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「フルトンと4団体統一戦、そして,,,, 」 無敗の快進撃続くSバンタム級2冠王者が語る未来

杉浦大介スポーツライター
Photo Ed Mulholland/Matchroom

6月25日 テキサス州サンアントニオ

WBAスーパー、IBF世界Sバンタム級タイトル戦

王者

ムロジョン・”MJ”・アフマダリエフ(ウズベキスタン/27歳/11戦全勝(8KO))

TKO12回2分6秒

挑戦者

ロニー・リオス(アメリカ/32歳/33勝(16KO)4敗)

 スーパーバンタム級の最強チャンピオン候補が順当勝ちーーー。6月25日、サンアントニオのポート・テック・アリーナで開催されたマッチルーム・スポーツの主催興行で、2冠王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)がロニー・リオス(アメリカ)に最終回TKO勝ちを収めた。

 2回に左手首を痛めるというアクシデントに見舞われた王者だったが、多彩な右パンチと機を見ての左強打でペースを掌握。最終ラウンドにペースを上げてダウンを奪うと、最後は連打をまとめてタフなベテランをストップに持ち込むという横綱相撲だった。

 これで2020年1月、ダニエル・ローマン(アメリカ)から奪った2冠の3度目の防衛に成功。スキルとパワーを備えたリオ五輪の銅メダリストに、試合後の控え室でリオス戦での戦いと今後の展望についてじっくりと語ってもらった。

 プロでも無敗の快進撃を続けるサウスポーは、WBC、WBO同級王者スティーブン・フルトン(アメリカ)との4団体統一戦への意気込みを隠していない。そしてその先に、いずれスーパーバンタム級に上がってくるであろうバンタム級の3冠王者、井上尚弥(大橋)とのドリームマッチもしっかりと見据えている。

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故障発生後に適応力と技術レベルの高さを見せる

 リオスとの防衛戦では、良いパフォーマンスが見せられたことを嬉しく思っています。残念ながら2回途中、左パンチを当てたときに手首を痛めてしまいました。さらに何発か打った際に痛みが激しくなったため、以降は主に右パンチを使ってポイントを奪っていくことを心がけて戦ったのです。

 試合を通じて、何度かリオスにダメージを与えることができていたと思います。それでも左抜きでタフな挑戦者のリオスをKOまで持っていくのは容易ではなく、それよりも相手のパンチを浴びないことを重視しました。振り返れば、その戦い方は効果的だったのでしょう。

 ボクシングにはケガは付き物です。故障が起こったとき、何ができるかという適応能力も大事な要素の1つ。私が試合中、片手を痛めたのはこれが初めてではありません。この大舞台でアウトボクシングを続けることによって、私の技術的なバックグラウンドが見せられたのだとすれば嬉しく思います。

Photo Ed Mulholland/Matchroom
Photo Ed Mulholland/Matchroom

 ポイントを奪っているのは分かっていましたが、最終ラウンドを前にコーナーから「仕留めにいけ」という指示が出ました。たとえ左手の状態が悪化しても、これ以上のラウンドを戦う必要はなく、そこで再びプレッシャーをかけ、思い切ってパンチを当てにいったというわけです。結果として、思い通りにストップに持ち込めたことには満足しています。

標的はフルトンと井上尚弥

 前戦後にも話した通り、私の目標はスーパーバンタム級の4団体統一王者になること。それが私の夢でもあります。

 現代では4団体統一が多くのボクサーの目指すべきものになっており、すでに何人もの“Undisputed(満場一致の王者)”が生まれています。私にとっても、フルトンにとっても、それを目指すのは当然のことです。

 6月4日、ミネアポリスでの防衛戦で、フルトンが前王者のローマンに一方的な形で勝ったことは特に驚きではありませんでした。私はすでにローマンに下しています。アマチュアの実績があり、プロでも20戦全勝の統一チャンピオンが指名挑戦者に明白に勝ったからといって、騒ぐ必要はないのでしょう。

 私はマッチルーム・ボクシングの傘下で、フルトンはPBCの選手ですが、私は世界最高のチームを抱えているという自負があります。最高のマネージャーであるバディム・コミロフはすべてのプロモーターたちと良好な関係を保っており、交渉時には最善を尽くしてくれると信じています。統一戦ができるのであれば、開催地はどこでも構いません。

 現在の私のプライオリティはスーパーバンタム級のタイトルを保ち、すべてのタイトルを統一すること。そのためには、指名試合も頻繁にこなさなければいけないのかもしれません。ただ、チャンスがあるならば、“モンスター”と呼ばれる井上とも戦ってみたいという気持ちは常にあります。

 6月7日に行われた井上とノニト・ドネア(フィリピン)の戦いは、レジェンド同士の再戦であり、その試合で勝った井上を祝福する以外にありません。より若い方の偉大な王者が勝ち残りましたが、あのような試合が実現すること自体が素晴らしいことでした。

 井上は本当に素晴らしいボクサーです。以前も話しましたが、彼と戦えるのであればスーパーバンタム級でなくても構いません。私はスーパーバンタム級の計量をいつもアンダーでクリアしており、バンタム級に下げての対戦でも問題はありません。偉大な井上との対戦は、いずれ必ず実現させたいですね。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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