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2ステージ制は後ろ向きの改革。6×3の「カンファレンス制」の方が進歩的。絶対に面白い

杉山茂樹スポーツライター

来季から2ステージ制で行われるJリーグ。少なくとも僕は、不満、不安が勝っている状態だ。

「現行制度を維持すべし!」と、変わることに対して拒否反応を示しているわけでは全くない。変えるという判断には基本的に賛成だ。

ドイツ、オランダ、フランス、イングランド……。日本が、これらの国に囲まれたベルギーの位置にある国なら断固反対だ。UEFAの方針に逆らい、独自の道を歩もうというのなら「No」と言うに違いない。だが、日本が位置しているのは欧州ではない。そこから遠く離れた極東アジアだ。

AFC(アジアサッカー連盟)が、UEFAのように強烈な指導力を発揮し、各国リーグのあるべき姿はこれだ! と、他国と方式を一致させることのメリットを示せているわけでもない。Jリーグは、問題を自らの力で解決しなければならない宿命を抱えている。

リーグの歴史は浅い。ひとつのスタイルを何十年守り続けてきたわけではない。現在のJリーグにひどく魅力を感じている人も決して多くない。各試合会場に足を運べば、盛り上がっているように映る。だが、盛り上がっているのは当事者。世の中的な関心は低い。視聴率5%に達する試合は皆無に等しい。これが現実だ。

Jリーグサイドが「変わりたい願望」を抱くのは当然だと思う。問われているのは変わり方。どう変えるか、どう変わるか、だ。

見る側に魅力的だと思わせる必要がある。世の中に改革をアピールする必要がある。前向きな変化でなければならないが、2ステージ制は、そうした視点に著しく反している。何より新鮮さに欠ける。そして理不尽だ。

なぜ2ステージ制は2004年を最後に廃止になったか。理由は様々だが、最も大きかった理由は、前期の優勝チームが、後期に手を抜いてもチャンピオンシップへの出場が確約されていたことにある。つまり、年間トータルの成績が悪くても、年間チャンピオンになれてしまう矛盾を抱えていた。

それとは真反対に、前期、後期の覇者が同じチームで、結局、チャンピオンシップが行われなかったり、また、チャンピオンシップの決着がPK戦だったり、締まりの悪い結末がしばしば発生したこともあるが、当時の日本のサッカー界には、2ステージ制はもはや限界とのムードが漂っていた。多くの人がそれに拒否反応を示していた。1ステージ制への移行は自然な流れだった。

翻っていま、1ステージ制に対して、そこまで拒否反応を示す人はいるだろうか。少なくともJリーグに熱中できている人の多くは、現行制度の存続を望んでいる。それでも、変えようとしているわけだ。これは、いわば英断。

だが、そこで2ステージ制を持ち出されると、英断ではなく、失敗を恐れた後ろ向きの政策、その場しのぎの政策に見えてしまう。何年か経てば、10年前と同じ類の問題に直面することは分かりきっている。

変えるなら前向きに。現行制度より日本の実情とサッカーの本質の両方に、できるだけ沿ったものにしたい。

現行制度の問題はどこにあったか。僕は18チームという数の多さにあると思う。シーズン後半に入ると、優勝争いと降格争い以外、見どころがなくなる。順位に重みがない。焦点がぼやける。他のチーム、リーグ全体に関心が抱けない。ライバル意識が働かないーー等々だが、在り方としては、比較対象となる6チーム×2リーグで争われるプロ野球の方が面白そうに見える。

Jリーグも6チームの塊にしたくなる。6チームとは、18チームを3で割った答えだ。目指すべきは、日本のプロ野球にもう1リーグ足したもの。アメリカMLBで言うところのカンファレンス制の導入だ。

来季J1リーグを戦う18チームを、東西を基軸にA、B、C3つのグループに分割すると以下のようになる。

A)山形、仙台、新潟、鹿島、浦和、柏

B)東京、横浜、川崎、甲府、湘南、清水

C)松本、名古屋、G大阪、神戸、広島、鳥栖

この塊でリーグ戦(1シーズン制)を行うのだ。現行では、各チームとも1シーズン34試合を戦う。その試合数を6チームのリーグに落とし込めば、総当たり7回戦制(35試合)になる。だがこれでは面白くない。交流戦が不可欠になる。同組同士による総当たりを5回戦制とし、他の2つの組の各チームと交流戦をそれぞれ1回戦ずつ行う。

そして、各組の優勝チームはファイナルステージへ進出。一方、最下位チームはJ2に降格する。

各組優勝チームの中で最も勝ち点が多いチームが、ファイナルステージの決勝へ自動的に進出。残りの2つは準決勝を戦う。各組の中で、成績の良い2位チームを加えた4チームでファイナルステージを戦うという手もある。

降格は6分の1。18分の3より面白いと思う。競争が激しくなり、それはより切実な問題になるだろう。

もちろん、J2にも適用したい。J1同様、東西を基軸に3つのグループに分けると、以下のようになる(現行のチーム数は22。3で割り切れないので、C組だけ8チームにした)。

A)札幌、水戸、栃木、群馬、大宮、千葉、東京V

B)横浜FC、金沢、磐田、岐阜、京都、C大阪、岡山

C)讃岐、徳島、愛媛、北九州、福岡、大分、長崎、熊本

J1より地方クラブの数が多いので、このように3分割すれば、地域対抗の色は従来と比べて遙かに増す。C組に至っては、四国、九州リーグの様相だ。盛り上がること間違いなしだと僕は見る。

チームの移動費は、従来に比べて安くつく。資金難にあえぐ各チームにとって、歓迎すべき話だと思う。サポーターにとっても同じことが言える。遠出の回数は大きく減る。

プロ野球との違いは、6チームの塊が、シーズン毎に変わる可能性があることだ。どのチームが昇格するかで、東西を基軸とした地域割りは微妙に変わる。プロ野球よりマンネリに陥りにくい。

地域割りの仕方は、アクセスの善し悪しを勘案し、若干変更があってもいいと思うが、東西を基軸とした3分割を基本に据えるべき。セリーグ、パリーグで別れているプロ野球より、地域で分けた方が、日本は活性化する。地方のメディアに活躍の場が増えるという副産物も見込める。

いまのJリーグには、発足当初の格好良さが決定的に不足している。日本のスポーツ界を変えるんだという意気込みが大幅に減退。好きな人しか関心を抱けない最大の原因だと思う。

どうせ改革するなら、後ろ向きではなく前向きに。ここで示したカンファレンス制は、来季から始まる2ステージ制より断然、面白い。僕にはそうした確信があるのだが。

スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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