次戦は難敵イタリア。ドイツの運命を握るのは「キレッキレ」のドラクスラー

3対0。ドイツがよすぎたのか。スロバキアがダメすぎたのか。難しい問題だ。ドイツはこの結果、準々決勝でスペイン対イタリアの勝者と対戦することになった。大勝の後に待ち受けるのは苦戦。これがサッカーにありがちな傾向だとすれば、ドイツ人でさえスロバキアの無抵抗ぶりを嘆きたくなるだろう。

スコアは3-0だが、両者の差はそれ以上。実力差に輪をかけたのが、スロバキアの守備的な姿勢だ。布陣こそ4-3-3を敷くが、ボールを前で奪おうとする精神が低い。それでいて、アイルランドやウェールズに代表される、恥も外聞もなく放り込む作戦をとるわけでもない。

低い位置で奪ってそこからパスで組み立てていくのだが、プレッシャーを浴びるうちに奪われてしまう。奪われ方が悪いので、その瞬間からピンチが始まる。ハーフコートゲーム同然。ここまで差のある試合を見るのは今大会では初めてだ。

もちろん、ドイツがよかったとの見方もできる。ピッチを広く使い、ボールを散らしながら運ぶので、球回しに危なげがない。奪われにくいので、支配率が上がる。長短のバランスもいい。何事にもやり過ぎ感がないのだ。

開始8分、トニ・クロースの左CKは相手DFにクリアされたが、そのこぼれをジェローム・ボアテングが後方から突き刺し先制。さらに13分、スロバキアのマルティン・シュクルテルがマリオ・ゴメスを倒しPKを献上する。メスト・エジルの左足キックは凡庸で、GKのセーブにあったが、観戦者にとってこれは歓迎すべき失敗だった。2-0になったら、その時点で試合は終わってしまうからだ。

試合を決定づける2点目は、いつ決まっても不思議はなかった。ドイツはチャンスの山を築いたわけだが、43分の場合、スロバキアはどうすることもできなかった。見てるだけ。呆然としているうちにゴールは決まった。

43分、左SBのヨナス・へクターから、4-2-3-1の左を担当するユリアン・ドラクスラーにパスが出る。ヴォルフスブルク所属の22歳は、タッチライン際でボールを受けるや、スロバキアのユライ・クツカと1対1に。突っかけながら前進し、右足に体重を乗せた次の瞬間、またぎの動作を入れながら縦に出るワンフェイントを入れると、クツカを見事なまでに置き去りにした。

マーカーをかわし、相手陣最深部に軽快なステップで侵入したドラクスラー。マイナスの折り返しを右足アウトで切れ味鋭く送り込むと、マリオ・ゴメスはインサイドにボールを当てただけで得点をモノにした。

2014年ブラジルW杯には、20歳の若さでメンバー入りしたが、出場機会は7-1で勝利した準決勝対ブラジル戦に交代出場したのみ。ご褒美で出場させてもらった感じだが、2年後のユーロ2016では堂々のスタメンだ。身長は187センチ。だが、相手の逆を取る器用さがある。サイドアタッカー、ウイングと聞けば小柄な体格を連想するが、この選手は大きい。メッシというより、ファンペルシー、ロッベン系だ。

所属のヴォルフスブルクは、昨季のチャンピオンズリーグ準々決勝で、優勝したレアル・マドリードと対戦。第1戦を2-0の勝利で折り返す善戦を見せた。ドラクスラーも活躍、このレベルで十分通じることを証明していた。問題はドイツ代表にはまるかどうかだったが、バッチリである。2年前にはなかった魅力が追加された。

ドイツの3点目は、そのドラクスラーがゲットした。後半19分、クロースが蹴ったCKに、マッツ・フンメルスが頭で競り勝つと、そのこぼれがドラクスラーの目の前に落ちてきた。回し蹴り気味のボレーでゴールの天井へ豪快に突き刺す、まさにドラクスラーの日と言いたくなる華々しいゴールだった。

とはいえ、触れたくなるのは、このコーナーキックを得るに至るプロセスだ。

スロバキアは後半に入ると4-3-3を採用しているにもかかわらず、ドラクスラーのようにサイドの高い位置で構える選手がいなくなり、4-2-2-2的になっていた。ドイツの右ウイング、トーマス・ミュラーにボールが出た時、スロバキアは近場に対峙する選手がいなかったため、左SBが対応に出るしかなかった。

低い位置に構えていたSBが、仕方なく前に出ることになったのだが、ドイツはその上がったSBの裏を狙っていた。そこに計画通りボールを運び、CKを得た。相手の陣形の不備を突いた頭脳的なボール運びで、CKを奪い、それをドラクスラーのゴールにつなげたのだ。

スロバキアがダメなのか。ドイツが優れているのか。問題は振り出しに戻るが、答えはドイツの次戦(イタリア対スペインの勝者)に出る。

ヨアヒム・レーヴ監督は、ドラクスラーがチーム3点目のゴールを奪うと、その数分後に、彼をベンチに下げた。大勝の後に待ち受けるのが、苦戦であることを知っているからだ。大勝の象徴であるドラクスラーを、いち早くベンチに下げることで、そのムードを消そうとしたわけだ。

価値ある交代に見えた。準々決勝でも、ドラクスラーはキープレーヤーになると見る。

彼を止めない限り、イタリア、あるいはスペインの勝利はない。そう思いたくなるほど、いまドラクスラーのドリブルにはキレがある。

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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