サイドバックがいない(森保)サッカーを、日本に適したスタイルだと思わない理由

ロシアW杯対セネガル戦で乾貴士のゴールを喜ぶ長友佑都(写真:ロイター/アフロ)

 サイドバックをいかに有効に使うか。近代サッカーでは、サイドバックが活躍した方が勝つ、と言われる。しかし、森保監督が採用する3-4-2-1には、その肝心のサイドバックがいない。サイドバックとは4バックの両サイドを指すので、3バック、5バックには最初から存在しないわけだが、森保式の3バックを見ていると、サイドバックが存在するサッカーを切望したくなる。やはり、サイドバックがいた方がサッカーは面白い。サッカー、とりわけ日本サッカーを面白くするスパイスではないか、とまで思う。

 だが、同じ3バックでも、中盤フラット型3-4-3には喪失感がない。両ウイングハーフの前方にもう1人サイドアタッカーが存在する状態は、従来の4-3-3や4-2-3-1と遜色ないからだ。

 両サイド各1人なのか、各2人なのか。重要なポイントはサイドバックの有無というより、こちらになる。各2人と各1人とではサッカーはまったく違ったものになる。従来のサイドバックは、3-4-2-1の上ではウイングハーフ(ウイングバック)に名前を変えて出場することになるが、プレーの中身もそれに伴い大きく変容する。

 ウイングハーフ(ウイングバック)は孤立しかねない状況になる。1人で局面を打開しなければならない局面が多いので、突破力、推進力が必要になる。もっと言えば馬力だ。速いだけではダメ。タフで屈強で、さらには持久力まで求められる。「各2人」なら、1人分の分担は、縦幅105mの半分(52.5m)になるが、「各1人」では105mほぼすべて自分1人でカバーしなくてはならない。まさに重労働を課せられることになる。

 日本代表で言えば、3-4-1-2をメインに戦ったジーコジャパンまでこのスタイルだった。4バックを使用したときも、中盤ボックス式の4-2-2-2だったので、両サイドは常に各1人の状態だった。当時のサイドバック並びにウイングバックは、他のポジションより圧倒的に運動量が多かった。

 名良橋、相馬、三都主、加地、駒野などが、その時代に日本代表でプレーした選手である。帰陣が遅れ、相手にその背後を突かれれば、守れないと責められ、長躯オーバーラップし、くたくたの状態で上げたセンタリングが少しでも乱れれば、キックの精度が低いと叩かれるなど、彼らはさんざんな目に遭っていた。

 戦力がそこそこで、両サイド各2人の布陣を敷いてくるチームには、後手を踏んだ。サイドで数的不利な状況に陥り、その平均的なポジションは後退した。5バックになる時間が増えた。多くの選手が後ろに位置し、ゴールを固める状態のサッカーを守備的サッカーと言うが、サイドアタッカー各1人のサッカーは、それに陥りやすい。

 各1人と各2人。日本サッカーと相性がいいのはどちらか。日本人選手に適性があるのはどちらか。

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たかがサッカーごときに、なぜ世界の人々は夢中になるのか。ある意味で余計なことに、一生懸命になれるのか。馬鹿になれるのか。たかがとされどのバランスを取りながら、スポーツとしてのサッカーの魅力に、忠実に迫っていくつもりです。世の中であまりいわれていないことを、出来るだけ原稿化していこうと思っています。刺激を求めたい方、現状に満足していない方にとりわけにお勧めです。

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スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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