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最速王者ラッセルが王座陥落の番狂わせはなぜ起こったか 3階級制覇王者マレスが分析

杉浦大介スポーツライター
Amanda Westcott/SHOWTIME

1月22日 ニュージャージー州アトランティックシティ

ボーガタ・ホテル・カジノ&スパ

WBC世界フェザー級タイトル戦

マーク・マグサヨ(アメリカ/26歳/24戦全勝(16KO))

12回2-0判定(114-114, 115-113, 115-113)

王者

ゲリー・ラッセル・ジュニア(アメリカ/33歳/33勝2敗(18KO))

 最高レベルのスピードを武器に安定王者であり続けてきたラッセルが、新鋭マグサヨに敗れて6度目の防衛に失敗した一戦は米国内でも話題を呼んだ。

 試合後、元3階級制覇王者であり、Showtimeのコメンテイターとして今戦を解説したアブネル・マレスに改めて試合内容を分析してもらった。かつて自身もWBC世界フェザー級王座を保持していた36歳のメキシカンの目に、マグサヨが番狂わせを起こした一戦はどう映ったのか。

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 ラッセルとマグサヨの試合は興味深い内容になりました。ラッセルは4回以降、右肩に故障を負っている状況だったのですから、マグサヨがオフェンス面でもう少し適切なアジャストメントを施すところが見たかったというのが正直なところではあります。相手が片手が使えないということであれば、反撃を受ける危険は少なくなるのは必然。だとすれば、もっとリスクを冒し、プレッシャーをかけていって欲しかったですね。

 ただ、ラッセルは経験豊富な真のチャンピオンであり、右手が使えない状態でもマグサヨに難しい戦いを強いることができました。最終的には興味深い内容のタイトル戦になり、マグサヨがやらなければいけないことをやって勝利を手にした試合という印象でした。

Amanda Westcott/SHOWTIME
Amanda Westcott/SHOWTIME

 私の採点でもマグサヨの勝利でした。(2点差でマグサヨの勝ちとした2人の)ジャッジの採点は妥当だったと思います。中盤ラウンドでのマグサヨはスローダウンし、ラッセルに左を当てるチャンスを与えていました。おかげで大差はつかず、見ているものにスリルを感じさせる試合になったのでしょう。

 ラッセルは戦前からケガをしていると述べていたので、試合途中から手負いで戦うことになったことは驚きではありませんでした。故障箇所は明かされておらず、4回途中にそれが右肩だったことに私たちも気づいたということです。

 リマッチか統一戦に期待

 ケガがなければラッセルにより優位な流れになっていたか?それは誰にもわからないですよ。“イエス”と言いたくなりますが、ボクシングはスタイル次第ですし、ラッセルが右肩を悪化させる前の序盤ラウンドもマグサヨの方が優勢でした。より興味深く、エキサイティングな戦いになった可能性は高いと思いますが、どちらかが勝っていたかはわかりません。

 2人がいずれリマッチを行えば、その答えが明らかになるのでしょう。両者のリマッチが実現したら、ラッセルが右ジャブをどんなふうに使うかが興味深いですね。今戦では5ラウンド以降、ラッセルはジャブをほとんど使えませんでした。再戦ではそのパンチが鍵になると思います。

 ラッセル以外では、マグサヨとWBA同級スーパー王者レオ・サンタクルス(メキシコ)の統一戦にも興味があります。マグサヨとサンタクルスが激突すれば、激しい打ち合いが展開されることでしょう。ここで新しいタレントが台頭したことで、フェザー級はより面白くなると思います。

 今回の試合では勝ちましたが、マグサヨはまだ“グリーン(未熟)”な部分も多い選手です。先ほども話した通り、適応能力が欠けており、世界レベルでの経験不足がその原因でしょう。ただ、それはつまり伸びしろが残っているということ。今後、マグサヨがどんな王者になっていくかを私も楽しみにしていますよ。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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