ハリルの代表メンバー発表に思う。 残り3カ月で、まだ試行錯誤なのか

(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 欧州遠征(3月23日・マリ戦、27日・ウクライナ戦)に出場する日本代表メンバー26人が発表された。話題を集めているのは本田圭佑(パチューカ)の復帰と、ポルトガルで活躍する中島翔哉(ポルティモネンセ)の初選出だ。

 ハリルホジッチの選択を肯定的に捉えるなら、それぞれの選出には必然性を感じる。

 日本代表の弱点はどこか。相手が強いW杯本大会では全ポジションが危険箇所になるが、現代表の枠内で見れば、右サイドの攻撃陣と、ゲームを仕切る守備的MF(4-3-3に当てはめればアンカー)になる。

 右サイドと左サイド。以前は、右からの攻撃がゴールに繋がる傾向が強かったが、直近の10試合はその反対だ。流れの中から奪った全10ゴール中、左からのセンタリングが得点に繋がったケースが5回あるのに対し、右は0。右からの攻撃が弱体化した原因はどこにあるのか。分岐点は本田圭佑が代表を去った時期と重なる。

 後任を務めたのは浅野拓磨(シュツットガルト)と久保裕也(ゲント)で、東アジアE-1選手権を除く6試合に、そのどちらかがスタメンを飾った。しかしピッチ上に、本田の存在を忘れさせるような何かを提示することはできなかった。

 それは東アジアE-1選手権で代表に初招集された伊東純也(柏)に期待が掛かる背景にもなった。伊東はその韓国戦で先制点となるPKをゲット。この試合、唯一のゴールをもたらすプレーを見せ、久保、浅野に迫る存在であることをアピールした。

 伊東が縦に出るプレーを得意にするのに対し、久保、浅野には右ウイングとしての十八番がない。所属クラブでコンスタントに出場している久保はともかく、出番を失った浅野が今回、招集外となるのは当然の帰結だろう。しかし今回、その代わりに選ばれたのは伊東ではなく本田だった。

 本田といえば、まずその俺様的なキャラに目がいくが、今回の招集でセールスポイントになったのは、左利きという特殊性ではないだろうか。

 プレースタイルは伊東とは対照的だ。縦への推進力は期待できないが、キープ力はある。全盛時に比べると衰えたとはいえ、右サイドで起点になる力がある。右ウイングに左利きを置くことで生まれる独特の安定感に、期待が抱けるのだ。

 これは、伊東はもとより久保、浅野にもない魅力だ。本田が彼ら同様、右利きの選手だったら、呼ばれていなかった可能性は大いにある。復活劇はなかった可能性が高いのだ。

 とはいえ、メンバー発表会見でのハリルホジッチの本田評は、けっして高そうには聞こえなかった。ニュアンスから察すれば、テストだ。チャンスを与えたという印象。最終メンバーに残る確率は、ハリルホジッチから「ピッチ外でも不可欠な人材」と評された長谷部誠(フランクフルト)とは比較にならない。

 中島翔哉は所属クラブでは通常、左を担当するが、「右も真ん中もできそうだ」とハリルホジッチに言わしめた。弱点である右の補強も兼ねた人選と言ってもいい。原口元気(デュッセルドルフ)より多機能的。使い勝手がいい選手だ。実力で並べば、1箇所しかできない選手より最終メンバーに残る可能性がある。

 一方、乾貴士(エイバル)が選外に漏れたのは、大きな驚きだった。しかし、これまでの使われ方を見れば、当然という気もする。ハリルホジッチから好かれていない。原口、宇佐美貴史(デュッセルドルフ)は対照的に好かれている。好き嫌いが判断の基準になっている。そう言いたくなるほど、これは非常識な判断になる。

 原口、宇佐美が所属するのはブンデスリーガ2部。チームは現在、そこで首位を走るが、乾が所属するエイバル(スペインリーグ9位)とは格が違う。出場時間も、乾が2161分出場しているのに対し、宇佐美は793分、原口は今季前半のヘルタ在籍時を加えても519分にしかならない。しかも乾はこの状態をほぼ3年間、維持している。

 これはハリルホジッチが、批判されることを承知のうえで下した強引な選択といっていい。メディアは、突っ込みを入れることがそのあるべき姿だろう。

 今回、乾と並んで落選が話題になったのは井手口陽介(クルトゥラル・レオネサ)だ。ハリルホジッチは所属チームで満足にプレーできていないことを落選の理由に挙げたが、年末の東アジアE-1選手権では3試合すべてに出場。昌子源(鹿島)、小林悠(川崎F)に次ぐ出場時間を記録した。わずか3カ月前の話だ。

 事件といえば事件だが、想像が及ばない話ではなかった。井手口は高い身体能力が取り沙汰されるなかで、雑なプレーが目についたからだ。

 11月のブラジル戦では、そのクリアミスからマルセロに手痛い一発を浴びている。前述の韓国戦でも、似たようなプレーを見せている。見る人が変われば、評価が変わる選手なのだ。したがって、スペインの2部チームで満足な出場機会が与えられていない現状に、大きな驚きはない。

 ハリルホジッチにも見えていたと思う。井手口は韓国戦の後半21分、三竿健斗(鹿島)と交代でピッチを退いているが、それはプレーの状態がよくない選手を下げる、一般的な交代そのものに見えた。このときの好ましくないイメージが、ハリルホジッチの中に強く残っているのではないか。

 井手口は4-3-3のインサイドハーフでもプレーするので、守備的MFとは言い切れないが、そこはチームのヘソだ。所属クラブではディフェンダーとしてプレーする長谷部が、どこまでできるかも謎だ。スタメンで起用されることが多い山口蛍(セレッソ大阪)にも、所属チームでのプレーを見る限り不安は残る。中心選手らしさに欠ける。

 チームはここが固まらなければぐらつく。というわけで、チーム最年少ながら、三竿にかかる期待は大きい。Jリーグでいま最も注目に値する選手を1人挙げよと言われれば、この選手をおいて他にはいない。クレバーで、落ち着きがあり、身体も井手口、山口より2サイズ大きい。ボール奪取能力も高い。

 とはいえ、だ。今回の欧州遠征が終われば、残るは5月末の壮行試合と、ロシアに向かう途中で行なわれる準備試合のみだ。9合目を越えた段階にさしかかっているにもかかわらず、ハリルホジッチはテストを続けている。つまり、依然、試行錯誤の状態にある。中心選手の顔さえ見えてこない。

 こうした低迷状態からV字回復を果たし、本大会でベスト16入りしたのは2010年南アフリカW杯に臨んだ岡田ジャパンだ。救世主となったのは本田だったが、現在のメンバーを見渡す限り、8年後の本田はいても、8年前の本田はいない。目先の勝利を求めるあまり、ロシアW杯本大会から逆算して考えることができなかった監督の計画性のなさが、今回のメンバー発表で改めて露呈した気がする。

 ここまで順調にはきていないという自覚が、ハリルホジッチにはあるのか。8年前の岡田武史監督にはそれがあった。このままではマズいという危機感が、岡田監督の起爆剤になっていた。相変わらず会見場で居丈高(いたけだか)に振る舞うハリルホジッチの姿を見ていると、心配は募るばかりだ。

(集英社 webSportiva 3月16日掲載)

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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