謙虚になれない日本人。コートジボワール戦の敗因は、その慢心にあり。

試合後の監督会見で「相手が良かったんです」と言ったのは、我が将、ザッケローニ監督だが、コートジボワールが良かったという印象は受けなかった。特に前半、彼らは波に乗れずに、もたついたプレイをしていた。

それでもコートジボワールは勝った。それでも日本は負けた。コートジボワールは「良かった」というより「強かった」。底力があった。これが率直な感想になる。

日本の「調子」が極端に悪かったからだろうか。ザッケローニは試合後、「いつもできていたプレイができなかった」と述べたが、いつもとは、いったいいつを指すのか。

日本が普段対戦するチームは、勝って当然の格下相手が8、9割を占める。予選で対戦するアジアの弱小チームや、ホームの親善試合に来日する代表チームとは名ばかりのチームとの戦いにおいては、確かに、もう少し良いサッカーはできていた。「いつも」の根拠は、それなのだろう。だが、その「いつも」と本番は違う次元の戦いだ。

もしザッケローニが、そのことを本当に知らなければ、世界性、世界観の欠如甚だしい監督と言うことになる。僕は、そうではなく、知った上での発言だと思っているが、だとすれば、「いつもできていたプレイができていた」は、誤魔化し、言い訳、言い逃れ、まやかしと言うべきものになる。

コートジボワール。このクラスの難敵に、日本はどう立ち向かうべきか。いかにして「番狂わせ」を狙うべきか。発想の原点、強化の原点はそこになければならない。それが実現できなければ、W杯における日本のベスト16はない。ベスト8は夢のまた夢になる。

その準備は、今回、万端整っていただろうか。4年間という歳月を、そのために有効に使ってきただろうか。

コートジボワール戦の敗戦は、予想通りのことが起きたに過ぎないのだ。にもかかわらずザッケローニは、驚いてみせた。

これは多くの日本人にもあてはまる。スポーツ振興くじ「toto」は、今回初めてW杯を対象にしたくじを販売したが、日本を発つ前に確認したコートジボワール戦の中間投票は、以下のようになっていた。

「コートジボワールの勝ち」24.64%

「引き分け」27%

「日本の勝ち」48.36%

くじは単なる予想ではない。お金の絡んだ予想だ。応援精神を投票行動に反映する人は多くない。一歩引き、少し冷静になって考えるものだが、にもかかわらず、日本人の多くは、日本の勝利に投票した。コートジボワールの勝利は、日本の勝利の半分にとどまった。引きわけも加えた全体ではわずか4分の1。率直に言って相手を見下していたわけだ。

予想外の結果であることは、ネットを通じて見えてくる世の中の反応からも理解できる。順当に負けたという様子では全くない。日本国民の多くが、コートジボワールを舐めていた。過小評価していた。そう言っていいと思う。

逆にザックジャパンを過大評価していた。強化は上手く進んでいるものと思っていた。コートジボワールに敗れた最大の原因は、そこにある。「toto」の投票傾向から判断する限り、少なくともおよそ半数の人が、本大会に臨むザックジャパンを問題なしと見ていたわけだ。

危機意識を抱かずに、楽観していたわけだ。前回はその逆だった。W杯が迫ったある頃に、ある大手のメディアが行った調査によれば、岡田監督を支持する、支持しないの関係は83対17だった。

4年前は、国民全体が危機意識を持っていた。岡田監督が、本番でメンバーを大幅に変更した理由と、それは深い関係にある。もちろん、ベスト16入りした最大の原因でもある。

とはいえ、そのベスト16進出にはラッキーな要素が詰まっていた。敗れれば、グループリーグ落ちが決定したその第3戦。対デンマーク戦の勝利は、率直に言ってまぐれだった。

試合は立ち上がりから圧倒的なデンマークペースで推移した。一瞬、0−3の敗戦を覚悟したぐらい、日本は一方的に攻め込まれていた。

本田のミラクルなFKが飛びだしたのは、そうした状況で迎えた前半17分。さらにその14分後には、遠藤のFKが決まった。

2度と望めそうもない展開。100回戦っても1回あるかないかの事件。そう言っていい。日本の勝利も10回戦って2回ぐらいしか起きそうもない確率だと言うべきものだった。

「10回戦って何回勝てるか」。運が結果に及ぼす確率が3割あると言われるサッカーにあって、この考え方はとても重要だ。順当勝ちなのか否か。勝っても冷静になる必要がある。

負けても同様だ。あのコートジボワールと10回戦って何回勝てるか。5回以上勝てる! 日本の敗戦は、アンラッキーの産物だと強がる人は、ごく少数だろう。

日本のファンは、日本の立ち位置を見誤っている。強者だと思い込んでいる。繰り返すが、その慢心がコートジボワール戦の敗因に他ならない。僕はそう思う。

次戦の相手、ギリシャについて、大会前、多くの人が勝てると踏んでいた。弱者だと決めてかかり、「いただき」とばかり、楽観的になっていた。もし、ギリシャに本当に勝ちたいのなら、その慢心は直ちに、捨てなくてはならないものになる。

それができるかどうか。ザックジャパンの立ち直りに期待するより、こちらの方が難しいのではないか。僕はそう見ている。

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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