コンフェデ杯開幕。W杯開催国 ロシアのサッカーは、なぜ冴えないのか

ロシア2-0ニュージーランド(写真:ロイター/アフロ)

6月17日、コンフェデレーションズカップが開幕する。出場するのはロシア、ニュージーランド、ポルトガル、メキシコ(以上グループA)、カメルーン、チリ、オーストラリア、ドイツ(グループB)の8カ国。日本が出場しないこの大会、見どころのひとつはW杯を1年後に控えた開催国ロシアの現状とそのサッカーだろう。

1991年12月、旧ソビエト連邦が崩壊。ロシア代表として初めて参加したW杯は94年アメリカ大会になる。グループリーグで優勝したブラジル、3位になったスウェーデン、カメルーンと戦い3位。くじ運に恵まれず、ベスト16には届かなかった。続く98年フランスW杯は、欧州予選でグループ2位になり、プレーオフに進出。イタリアと接戦を演じたが、通算スコア1-2で惜敗、涙を飲んだ。

ロシアはその頃、まだソ連のイメージを引きずっていた。1988年欧州選手権(ユーロ)で準優勝に輝いたソ連。決勝でオランダに敗れはしたが、スピード感溢れるダイナミックなサッカーで欧州を席巻した。しかし、この時に出場したロシア人選手は、GKリナト・ダサエフ、DFヴァジス・ヒジャツリン、MFセルゲイ・アレイニコフといった程度。大半がウクライナ出身者で占められていた。

事態に不満を抱いたソ連の中央政府は、もっとロシア人選手を使うべしと指令を出したそうだが、当時のソ連代表監督でウクライナ人のヴァレリ・ロバノフスキーはそれを断固、拒否。そのあげくの準優勝という好結果に対して、中央政府は沈黙するしかなかった。

ソ連崩壊後のロシア代表がW杯本大会に出場したのは計3回。先述の1994年大会に加え、2002年日韓共催大会、2014年ブラジル大会だ。結果はいずれもグループリーグ落ち。つまり、ロシアはW杯で一度もベスト16の壁を越えたことがない。

開催国がベスト16に駒を進めることができなかったケースは過去に一度もない──は、2002年大会当時、日本が抱えることになった”呪縛”だが、その後、2010年大会で南アフリカがグループリーグ落ちしたため、現在、それはないものとなった。とはいえ、大国を自負するロシアにとっては、威信にかけても越えなければならないハードルだ。

ウクライナが欧州予選を突破した場合も、ロシアにとっては厄介だ。成績で劣るわけにはいかない。ちなみにウクライナのW杯最高位は、2006年ドイツ大会のベスト8。2018年W杯のロシアが目標とするのは、このラインだろう。

一方、ロシア代表がユーロに初めて出場したのは、96年のイングランド大会になる。続く2000年ベルギー、オランダ共催大会こそ、本大会出場を逃したが、その後は4大会連続で出場中。成績はグループリーグ落ちが3回(2004、2012、2016)。ベスト4(2008年)が1回だ。

オーストリア、スイスで共催された2008年大会。ロシアは優勝したスペインと準決勝を戦い、0-3で敗れた。しかし、その戦いぶりは途中までかなりよく、番狂わせの可能性を秘めていた。MF系の選手が多くを占めるスペインの、その真ん中に固まりやすい傾向を見抜いたような知的なサッカーで対抗。スペインの選手交代を機にプランは崩れ、スコア的には完敗に終わったが、見せ場を作り、存在感を発揮した。

監督が誰か、知りたくなるサッカーと言ってもいい。3-2で勝利した準々決勝、オランダ戦もしかりだった。好調を維持し、優勝を狙う勢いのあるオランダに対し、ロシアは従来の布陣を組み替えて臨み、それを勝因とした。

采配を振るった監督はフース・ヒディンク。試合後の記者会見で、このロシア代表のオランダ人監督は、開口一番、詰めかけたオランダ人記者に向けて自らの采配を自画自賛した。

ヒディンクのみならず、ロシアのサッカーが、最も華々しく見えた瞬間になる。

だが、輝いて見えたのは、それが最初で最後。国力の割に振るわない原因はどこにあるのか。サッカーのスタイルは毎度オーソドックス。特段、守備的でもなく、パスワークを重視した、ロシアのアイスホッケーを彷彿とさせる繋ぐサッカーをする。だが、何かイマイチ冴えがない。巧さはあるがポップではない。

選手の大半が国内リーグでプレーしていることも影響している。大舞台慣れしているように見えないのだ。選手のポテンシャルも、及第点の選手は多いが、特別な選手は少ない。

ベスト4入りしたユーロ2008のチームには、アンドレイ・アルシャビンという抜けた力を持つアタッカーがいた。ロマン・パブリチェンコ、ディニヤル・ビリャレトディノフ、ユーリ・ジルコフなど、その他にも好選手が多かった。ヒディンクの采配も光ったが、それなりに充実した戦力を誇っていた。

しかし、長い歴史を遡っても、それ以上の選手は多く出てこない。過去にロシア出身者でバロンドールを受賞したことがある選手は、レフ・ヤシン(1963年)ただ1人。GKで受賞した唯一の選手だ。そういう意味では貴重な存在だが、フィールドプレーヤーは誰もいない。投票で3位以内に入った選手もいない。

ついでに言えば、ソ連として準優勝した88年欧州選手権のGK、リナト・ダサエフも、ロシア出身で、バロンドールに値する名選手だと言いたくなる。あえてフィールドプレーヤーで挙げるなら、94年アメリカW杯で得点王に輝いたオレグ・サレンコぐらいだろう。

オレグ・ブロヒン(75年)、イゴーリ・ベラノフ(86年)、アンドリー・シェフチェンコ(04年)と、3人のアタッカーがバロンドールを受賞しているウクライナ出身選手(ブロヒン、ベラノフは当時のソ連代表選手)に比べると明らかに見劣りする。

ロシアはアジアにおける中国と立ち位置が似ている。高いサッカー人気を誇る大国ながら、代表チームの成績は振るわない。中国は荒っぽい気質に加え、サッカーを専門的に始める年齢に制限があるというハンディを抱えるが、ロシアの場合、その理由は見えにくい。

そのぶん、可能性を秘めた国と言えるのかもしれない。目先の成績のみならず、2018年を変化のきっかけにしてほしいものだ。

(Web Sportiva 2017年6月17日掲載原稿)

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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