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「バスケ日本代表のインサイドで僕が存在感を示したい」 シェーファー・アヴィ幸樹(ジョージア工科大)

杉浦大介スポーツライター
Photo By Daisuke Sugiura

 シェーファー・アヴィ幸樹(ジョージア工科大学)

 1998年1月28日生、20歳

 身長203cm、ポジションはセンター。高校2年生でバスケを始め、その後に一気に階段を駆け上がったために“日本バスケットボール界のシンデレラボーイ”と呼ばれる。

 昨夏、U-19ワールドカップで過去最高位の10位に入った日本代表での活躍で名前を売ると、今年からNCAAディヴィジョン1のジョージア工科大に進学。クリス・ボッシュ、ステファン・マーブリーといったNBAプレイヤーを輩出した名門校ではウォークオン(奨学金なし)という厳しい条件で、今季は4試合で合計3分のプレイのみと出場機会にはまだ恵まれなかった。それでも練習では名門校の先輩プレイヤーに揉まれ、充実した日々を過ごしたようだ。

 3月6日、ブルックリンで行われたACCトーナメント1回戦でボストンカレッジに敗れ、ジョージア工科大の今季は終了。その試合後、シェーファーに今季の総括と日本代表への熱い思いを語ってもらった。

チームは低迷も、貴重な経験を得たシーズン

ーー今季は通算13勝19敗、ACCトーナメントでも初戦敗退とチームとしては残念なシーズンでした。

SA : かなり残念でしたね。大変なシーズンでした。主力選手のケガがあったり、コート内外で多くの問題がありました。もともとフレッシュマンが多いチームですし、おかげでなかなかバスケのみに集中することができなかった。周囲のことにかなり影響を受けたところがあり、結果としてシーズンを通して負けを増やしてしまいました。ノンカンファレンス・ゲームでは、力の劣るチームが相手でも集中できずに負けてしまったこともありました。今シーズンはいろいろと辛かったですが、気持ちを切り替えて次のシーズンに向かっていきたいです。

ーーそれでも1月13日までは10勝7敗だったのですが、シーズン中盤から一気に崩れた印象がありました。

SA : そうですね。ただ、ノンカンファレンスゲーム終了時点で6勝6敗に過ぎなかったことがウチとしてはすでにかなりのダメージでした。ACCのカンファレンスゲームに入って以降は、やはり強い相手との対戦では勝てなくなっていった。(2月11日に)ホセ(・アルバラード)がケガして以降はもう下り坂でしたね。そんな中でもシーズン最後に2連勝できたんですが、ACCトーナメントではまたキツい負けを味わうことになってしまいました。

ーー個人としてはディヴィジョン1での1年目に得たものは?

SA : 去年1年はプレップスクールでアメリカでやったんですけど、もうレベルが全然違いましたね。そのレベルを今年1年で知ることができた。実際にコートに立った時間は少ないので、他のチームの選手とは直接は対戦してないんですけど、それでも間近で見てますし、毎日、チームメイトたちとずっと練習してきました。ディヴィジョン1、それもACCのレベルを痛感できたというのは、これからに向けて凄く良かったと思います。 

ーー具体的なプレイの面でここが成長できたという部分は?

SA : フィニッシュですね。(ディヴィジョン1には)身体が大きい選手が多いし、ゴール周辺ではみんなアグレッシブに来ます。これまではコンタクトを受けながらでもフィニッシュできていたんですけど、今はもう本当にゴールにアタックしていくつもりでいかないと決められない。まだ課題ではありますけど、そういうところはかなり上達したかなと思います。 

ーー2月に話を聞いたときには、スキルは全般に向上させなければいけないという話でした。フィニッシュ以外の課題は?

SA : 自分は得点を取ったりとか、花形の選手ではない。もっとディフェンスのレベルを上げて、ガードにスイッチした時にも、ガードの選手をある程度は止められるようになりたいです。ビッグマンに関しても、スキル豊富なビッグマンとか、ガツガツくるフィジカルなビッグマンとか、このリーグには多彩なビッグマンがいます。その誰に対してもマッチアップできるように、ディフェンスのレベルを上げるというのがプレイタイムをもらう一番の近道かなと思ってます。 

ーーこのチームの来シーズンの目標は?

SA : もちろんNCAAトーナメント出場です。今年の目標も同じだったんですけど、今季は若いチームで、ケガなどもありました。来年以降もかなりポテンシャルはあるチームだと思っています。ACCトーナメントに勝つのも目標の1つ。ここ最近はNCAAトーナメントに進出できていないので、来年はなんとか出たいです。 

ーー個人としては?

SA : とにかくローテーション入りすることです。いまはまだ“眼中にない”みたいに思われている感じなので(笑)。ウォークオンで1年でやってきたんで、来年は練習中から存在感を発揮して、とにかく頑張ってトレーニングしていきたいです。ローテーションに食い込み、プレイタイムをもらえるように頑張ります。

今季の出場機会は多くはなかったが、チーム練習で貴重な経験を積んだ(杉浦大介)
今季の出場機会は多くはなかったが、チーム練習で貴重な経験を積んだ(杉浦大介)

苦しむ日本代表を助けたい

ーーところで日本代表のワールドカップ・アジア予選のゲームは見ていますか?

SA : ちょこちょこは見ています。ライブでは見てないですけど、ユーチューブで確認したりとか、あとはツイッターでも細かい情報が入ってくるので。

ーー4連敗の過程で、インサイドが弱いと指摘されていますね。

SA : はい、厳しい負けが続いてしまってますね。フィリピン相手でもリバウンドでかなりやられてました。日本はインサイドが弱いというのはわかっていたと思うので、とにかくなんとかしなければいけないですね。

ーー自分なら助けになれるという思いはありますか?

SA : はい。自分が入ったら、貢献の術は見つけられるかなと思っています。

ーー6月にはホームでのオーストラリア戦、7月にはアウェイで台湾戦という重要なゲームが待ち受けています。できれば出たいという気持ちでしょうか?

SA : みんな代表合宿でほぼ1年通じて一緒にやっているので、ケミストリー的には今の状態の方が良いのかなというのはあります。僕は去年、半月〜1ヶ月ほど合宿に参加させてもらっただけですからね。ただ、僕が入っても他の選手とのコミュニケーションがしっかりとれて、コート上でもうまく合わせられるようになったら、たぶん個人としてはかなりできるんじゃないかと。チームの輪に入れるのであれば、試合にも出たいですし、遠征にも参加できるように頑張りたいです。

ーー具体的に日本代表に何を供給できると思いますか?  

SA : インサイドの存在感ですね。これまで日本のビッグマンたちは、アジアの他のビッグマンの中では小さく見えてしまうことがあったと思います。身体が小さいというんじゃなくて、プレイが小さく見えてしまう。当たりがちょっと弱かったりというのがありましたが、僕は当たりの強さだったら負けません。そういう意味で、存在感を供給できるかなと思います。

ーー2月の時点では日本代表とのコンタクトは少なめだという話でしたが、今は?

SA : 一応、少しは話しているんですけど、まだカレッジのシーズン中だったので。シーズンが終わるまでは、こっちのコーチともまだ話していなかったですかね。夏のスケジュールはわかっていないですけど、おそらく日本代表の活動にかなり参加できると思います。

ーー今後の具体的な予定は

SA : シーズンが終わって1、2週間は休みがあって、その後はオフシーズンも普通にトレーニングがあるんですけど、チーム練習はありません。自主トレーニングとピックアップゲームとか、そんな感じです。そして5月初めに夏休みになるので、そこからは日本代表の活動に参加したいなと思っています。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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