岡田ジャパンと同じ轍を踏むな。W杯アジア2次予選は五輪チーム中心で

(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

 楽な組に入ったことは間違いない。全8組中の2位が4チームも最終予選に進めるわけだ。第2シード国にウズベキスタンやイラクがいる激戦区に振り分けられたとしても、この緩い大会規定を考えれば落選は考えにくい。

 2022年カタールW杯アジア2次予選の話だが、キルギスが第2シード国に入った日本の組(F組=日本、キルギス、タジキスタン、ミャンマー、モンゴル)で日本が2位に沈み、その成績上位の4チームにも残れない可能性というのは限りなくゼロに近いのだ。

 田嶋幸三会長は楽観ムードに待ったを掛けるような慎重な言葉を吐いたとされるが、そう言いたくなる気持ちは分かる。楽観ムードに釘を刺すことが上に立つものの使命とはいえ、そこをあまり強調すると逆効果になりかねない。それで現場が萎縮すれば、絶対に負けられない戦いの呪縛に縛られることになる。

 ただでさえメディアは、絶対に負けられない戦いを強調したがる。楽な戦いだと言ってしまえば、試合への関心度は低下する。その産業的な魅力は減退する。そうしたムードに、監督采配は少なからず影響される。要はバランスなのだけれど、日本に必要なのは引き締めではなく解放。いい意味での余裕だ。限りなく100%に近い突破の確率を信じ、冷静になって現実的な対応を取ることだ。

 森保監督には2次予選の段階から、トーナメント戦のような一戦必勝の感覚で戦ってきた歴代の代表監督と、同じ轍を踏まないで欲しい。若い選手を徹底的に試すべきである。

 勝利を追求しながら選手を試す。循環が宿命づけられている代表チームにとって、これは必要不可欠な命題だ。それで負けてしまっては身も蓋もないと言われかねないが、循環機能を停止させながら勝利を追求すれば、チームはいずれ硬直化する。チームをどのように循環させるか。それと勝利とをクルマの両輪のように成立させるか。

 たとえば欧州の有力国は、W杯予選やユーロの予選で、グループで首位争いを演じる相手との大一番になるまでベストメンバーを編成しない。それ以前は決戦の日に備えベストメンバーを探りながら戦う。そうした立ち振る舞いに慣れていない日本人のライターには、それは最初、かなり危なっかしいものに見えた。実際、テスト過多になり敗れてしまったチームもいるほどだが、勝利を追求しながら選手を試すーーが現地では、監督采配のスタンダードとして浸透していることは確かだ。

 そうではない国、早い段階からベストメンバーを編成して戦う国は、そうした余裕がない中堅国以下に限られる。

 だが、前回のハリルホジッチは、その初戦となったシンガポール戦にベスト同然のメンバーを送り込んだ。その流れで2次予選を戦った。前々回のザッケローニも同じ。その前の岡田武史監督、そしてジーコも、しかりである。

 日本が予選突破できるか否か、多くの日本人は06年ドイツW杯を目指したジーコぐらいまで、その行方をかなり不安げに見つめたものだ。2002年日韓共催W杯でベスト16入りしたとはいえ、アジア内では強国であることにまだ確信が持てずにいた。

 その優位性が周知されたのは、その次、2010年南アW杯を目指した岡田ジャパンぐらいからだ。岡田さんはそこで敗れたら一大事とばかり守りに入った。変な責任感を背負い込み、いわば日本人監督らしい行動に出た。こう言ってはなんだが、強者の立ち振る舞いができなかった。知らなかったというべきかもしれない。絶対に負けられない戦いの呪縛に縛られる格好になった。その結果、最終予選が近づくにつれ、選択肢は狭まっていった。

 この手の心配は、続いて代表監督に就任したザッケローニにはないだろうと思われた。ハリルホジッチもしかり。欧州のスタンダードをアジア予選の中で発揮してくれるものと思われた。ところが、彼らもまた絶対に負けられない戦いの呪縛に縛られることになった。

 アジア情勢を把握していなかったからだ。日本とアジア諸国の関係性について。日本と目の前の相手との力関係が分からなければ、勝利を追求しながら選手を試すことは困難になる。特にアギーレを挟んで代表監督に就任したハリルホジッチの場合は、就任したのがアジア2次予選の開始まで6ヶ月弱というタイミングだった。そしてベストメンバーで臨むことになったシンガポール戦で、まさかの引き分けという結果に終わると、一戦必勝の波に飲み込まれることになった。

 その結果、2018年ロシアW杯に28歳台という高い平均年齢のチームで臨むことになった。その後、就任した森保監督はここまで若手とベテランの融合を掲げてやってきたが、相手の力が大きく落ちるアジア2次予選は、融合と言うより発掘に重点を置くべきである。

 このW杯アジア2次予選を五輪チームの強化の場に充てることが得策だと確信する。

 コパアメリカに遠征したメンバー、ポーランドで開催されたU-20W杯に出場したメンバー。そしてトゥーロン国際大会に出場したメンバーを軸に臨む。奇しくも森保監督は五輪チームとの兼任監督だ。いまこそ腕の見せ所ではないか。

 問題は森保監督が日本人監督であることだ。イメージするのは、絶対に負けられない戦いの呪縛に縛られたかつての岡田さんだ。勝利を追求しながら選手を試すという行為を、森保監督がスタンダードではなく難題だと捉える可能性は少なくない。冒頭で述べた会長の一言に萎縮してしまう可能性も同様に少なくない。

 五輪候補選手でW杯アジア2次予選を戦うことは、従来路線を覆すような思い切った手ではあるが、きわめて現実的な強化方法だ。勝利を追求しながらどれだけ試せるか。森保監督への評価の大きな分かれ目としたい。

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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