攻撃陣の厚さ。レアルがユーベに 大勝でCL2連覇を果たした要因

写真/杉山茂樹

チャンピオンズリーグ(CL)決勝。戦前の下馬評は接戦だった。大手ブックメーカーのひとつであるウィリアムヒル社の予想でも、ユベントス勝利が3倍なのに対し、レアル・マドリードは2.7倍と接近。ユーベがバルサに1-3で敗れた2年前の決勝とは、様子が大きく違っていた。

R・マドリードの連覇阻止に燃えるユーベは、途中までうまく戦った。前半を1-1で折り返したとき、4-1という結末を想像することは不可能だった。

R・マドリードのジネディーヌ・ジダン監督は、イスコを先発で起用。従来の3FWではなく、2トップで戦った。彼を2トップ下に据える中盤ダイヤモンド型の4-4-2だ。

対するユーベは、中盤フラット型4-4-2。試合前に配布された資料には、ダニ・アウベスを右ウイングバックに置く3-4-1-2と紹介されていたが、実際の配置は右サイドハーフで、よって、両軍にはギャップが存在することになった。

R・マドリードは左サイドで数的不利を招くことになった。SBマルセロの前方で常時、構える自軍選手がいない。誰かが流れてこないと、ユーベと数的に同数にはならない。つまりマルセロは、ユーベの右サイドハーフ、D・アウベスに行く手を塞がれた状態にあった。

イスコを起用すれば、マルセロは生きにくい。これは予想されたことでもあるが、ジダン監督はそれでもなおイスコを起用。2トップ下に置いた。しかし、そのイスコもピッチ上をさまようことになる。どのようにプレーすれば、活躍の糸口を見いだせるか。ゴールに直結したプレーができるか、解答を見出せずにいた。

前半20分、R・マドリードはクリスティアーノ・ロナウドが先制。その7分後、ユーベもすかさずマリオ・マンジュキッチの鮮やかな胸トラップ&ボレーで同点とする。試合は火がついたような撃ち合いになった。両者互角。この状態は後半に入っても続いた。ジダンの選択はうまくいかずにいた。繰り返すがこの時、4-1のスコアは想像できなかった。

スコアを2-1とする、決勝ゴールが生まれたのは後半16分。カゼミーロのシュートがサミ・ケディラの足に当たり、コースが変わってゴールに飛び込むというユーベにとって不運なゴールだった。

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しかし、危なそうなムードはその少し前から漂っていた。ユーベが反発力を鈍らせていたからだ。例えばゴンサロ・イグアインは、前線でボールを保持できず、弱々しい姿をさらけ出していた。前半活躍したマリオ・マンジュキッチも、もはやいっぱいいっぱい。期待のアルゼンチン人FWパウロ・ディバラも、消えることが多くなっていた。両軍の力に、明らかな差が見え始めていた。

後半19分、試合を3-1とするR・マドリードのダメ押しゴールは、ルカ・モドリッチのアシストから生まれた。そのマイナスの折り返しを、C・ロナウドがニアで合わせたゴールだが、マンジュキッチにはその時、モドリッチにパスを出した右SBダニエル・カルバハルを追いかける元気がなかった。

ユーベは2-1にされると、右SBアンドレア・バルザーリに代え、フアン・クアドラードを投入。より攻撃的に変化させたが、打つ手はこれのみだった。2人目の交代は後半26分。前半活躍したミラレム・ピアニッチに代え、クラウディオ・マルキージオが登場。あとはゴールを奪うのみ、という段で投入されたのが、決して攻撃的とは言えない、バランサーのマルキージオだった。

真っ先に投入すべきは決定力のあるアタッカー。しかしながら、ベンチを見渡しても適任者はいない。ユーベの敗戦はこれをもって確定した。

2点のリードがあるにもかかわらず、ガレス・ベイル、マルコ・アセンシオ、アルバロ・モラタという強力なアタッカーを、次々とピッチに送り込んできたR・マドリード。そこがユーベとの最大の違いだった。

ユーベの看板FWイグアインは、R・マドリードをお払い箱になった選手だ。マンジュキッチはバイエルン、アトレティコ・マドリードを渡り歩いた31歳のベテラン。この2人がフル稼働せざるを得ない台所事情に、ユーベの弱みは集約されていた。

90分、R・マドリードに4点目のゴールをもたらしたマルコ・アセンシオは、オランダ人の母親を持つスペイン期待のウイング。この日はベンチ外だったが、ルーカス・バスケスも右ウイングで確実な縦突破の技量を持つスペイン人選手だ。

R・マドリードといえば、C・ロナウド、カリム・ベンゼマ、ベイルの3人が、バルサの3人(メッシ、ネイマール、ルイス・スアレス)同様、看板選手として真っ先に紹介されるが、層の厚さ、バラエティさという点ではバルサより上。攻撃力は文字通り世界一だ。CLとなってから初めて2連覇を達成した、これこそが最大の原因と言える。

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チャンピオンズカップ時代の88~89、89~90に連覇したミランも、マルコ・ファンバステンとルート・フリットという世界的なオランダ人アタッカーを擁していた。根底に流れていたのはプレッシングサッカーだが、攻撃陣も破壊力抜群だった。

97~98のCLでユーベを倒し欧州一に輝いたR・マドリードは、その時、挑戦者の立場にいた。相手のユーベは3年連続の決勝進出で、ジダンを筆頭にアレッサンドロ・デル・ピエロ、ディディエ・デシャン、フィリッポ・インザーギ、エドガー・ダービッツなど。世に知られた選手が多数いた。前評判で勝るのもユーベだった。だが、5バックになりやすい守備的サッカーだった。

攻撃的な挑戦者(R・マドリード)が、守備的な強者(ユーベ)を下した一戦だ。その4シーズン後、ジダンは守備的な色を濃くしていったユーベから、攻撃的な色を強めていったR・マドリードに移籍。そして01~02シーズン、欧州一のタイトルに輝いた。以来、R・マドリード人として、サッカーに関わっている。こちらの水の方が合っているのだろう。

イタリアとスペインの関係も逆転した。ミランが2連覇を達成した当時は、まさにイタリアの時代だった。サッカーも攻撃的だった。それが守備的サッカーに転じ、97~98シーズン、ユーベが決勝でR・マドリードに敗れると、スペインに逆転を許す。以来、状況は変わっていない。

ユーベはイタリアの雄。セリエA6連覇中だ。しかしCLでは、14~15シーズンの決勝でバルサに完敗。今季もR・マドリードに、それ以上のスコアで完敗した。返り討ちに遭うように。相手の監督が元ユーベの選手として活躍したジダンだったというオチもつく。

R・マドリードがリードする欧州の情勢は来季も健在。とすれば、R・マドリードの3連覇達成も現実味を帯びてくる。多彩なプレーが続々ピッチに現れる華々しいサッカー。誰かに止めてほしい気持ちが半分、もう少し見たい気持ち半分、なのである。

(集英社・Sportiva 2017年6月4日掲載原稿)

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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