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デラホーヤ以来、最も盛大なプロデヴュー戦? コンランが3回KO勝ち 6 days in MSG #5

杉浦大介スポーツライター
Photo : Ed Mulholland / TR

3月17日 ニューヨーク マディソンスクウェア・ガーデン・シアター

スーパーバンタム級6回戦(124パウンド契約ウェイト)

元アマ世界王者

マイケル・コンラン(アイルランド/25歳/1戦1勝(1KO))

TKO 3ラウンド59秒

ティム・イバラ(アメリカ/26歳/4勝(1KO)5敗)

無難なKOデヴュー

消極的だった相手を開始ゴング直後から攻め立てたコンランは、殴りつけるようなパンチを打ち込んでいく。相手がミックスアップに応じないと見ると、2ラウンドにはサウスポーにスイッチ。3ラウンドにロープ際の連打でイバラにダメージを与えると、レフェリーが少し早めのストップをかけた。

無事にデヴュー戦を飾ったコンランは、手数旺盛で、好戦的なファイターという印象。ちょっとワイルドなところをどう見るか。上下に打ち分けるうまさはあるだけに、この荒っぽさも魅力の1つとなり得るのだろう。

“正直、スーパースター候補とまでは見えなかった”という声もリングサイドから聴こえて来た。もっとも、このアマ世界王者の才能やプロでの将来性をジャッジするのはまだ早すぎる。とりあえず今日はKOデヴューを飾っただけで十分。アイリッシュの人気者の真価は、これからゆっくりと披露されていくはずである。

トップランクが強力にバックアップ

この日の試合はアイルランド人の祝祭であるセント・パトリック・デイに組まれ、MSGシアターのメインイベントという大舞台が用意された。会場は5102人の観衆で超満員。これほど豪華なセットアップでのデヴュー戦は、1992年のオスカー・デラホーヤ以来と囁かれた。

コンランのプロモーターは百戦錬磨のトップランク。この選手にこれほど大きな期待がかけられているのは、実力への評価だけでなく、スター性、そしてアイリッシュファイターのもともとの商品価値の高さゆえだろう。

アイルランドからの移民が多いニューヨークのマーケットにおいて、プエルトリカンと並び、実力のあるアイリッシュファイターの存在価値は大きい。今戦も地元のアイリッシュコミュニティでは話題になった。そして、母国からも約2000人のファンが海を渡って観戦に訪れたという。

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次戦は5月12日か19日に、同じくアイルランド系移民が数多く住むボストンで予定されているという。その後には母国での試合も挟まれる。そして今後、セント・パトリック・デイのニューヨーク興行の常連となっていきそうだ。

トップランクのマーケティング・マシーンの機能はすでにお墨付き。元トップアマをスターに育てる上手さでは右に出るものはいない。もちろんこのまま好内容で勝ち続けるのが必須条件だが、順調に成長すれば、コンランはアメリカでも屈指の商品価値を誇る選手に成長していく可能性がある。

マクレガーが話題を呼ぶ

この日はコンランと個人的に仲の良いMMAスター、コナー・マクレガーがコンランのリングウォークに付き添うと発表されたことでも話題になった。マクレガーは実際にアイルランド国旗を持ってコンラン陣営とともにリングイン。フロイド・メイウェザー(アメリカ)との対戦が話題になっていることもあり、この時点でリングサイドに陣取ったメディアたちも色めき立った。

「俺がボクシング界を引き継ぐのを見ていやがれ。ボクシングの世界にいる人間は誰もわかっちゃいない。世界中を驚かせてやるよ。俺がフロイドをストップして、おまえらが俺について言ったことをすべて飲み込ませてやるんだ」

コンランのKO勝利後、記者席の前に現れたマクレガーは、ESPN.comのダン・レイフィール記者に向かってそう捲したてる。ひとしきり演説すると、周囲を取り囲んだ記者たちの質問に答えることなく足早に会場を去っていった。

ボクシング・ライセンス取得、ネバダ州コミッションも試合認可を明言、メイウェザー自身も復帰を表明、UFCのデイナ・ホワイトも試合挙行を予言・・・・・・etc。一時は誰も真剣に考えなかったメイウェザー対マクレガー戦だが、障壁は少しずつ取り払われ、今では実現すると考える関係者も増えてきている。

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5階級制覇王者と、ボクシングでは何の実績もない選手のボクシングルールでの対戦。まともなファイトにはならないと見るメディアがほとんどではある。ここでのマクレガーの大言壮語は、ボクサーとしての自身にリスペクトを払わないボクシング記者たちへの怒りを発散させたものだったのだろう。

ともあれ、その場にいるだけで騒ぎになるマクレガーのスター性は本物。実現の可能性、試合内容予想などの議論はさておき、本当にメイウェザー戦がまとまれば、開始前の舌戦は歴史的なものになるに違いない。端的に言って、だからこそこの試合を実現させようという動きが出ているのだろう。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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