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「I AM THE GREATEST」ラスベガスで催されたモハメド・アリ展示会を訪ねて

杉浦大介スポーツライター

 「ザ・グレーテスト」とは元世界ヘビー級王者モハメド・アリのこと。ボクシング史上最高級のチャンピオンであり、現役時代からベトナム戦争への徴兵拒否などリング外でも戦い続けた。引退後は文化人としても活動したアリは、米スポーツ界でも別格のスーパースターである。

 昨年6月に惜しまれつつこの世を去った「ザ・グレーテスト」の軌跡を辿り、記念の品を集めた展示会が3月31日〜9月30日までラスベガスのベラージオで催された。ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)対サウル・アルバレス(メキシコ)戦が行われた9月16日、筆者もこのエキジビジョンを訪ねた。

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 ベラージオのギャラリー入り口にはアリのグローブとトランクスが置かれていた

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 「小学生の頃、父親から誕生日にプレゼントにもらった自転車を宝物にしており、それに乗ってよく近所にポップコーンとアイスクリームをもらいに行っていた。ところが、ある日、誰かに自転車を盗まれ、警察に行った際に対応した警官がボクシングジムのトレーナーもしており、彼に犯人に鉄拳制裁を加えるという意味でボクシングを勧め、その警官のボクシングジムに入った。これが、モハメド・アリがボクシングを始めたきっかけになった」Wikipediaより

 ギャラリーにはアリが宝物したのと同じモデルの自転車が置かれていた(もちろん盗まれた現物ではない)。盗難の犯人は、自身が”ザ・グレーテスト”を生み出すきっかけになったことを後に知ったのだろうか

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 ”献身(Dedication”と題されたトレーニング風景の下に、アリの言葉が記されている。「トレーニングは大嫌いだった。しかし、”続けよう。今苦しんで、残りの人生を王者として生きるんだ”と自分に言い聞かせたんだ」

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 1960年ローマ五輪でカシアス・クレイ(イスラム教に改宗前の名前)は金メダル獲得。アリ伝説のスタートだった

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 「帰国後、オリンピックのインタビューにおけるアメリカの体制寄りの発言を批判され、金メダルを自ら川に投げ捨てる事件を起こす。当時のアメリカの体制とは、つまり白人側を意味したからである」Wikipediaより

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 今回のエキジビジョンの入場券は18ドル、学生、シニア、ネバダ州在住者は16ドル(12歳以下は無料)。スペース、展示品の数は多くはなかっただけに、やや割高。ショウの類は高価になりがちなラスベガス価格か

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1976年のジミー・ヤング(アメリカ)戦で使用されたリングシューズ

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現役時代、引退後を問わず、アリは数々の名言を残した

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引退後は文化人としても様々な形で活動した

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1996年のアトランタ五輪ではパーキンソン病に犯された震える手で聖火者を務め、世界の感動を呼んだ。そこでオハイオ川に捨てたとされるローマ五輪の金メダルも再授与されている(メダルは単にアリが紛失したという説も)

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「リスクを冒す勇気がないものは何事も成し遂げられない」

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「蝶のように舞い、蜂のように刺す」と刻まれたガウン

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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