16強最後のイスはアイルランド。イタリアの「主力温存」は吉と出るか

決勝トーナメント16番目のイスに滑り込むのはどこか。

各組の2位以内、計12チームと各組3位の中で成績のよい4チームで、ベスト16以降を争うユーロ2016。グループリーグ3週目の最終マッチを前に、14チームが16強入りを決めていた。この時点でまだ当落が確定していないのは、イタリアを除いたE組の3チーム(ベルギー、スウェーデン、アイルランド)と、その結果次第で(スウェーデンとアイルランドが引き分けた場合)、16入りが転がり込むトルコの計4チーム。

イタリア対アイルランドは、ベルギー対スウェーデンと同時刻(現地時間22日21時)にキックオフされた。

ベスト16入りの争いと同時に注目されたのが、この争いに関係がないイタリアの戦い方だ。E組首位のイタリアは、前日クロアチアに敗れD組2位になってしまったスペインと決勝トーナメント1回戦(6月27日・サンドニ)で対戦することが決まっている。

イタリアにとってこのアイルランド戦は、スペインとの大一番に備えた戦いでもあった。メンバーを大きく変えて臨む方法と、従来のメンバーを主体に戦う方法と。やり方は大きく分けて2つある。大きく変えて臨めば、主力選手を休ませることはできるが、流れを変えてしまう恐れがある。反対に従来のメンバーを主体に戦えば、決勝まで最大7試合戦うことを考えた時、最後にメンバーのやりくりが苦しくなる。

スペインは、グループリーグの最終戦対クロアチア戦を、1、2戦とほぼ同じメンバーで戦い、そして敗れた。試合前に1位抜けを確定させていたわけではないが、もう少しメンバーをいじれる余裕があったにもかかわらず、それをしなかった。

イタリアはメンバーを大きく変えてきた。その結果、立ち上がりからアイルランドにペースを握られることになった。これまでとは異なる試合を強いられた。それを覚悟の上で臨んだわけだが、サポーターの数や熱気の違いも、影響していたようだ。

アイルランドはその点でイタリアに完勝していた。リールのスタジアムは開閉式ドーム。この日は屋根が閉じていて、アイルランドサポーターの大声援が反響しやすい状態だった。止むことのない応援が選手の背中を押していることは明白で、イタリア選手を慌てさせる原因にもなっていた。

前半終了間際には、シュートモーションに入ったジェームズ・マクリーンを、フェデリコ・ベルナルデスキが倒したかに見えたが、判定はノーファウル。スタジアムはブーイングの嵐に包まれた。

とはいえ、押され気味の0-0は、イタリア人が得意にする形だ。相手ボールをストレスなく黙々と、むしろ喜々としながら追いかける。アイルランドペースに見える試合は、見方を変えればイタリアペースのようにも見えた。

アイルランドのサッカーは分かりやすい。ズバリ、放り込みだ。センタリングの角度がつく所にどうにかボールを運び、そこからドスンと入れ込む。崩せてはいないので、運が必要になる。論理性に乏しい、偶然性に懸けるサッカーであり、相手のミスを待つサッカーだ。

5バックで後ろを固めるイタリアDF陣のその前で、アイルランドはボールを回すものの、決定的なチャンスどころか惜しいチャンスさえつかめない。逆に、後半32分には交代で入ったロレンツォ・インシーニェに、ポスト直撃弾を浴びる始末。イタリアの逃げ切り濃厚かに思えたが、サッカーの神は、まだまだ試合を楽しませてくれた。

84分、イタリアの主将、レオナルド・ボヌッチが、こともあろうにゴール前で、ウェズリー・フーラハンにプレゼントパスを送った。ところがこの絶対的チャンスに、シュートは当たらずで、アイルランドサポーターの嘆きがスタンドにこだました。まさかその直後、いましがたシュートを外したフーラハンが、決勝ゴールのアシスト役になると思った人はいなかったはずだ。

その右からのセンタリングは、ゴール前に走り込んだロバート・ブレイディの頭にどんぴしゃのタイミングでヒット。背後にアイルランドサポーターが陣取るゴールに、勢いよく吸い込まれていった。

同時刻に行なわれたベルギー対スウェーデンで、ベルギーにゴールが生まれたのも同じタイミングだった。

イタリア1位、ベルギー2位、アイルランド3位、スウェーデン4位。アイルランドは晴れてベスト16入りし、スウェーデンと、結果待ちだったトルコは敗退となった。

アイルランドの次なる相手は開催国フランス。一方、メンバーを落として戦いアイルランドに敗れてしまったイタリアは、スペイン戦に向けてどんな流れを作れるか。アイルランド戦のよくない終わり方が、少なからず気に掛かる。

(初出 集英社 Web Sportiva6月23日掲載)

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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