2戦目(ウルグアイ戦)で先発6人を入れ替えた森保采配に一言。西野采配とはココが違う

(写真:ロイター/アフロ)

 コパアメリカ第2戦。日本はウルグアイに2-2で引き分けた。善戦といえば善戦だが、一口に善戦といっても種類は様々だ。まず問われるのは相手との力関係だ。日本とウルグアイとの間にどれほどの差が存在するか。

 大雑把に言うなら2レベル差だ。日本がW杯本大会でベスト16を狙うチームなら、ウルグアイはベスト4が狙えそうなチームになる。日本がベスト8を目標に据えるなら、このクラスを倒さないとそのラインには到達しない。

 差し引かれるべき点があるとすれば、日本の平均年齢が低いことと、開催国ブラジルがウルグアイの隣国である点だ。

 ウルグアイは初戦(対エクアドル戦)で4-0の勝利を収めていた。日本戦に余裕を持って臨むことができていた。それが仇になった可能性がある。思わぬ抵抗に遭い焦った。しかし後半21分、2-2に追いついてから余裕が生まれた。最終的にこの引き分けをラッキーに感じたのは日本の方になる。

 もう一回戦ったら勝てるか。勝てそうか。その可能性はどれほどあるか。そうした視点でこの善戦を眺めると、満足度は高くない。善戦の質をもう一段、高めないと日本のレベルアップは示されたことにならないのだ。

 善戦の質を高め、番狂わせへと導く要素は何か。選手の力量アップに加え、見逃すことができないのは監督の采配だ。

 前者については多く語ろうとするが、後者についてはなぜか控え目になる癖が日本にはある。もしメンバー交代が的確に行われていたら、善戦のレベルは上がっていたのではないかという疑問を抱こうとしない。特にメディアにはその傾向が強い。他国に比べて圧倒的に、だ。

 ウルグアイ戦。森保監督は2-2に追いつかれると、後半22分、安部裕葵に代え上田綺世を、後半38分、三好康児に代え久保建英を、そして後半42分、岩田智輝に代え立田悠悟を、それぞれ交代選手としてピッチに送り込んだ。

 しかし、事態はこれで改善されたかと言えばノーだ。むしろ悪化した。安部に代えて上田を投入すると、いわゆる中盤が失われていった。サッカーが早く攻めるカウンター中心になった。久保はそうしたサッカーが暴れている中でピッチに立ったが、流れを改善することはできず終い。プレーに絡むことさえままならなかった。

 なにより交代のタイミングが遅すぎた。残り3分の段階で行われた岩田と立田という右SB同士の交代には、どんな意味があったのか。立田に経験を積ませようとする意図なのか。いずれにせよ3度行った交代すべてに「空振り感」が漂った。交代が悪い流れを変える有効な手段になっていなかった。

 コパアメリカは出場国(12ヶ国)こそW杯のおよそ3分の1程度の規模ながら、中3日平均で行われる短期集中トーナメントで、優勝までの道のりもW杯の7試合に対して6試合と近い。W杯本大会で5試合を戦いたい(ベスト8を目指す)日本代表にとってはまたとない実践の機会だ。

 ただし日本代表と言っても、今回の遠征メンバーは正規の陣容ではない。入れ替わる可能性が高い23人だ。三好康児とか、久保建英とか、話は選手に向きがちだが、それ以上に目を凝らすべきは監督の才覚になる。国際経験豊富とは言えない日本人監督をチェックする機会として、コパアメリカはうってつけなのだ。この監督の下で、W杯ベスト8を目指せそうか。森保監督こそ見られている側にある。

 試合中の交代で問われるのは戦況を読む力だ。今年1月に行われたアジアカップには、日本は格上の立場で臨んだ。監督が少々、采配ミスを犯しても選手の力で補うことができた。それぐらいの戦力差があった。コパアメリカはその逆だ。対戦する相手はすべてほぼ格上。読む目を誤ると期待値は途端に減少する。

 想起するのはロシアW杯。決勝トーナメント1回戦対ベルギー戦で、2-0でリードしながら2-2に追いつかれ、終了間際、まさにラストワンプレーで許した逆転弾だ。西野監督がその直前に3人目のメンバー交代を行い、時計の針を進め、本田圭佑が蹴るCKに何らかの指示を送っていれば、確実に防ぐことができた失点だった。なぜ3人目の交代を行わなかったのか。最初の交代が2人同時で、しかも2-2にされた後と遅かったのか。2-0の段階、2-1の段階でなぜ手を打たなかったのか。

 名勝負ではあったが、ベンチワークに難ありと言われても仕方の無い敗退劇であったことも事実なのだ。場数を踏んできた外国人監督なら、あのような幕切れにはならなかったはず。ところが日本サッカー協会は、その後任に日本人監督を続けて選んだ。

 森保監督はロシアW杯で西野監督の下でコーチを務めていた。あの大逆転劇に当事者として関わっている。そこから何を学び、教訓として活かそうとしているのか。

 監督が下す大きな決断は、試合中のメンバー交代と試合前に行うスタメンの選択だ。ウルグアイ戦では先述のように、こちらは試合途中のメンバー交代に異議を唱えた。しかし一方で、スタメンの選択には好感を抱かせた。

 森保一監督は初戦のチリ戦からスタメンを6人入れ替えて臨んだ。そのうちチリ戦で交代出場した安部と岡崎以外の4人は初出場だった。さらに交代で出場した立田も初出場だったので、2戦を終了した段階で、23人中、実に18人がピッチに立ったことになる。

 片や西野監督はロシアW杯で、1戦目(コロンビア)と2戦目(セネガル)戦をまったく同じスタメンで戦った。交代選手も3人中2人が同じ顔ぶれだった。使った選手の総数は15人。チーム内で出場時間に大きな偏りが生じた。先発組。交代出場組。出ない組に3分割された状態にあった。言い換えれば、チームとして疲労感を分散させることができなかった。

 3戦目(ポーランド戦)。問題を解決しようと、西野監督は大胆な行動に出た。スタメン6人を入れ替えて臨んだ。日本は0-1で敗れたが、フェアプレーポイントでセネガルを上回り、ベスト16入りを果たした。

 注目は続く決勝トーナメント1回戦、ベルギーとの大一番にどんなメンバーを編成するか、だった。1戦目、2戦目に戻すのか、新たに組み直すのか。答えは前者だった。その時点で3戦目(ポーランド戦)を戦った選手のサブ色は、いっそう鮮明になった。

 ベルギー戦。スタメンの11人は初戦と変わらず。この瞬間、交代選手の顔ぶれは見えたも同然だった。本田圭佑と山口蛍。西野監督は予想通りこの2人を投入した。まさか同時に投入するとは思わなかったが、この瞬間、3人目の交代も予想がついた。岡崎しかいなかった。と同時に、この試合に勝っても、次戦(5戦目)のスタメンは1、2、4戦目のスタメン以外、思い描くことができなかった。手詰まりの状態にあることが明らかになった。

 西野監督は、岡崎を投入すること無く、ベルギーに逆転弾を許したわけだが、他の選択肢を持ち合わせていなかったことが、交代に踏み切れなかった原因だろう。

 森保監督はこの西野式と同じ手法でアジアカップを戦った。3戦目のウズベキスタン戦で、ロシアW杯のポーランド戦と同じ手を使った。控え選手を虫干しするように使い、4戦目以降、再び1、2戦と同じメンバーで戦おうとした。選手はスタメン組、サブ組、出ない組に3分割された。3戦以外、23人全員で戦うという感じではなくなっていた。14人程度で戦うサッカーなので、交代の選択肢も見えていた。

 その自身の采配を反省したのだろうか。コパアメリカでは、先述の通り1、2戦でスタメンを6人いじり計18人を使った。ロシアW杯、アジアカップとは別の展開を見せている。

 注目は3戦目(エクアドル戦)のスタメンだ。スタメンが代われば交代選手のバリエーションは増える。

 それで勝ち上がれば、選手から信頼感を得ることができる。ベンチに座る選手の顔色が変わる。チームとしての総合的な体力が上昇する。4試合目、5試合目への可能性が膨らむ。なにより監督に不可欠なカリスマ性が上昇する。

 多くの選手を起用しながら、チームを勝たせることができる監督に森保監督はなれるのか。個人的にはそれこそが、コパアメリカ一番の見どころだと思っている。

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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