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CL決勝最大の見どころは、 レアルの左サイド対ユベントスの右サイド

杉山茂樹スポーツライター
ベンゼマ対グリーズマン(右)(写真:ロイター/アフロ)

惜しい試合だった。

0-3という第1戦の結果を受けて行なわれたチャンピオンズリーグ(CL)準決勝第2戦。アトレティコ・マドリードは、前半16分までに2ゴールを奪い、通算スコアを2-3とした。試合は俄然、白熱。アウェーのレアル・マドリードは慌てた。逆転の目が低い0-3のスコアから、開始わずか12分で大接戦に一変。こんなはずではなかったと、パニックに陥っても不思議のない状況だった。

アトレティコは盛り上がった。しかし同時に色気も出た。もう1点奪えば振り出しに戻る。時間もたっぷりある。だが功を焦り、アウェーゴールを奪われては身も蓋もない。アウェーゴールルールに基づけば、1点を奪われれば、さらに3点必要になる。それは絶望的状況を意味する。勢いそのまま一気呵成に打って出ていくか。じっくり慎重な戦いに切替えるか。難しい判断を迫られることになったが、ディエゴ・シメオネ監督は手綱を引き、慎重な戦いを選択した。

慎重な戦いとは、高い位置からプレスを掛けるサッカーではない。それが相手にとって嫌な作戦である保証はなかった。実際それ以降、アトレティコの攻撃がおとなしくなるや、レアル・マドリードは平常心を回復。本来の力を発揮し始めた。

その結果が42分のカリム・ベンゼマの突破であり、そこから生まれたイスコのゴールだった。通算スコア2−4。勝負はこの瞬間、決した。通算2-3にした後、そのまま能天気に攻め込んでいった方がよかったのではないかと思うが、それは結果論と言うべきか。

慎重な姿勢が必ずしもディフェンス強化に繋がらないサッカー競技の特殊性と、アウェーゴールルール。アトレティコはそれぞれと正しく向き合うことができなかった。チャレンジャー精神を忘れ、馬鹿になりきることができなかった。

R・マドリードとアトレティコは、CLでは2013~14から4シーズン連続で対戦し、過去3度はすべてR・マドリードに軍配が上がっている。しかもすべて好勝負。決勝で対戦した2013~14は延長戦。2014~15は準々決勝での対決でロスタイムに決着。2015~16は再び決勝対戦となり、延長、PK戦だった。

まさにあと一歩。アトレティコが馬鹿になれない理由はよくわかる。だが、R・マドリードにとって怖いのは、馬鹿になった無欲のアトレティコだ。

R・マドリードを救ったのはベンゼマだった。ライン際で相手の守備者を置き去りにしながら深々とえぐり、マイナスに折り返したそのウイングプレー。称賛されるべきである。本格的ストライカーでありながら、ウイングプレーにも芸がある。

この日2トップを組んだクリスティアーノ・ロナウドもしかり、だ。ウイング兼ストライカー。ベイルが故障で欠場し、3トップが2トップに変わってもなんとかなってしまう理由は、彼らのFWとしての幅の広さにある。ドリブルで相手の逆を突くボール操作術である。真ん中しかできない単調なFWではないところがベンゼマの強みであり、今日的なFWとしてのあるべき姿だろう。アトレティコのアントワーヌ・グリーズマンも、ウイング兼ストライカーを代表する選手である。

さらに言えばリオネル・メッシ、ネイマール、ルイス・スアレスにも、そのセンスがある。バルサでかつて、メッシの脇で左ウイングを務めたティエリ・アンリも、ウイング兼ストライカーだった。

そのアンリ2世の呼び声高いキリアン・ムバッペ。4-4-2で戦うモナコでは2トップの一角を占めるが、アンリのように左ウイングでプレーすることができていれば、ユベントスとの準決勝第2戦、前半終了時までに通算スコアを0-4(第1戦0-2)とされることはなかったのではないか。モナコの左サイドは結果的に第1戦同様、穴になった。

モナコはユーベの右サイドバック、ダニ・アウベスにMVP級の活躍を許した。前半33分、マリオ・マンジュキッチのゴールをアシストされ、その11分後には、彼本人にミドルシュートを叩き込まれた。

モナコは、4-4-2の左サイドハーフで背番号10をつけるベルナルド・シルバが真ん中に入ってしまったため、左サイドは左サイドバックのベンジャミン・メンディの1人になった。そのサイドにおける数的不利をD・アウベスに突かれた格好だ。

0-2という劣勢の中で、ゲームメーカー的センスを誇るB・シルバの能力を最大限発揮させようとしたわけだが、B・シルバがボールを触る時間は1試合せいぜい2、3分。そのメリットを、D・アウベスをフリーにするデメリットが相殺した結果がこの敗戦になる。モナコで一番期待できそうなムバッペを、バルサ時代のアンリのように、左ウイングでプレーさせるオプションがあれば、少なくとも2試合連続で活躍を演じたD・アウベスのプレーは抑制できたはずだ。

ユーベの生命線として活躍したD・アウベスは、決勝(6月3日、カーディフ)でも輝くことができるか。ユーベの右サイド対R・マドリードの左サイド。最大の見どころは、この攻防だ。

R・マドリードの左サイドバックはマルセロで、左ウイングはC・ロナウドだ。ベンゼマもそこに流れてくる。右より左からの攻撃に強さを見せるR・マドリード。D・アウベスにとっては厳しい環境だ。ユーベがそこでどんな対策を講じるか。決勝戦、一番の見どころはそこになる。

スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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