井上尚弥にKO負けのモロニー「私はスピードの方に驚いた」 試合後独占インタビュー
今回のジェーソン・モロニー(オーストラリア)とのインタビューは、モロニーがWBAスーパー、IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(大橋)に7回KOで敗れたタイトル戦の翌日(現地時間11月1日)、電話にて行われた。
注・写真は試合前のもの
問題になったのはパワーよりもスピード
ーー痛烈なKO負けから一夜明けましたが、現在の体調はいかがですか?
ジェーソン・モロニー(以下、JM) : 身体は大丈夫です。いろいろな箇所に痛みはありますが、それよりも試合に勝てなかったことの悔しさが大きいです。
ーー試合を今、どう振り返りますか?
JM : 本当に落胆しています。自分が望んでいたようなパフォーマンスはできず、良いパンチを浴びてしまいました。私はボクサーなので、まだ戦い続けたかったのですが、レフェリーはストップという決断を下さなければいけなかった。それがボクシングというもの。井上をリスペクトする以外にありません。井上は偉大な選手です。
ーー井上の強さは予想以上でしたか?
JM : 井上の強さは十分にわかっていました。階級最強の選手を相手に自分を試したくて試合を受けたのです。勝てる自信もありました。私はファイターですから、できることなら今日、もう一度チャンスが欲しいくらいです(笑)。それが私のスピリットであり、メンタリティ。ただ、井上の素晴らしさを否定するつもりはまったくありません。私がやりたかったことをやらせてくれませんでした。井上が距離をコントロールし、スピード、パワーも飛び抜けていました。素晴らしい試合をしたと思います。
ーーあなたがやりたかったこととは、具体的にどういうことだったのでしょう?
JM : 井上にペースを掴ませず、自分が主導権を握らなければいけないと考えていました。私の方が少し身長が高いので、アウトサイドでは有利だと思っていました。インファイトでもフィジカルの強さをいかし、ラフな戦いで苦しめられると考えていました。ただ、そうはならなかった。井上は距離を掴むのが上手く、ハンドスピードも速かったため、私がパンチを出すたびに打ち返されてしまいました。おかげで私の良さがまったく出せなかったのです。
ーー定評ある井上のパワーを実際に体験してみて、破壊力はいかがでした?
JM : パワーはありましたよ。ただ、私を驚かせたのはスピードの方でした。私がダメージを受けたパンチは、クレイジーなほどのパワーパンチというよりもスピードが重視されたものでした。最初にダウンした左フックも、最後の右もそうです。ほとんど見えないパンチで、そういうパンチは避けることができないものです。もちろんパワーは凄まじく、爆発的でしたが、KOにつながったのはハンドスピードだったと考えています。
すぐにまた世界戦線に戻ってくる
ーー序盤から常に形成不利の展開でしたが、あなたは最後まで勝とうとしているように見えました。それゆえにああいった激しいKOが生まれたのかもしれません。
JM : 私は何があろうと決して諦めません。最後まで勝てると信じて、戦い続けました。善戦を目指すのではなく、勝利だけを追い求めたのです。そのためには危険を冒すつもりでしたし、実際にそうした結果、KOされてしまいました。ただ、後悔はありません。
ーーKO直後はダメージが深そうにも見えましたが、何が起こったかは覚えていますか?
JM : はい、覚えていますよ。最後の一撃を浴びた後は少し混乱しましたが、
意識も記憶もはっきりしていました。病院に行って検査を受け、滞在したのは1時間ほど。頭部のCTスキャンも問題はなかったので、すぐに部屋に戻りました。
ーービッグファイトが終わったばかりですが、今後、どう過ごすつもりですか?
JM : これから2週間は、11月14日に世界タイトル戦に臨む弟のアンドリューをサポートします。そこでアンドリューが世界王者に返り咲いたら、一緒にオーストラリアに戻って祝い、故郷でクリスマスを過ごすつもりです。2021年は私にとってまた重要な年になるはずです。私はまだ世界チャンピオンになれると信じています。ここで一歩後退したわけですが、ハードに練習し、何勝か挙げて、もっと強くなってまた世界戦線に戻ってみせます。決して諦めるつもりはありません。井上のようなすごい選手と戦ったことで、今後、私が目指すべきところがまた示されたと感じています。
ーー最後になりますが、何か井上に伝えたいことはありますか?
JM : 井上のことは最大限にリスペクトしていますし、「おめでとう」と言いたいです。井上と同じリングで戦えたことは名誉でしたし、この機会に感謝しています。間違いなく名誉の殿堂入りも果たすでしょうし、パウンド・フォー・パウンド・ランキングに入るのも当然です。今後の成功も願っていますし、井上が私たちの世代では最高級の選手として記憶されることになると確信しています。