しを中央に送り込んだ。自軍FWプラッツの放ったヘディングシュートはGK正面を突いたが、久保のこの一連の動きは、少しも色褪せることはなかった。相手のアトレティコも、久保に対して敵ながらあっぱれと思ったに違いない。

 後半25分といえば疲労が滲んでくる頃だ。実際、久保のシルエットにもその色が見え隠れしていた。そして相手はトーマスである。そこでドリブルで勝負を仕掛けることができる選手はそうそういない。しかも久保は左利きだ。切り返し、内に入っていった方が何かと無難だ。そうした選択肢があったにもかかわらず、久保は逃げずに攻めた。利き足ではない右足でマイナスの折り返しも完璧に決めた。

 この久保のプレーをマネのできる日本人選手を筆者はあまり知らない。本田圭佑にそうした勢いがあったのもCSKA時代までだった。香川真司は9割近い確率で切り返す。家長昭博しかり。堂安律も縦か内かと言えば、断然内へ向かう比率が高い。

 久保が欲しいのは結果だ。そうした意味では「切れ込んでシュート!」と行きたいところだが、この縦抜けにもそれに負けない価値がある。シュートに至らない切れ込みより、何倍も強気なプレーに見える。将来に楽しみを抱くことができる。

 物怖じしていない。恐れていない。1対1で相手を威嚇するように睨みつけ、縦突破を図ろうとした久保。日本人選手として最高到達点を狙えそうなムードを感じることができた。香川の「32回」は楽に超えられるだろう。では「100回」はどうなのか。となるとやはり点が欲しくなるが順番的には縦突破が先だ。久保は順調なステップを踏んでいるとみる。

 縦突破と「切れ込んでシュート」を両方武器にしている選手。最近ではモハメド・サラー、かつてなら昨季で引退したアリエン・ロッベン(110回=28位)が、その代表的な選手になる。久保にまったく望めない話ではないと思う。後半25分に披露した縦抜けを見て、少なくともこちらの評価は上昇した。

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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