コスタリカ戦の森保采配に潜む日本サッカーの病

写真:岸本勉/PICSPORT

 コスタリカのロナルド・ゴンサレス監督が、6人というこの試合の交代枠を使い切ったのは後半22分。一方、森保監督はこのときまだ交代のカードを1枚も切っていなかった。積極的にテストを行ったゴンサレス氏と、テストを躊躇い、勝利に目が眩んだ森保監督。

 日本対コスタリカは、両監督が対照的な姿を描いた一戦だった。どちらが代表監督に相応しい振る舞いなのかといえば、コスタリカの監督だ。

 サッカーでピッチ上に立つ選手は11人。ロスタイムを除けば、その総プレー時間は90分×11人で990分になる。ゴンサレス監督がそのうち220分をベンチスタートの選手に提供したのに対し、森保監督はわずか64分。リードしている状況を頑なに守ろうとした。

森保一新監督 写真:岸本勉/PICSPORT
森保一新監督 写真:岸本勉/PICSPORT

 代表チームの試合数は4年間で50試合強。コスタリカ戦はその先の長い戦いの1ページ目にあたる。そこで森保監督は冒険心に欠ける保守的な戦いを強いられることになった。メンバー交代は、代表監督に必要な適性を推し量る大きな要素。森保采配には大いなる疑問符が付く。そのあたりに対し少しも言及せず、3-0という結果をまさに額面通りに受け取り、大喜びする姿はまさに能天気。おめでたいと言わざるを得ない。

 言うならばそれは、見逃しであり見過ごしだ。日本のスポーツ界では特に最近、様々な問題が発覚しているが、そこで見過ごせないのは、その時々で、おかしいと感じたものを直ちにおかしいと発してこなかったメディアの反応だ。あちこちで不祥事が目に付く理由は、小さな見逃し、見過ごしを繰り返してきた結果である。

 日本代表の向こう4年のストーリーを想像したとき、順風満帆に行くとはとても思えない。選手の質はかつてより低下。右肩上がりの状況にはないことは明白。今回、ホームでコスタリカに3-0で勝利したが、たとえば4年後のカタールW杯本番で、日本がコスタリカに同じスコアで勝つ可能性は限りなく低い。そんなことは分かりきっているはずだ。

写真:岸本勉/PICSPORT
写真:岸本勉/PICSPORT

 3-0は確かに喜ばしい結果かもしれない。中島翔哉などロシアW杯の代表メンバーから漏れた若手が活躍したことは嬉しいニュースかもしれない。しかし同時に、負の側面も明白になっている。言い出しっぺになることを恐れ、そこに触れようとしなければバランスは乱れる。現状の傾き方は不健全。サッカー後進国の姿だ。

 思い起こせば4年前、時の代表監督、ハビエル・アギーレは、若手やそれまで実績のなかった選手を代表に登用。2014年10月、シンガポールで行われたブラジル戦に0-4で敗れると、メディアはそのやり方を一斉に非難した。せっかくブラジルと戦うのにベストメンバーで臨まないとは何事か、と。

出場機会が少なかったサブ選手 写真:岸本勉/PICSPORT
出場機会が少なかったサブ選手 写真:岸本勉/PICSPORT

 この旧態依然とした気質が、いまだ健在だとすれば、そろそろ頭をもたげる時期である。知名度の低い選手が次々にテストされることを嫌うのは他ならぬメディア。視聴率、ページビュー、販売部数等々のブレーキを踏む要因になりかねないからだ。

 そこをグッと堪える気質がなければ、日本のサッカーは一皮剥けない。計画的な強化は図れない。テストよりつい結果に走る森保監督のような采配の温床にもなる。

 コスタリカ戦は日本が抱える病を見た一戦といっても言い過ぎではないのだ。

 実際、森保采配を叩く人は思いのほか少ない。これが日本の現実なのだと思う。

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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