Yahoo!ニュース

「五輪でメダルを獲るために自分のレベルを上げたい」 藤本那菜(NWHL NYリベターズ)インタヴュー

杉浦大介スポーツライター
画像

Photo By Hiroaki Yamaguchi

藤本那菜 北海道札幌市出身。6歳よりアイスホッケーを始め、高校生時の2007年に日本代表選出。2014年のソチ五輪では全試合に出場した。2015年3月の世界選手権ではセーブ率93.75%を記録し、日本人選手として世界選手権トップディヴィジョンで史上初の個人賞となるベストGKを受賞。2015年7月、新たに発足した北米プロリーグNWHLのトライアウトに合格し、今季はニューヨーク・リベターズの正GKを務める。

プレーオフに照準を合わせて

ーー1月17日のバッファロー戦は欠場でしたが、単に休養だったんでしょうか?

NF:来週にオールスターゲームがあるので、その後のプレーオフも見越して、ここで1戦の休みをという話でした。先週は2戦続けて試合があったのですが、その時のクラッシュで脳震盪ぽい症状が出ていたんです。今週は練習も軽めだったんですよ。調整を兼ねて(ここで休養)という話はコーチ陣から聴いていました。

ーーそう、ニューヨーク・タイムズ紙の記者からも脳震盪の心配を聞かされていました。激しい競技ですが、以降は問題ない?

NF:はい、今は問題ないです。大丈夫です。

ーーNWHL挑戦の1年目を振り返って頂きたいんですが、チーム成績が現時点で3勝8敗(4チーム中4位)と振るわないのが残念ですね。

NF:開幕からなかなか波に乗れていないというか、厳しい状況が続いています。チームで優勝したいというのはあります。(ただ、)リーグ戦はプレーオフの順位を決めるためのもの。プレーオフで優勝が決まるので、そこに照準を合わせてという話をキーパーコーチともしています。

ーーそれではプレーオフで勝てば報われますね。

NF:やはり私は常に勝負だとは思っているので、どの試合も勝てるようにと考えているんですけど。私自身も成長していかないと厳しいですからね。どんな試合でもキーパーがゼロに抑えればチームは負けないという想いで守っているので、それに近づけるように守れたらいいなと思います。

アメリカでも意思疎通が大事

ーー1月24日にバッファローで開催されるオールスターに選出されたんですよね。

NF:はい、出場は昨年の12月時点で決まって、来週に行われます。

ーー10試合に出場してセーブ率91%はリーグ3位、オールスター選出と個人的な結果は出ています。ここまでのプレーはある程度は納得できていますか? 

NF:納得してしまうとそれ以上にいけないので。キーパーというポジション柄もあると思うんですけど、反省して、課題をしっかりと客観的に見て、修正してという繰り返しかなと思っています。周りから評価してもらうことは非常に嬉しいんですけど、そこで満足したら次に繋がっていかないので。常に頭で考えながらプレーしていきたいです。

ーーアメリカでのプレーはだいたい来る前に想定していた通り?それともかなり違ったものになっているでしょうか?

NF:来た当初はこっちのリンクサイズ、ゴール・クリーズであるとかになかなか慣れなくて、ちょっと苦戦しました。リンクが日本と比べて小さいんですよ。だからポジションの取り方とかが変わってくる。ただ、こっちに来て3ヶ月くらい経ち、慣れてきたかなというのはあります。あとはチームメートともっとコミュニケーションが取れれば良いかなと思っています。

ーーやはりチームメートとのコミュニケーションは大事?

NF:氷上でも、陸の上でも、積極的な話し合い、会話、意思疎通が大事ですよね。ホッケーはチーム競技。一人で全部抑えるというのはなかなか難しいシチュエーションがあったりするので、そこはケアしてもらったり。それでいて守るところはしっかり守り、安定感があってチーム、選手からも信頼されるキーパーというのを目指しています。いろいろな意味で自分の理想像に近づいていきたいですね。

五輪のメダルがどうしても欲しい

ーーこれまでと違う環境でやろうと思ったのは、やはり5戦全敗に終わった2014年のソチ五輪で悔しい想いをして、2018年の平昌五輪までに日本代表の守護神として大きく成長したいという目標があったからですか?

NF:海外でプレーしたいと思い始めたのはソチ五輪後でした。それから1年後の世界選手権では、(ベストGKという)賞も頂いて、評価もして頂いて、今シーズンはちょうど良いタイミングだったのかなと。次のオリンピックを見据えた時に、日本国内だけじゃ自分が成長していくのに足りないという風に考えたんです。もっとスキルを磨かないとメダル争いはできないんじゃないかなと思いました。

ーーやはり五輪への想いは強い?

NF:ソチ五輪を経験して、決勝戦を見て、どうしてもメダルが欲しいなと感じたんです。そこを目指すからには、自分もレベルアップしないと到達できない。しっかり安定したキーパーがいればチームは負けないし、良い試合ができると常に思っています。そういうものを日本代表に持ち帰れたら、という想いで今回は挑戦しています。 

ーー国際舞台はかなり経験されていますが、英会話はどうですか? 

NF:日本語みたいにすらすら喋れないし、詳細も伝えられないですけど、チームメートとか周りの人たちが凄くサポートしてくれるので、特に問題はないです。サポートしてもらえているおかげです。

ーーじゃあニューヨーク生活も楽しめている?

NF:そうですね。チームメートと一緒に家をシェアして住んでいるんですけど、みんな本当に親切。このチームに入って良かったなと思いますし、あとは結果が付いて来ればもっと最高ですね(笑)

ーーそれではプレーオフでの活躍を期待しています。

NF:残りの試合もなんとか勝っていければと思っているんですけど、やっぱりプレーオフに向けて、優勝を目指してしっかりとチームを作っていきたいです。プレーオフの後には(日本代表に戻り)、世界選手権もあります。平昌五輪に繋がりますし、その次のオリンピックにもポイントが繋がります。だから、今後に向けて私自身もしっかりとパフォーマンスを上げていければと思っています。

画像

Photo By Hiroaki Yamaguchi

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

杉浦大介の最近の記事