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台風5号は異例の自動車並みの速度で急速接近へ、その理由は?

杉江勇次気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
台風5号の雲(ウェザーマップ)

台風5号は奄美や屋久島などに急速接近へ

台風5号の予報円(ウェザーマップ)
台風5号の予報円(ウェザーマップ)

最新の台風情報(気象庁発表)

きのう28日(木)午後9時、日本の南海上で台風5号が発生しました。台風4号が今月5日に九州へ上陸して温帯低気圧に変わった時以来の発生ですから、約3週間ぶりの台風発生です。

今年はこれまで台風の発生数が少なく、台風5号の発生した月日としては、1951年の統計開始以来、72年間の内63番目となります。(関連記事

台風5号は、きょう29日(金)午前3時現在、日本の南海上を北北西に進んでいますが、注目すべきはその速度です。時速45キロという自動車並みの速度で北上しており、このあとさらにスピードアップして、きょう29日(金)午後3時には時速55キロで、もう奄美や屋久島などに急速接近する見込みです。

通常、日本の南海上を北西進する台風は、偏西風に乗って東寄りに急加速する場合とは異なり、太平洋高気圧の縁辺流に流されることが多いため、時速はせいぜい10キロから30キロ程度のことが多いものです。

ところが、今回の台風5号は時速55キロという日本の南を北上する台風としては異例とも言える速い速度で北上する予想なのですが、これはどうしてでしょう?実はこの台風5号の南にあるさらに大きな循環が影響しているようなのです。

より大きな循環に乗りスピードアップか

太平洋高気圧や天気図(ウェザーマップ)
太平洋高気圧や天気図(ウェザーマップ)

左はきょう29日(金)朝の上空6000メートル付近に張り出す太平洋高気圧の予想で、本州付近に張り出しているため、これを避けるように、この縁辺を流されながら北西方向へ進みます。

この太平洋高気圧の縁辺流だけなら、せいぜい時速は自転車並みの20キロ程度だと思われますが、ポイントは右の実況天気図内にある低圧部の存在です。低圧部とは反時計回りの循環で、その中心がハッキリとしない熱帯擾乱のことですが、今回はこの低圧部の北東側に発生した台風5号よりも、この低圧部の循環の方がひと回り大きいため、この循環の流れに流されるように、より速度を上げながら北西進するものと推察されます。

通常では考えられない時速50キロ以上の速度で急速北上し、急速接近しますので、接近が予想される奄美や九州南部では天候の急激な悪化に要注意です。

また台風5号を流す役割を果たしているだろう沖縄の南の低圧部は、今後中心付近の位置がハッキリとし、熱帯低気圧に変わる見通しですから、台風5号と合わせて、こちらの動きにも注意が必要です。

台風5号が過ぎても長丁場の大雨に十分な警戒を

雨や風の予想(ウェザーマップ)
雨や風の予想(ウェザーマップ)

台風5号に伴う、最も風や雨の強い領域は、急速北上し、今夜にはもう奄美や屋久島などに到達、通過する見込みで、あす30日(土)午前9時には、早くも東シナ海へ抜けている予想です。

その後、台風5号自体は北上を続け、九州からは遠ざかっていきますが、油断ならないのは、西日本の太平洋側に吹き付ける湿った南東風の存在です。この南東風は台風5号が通り過ぎてもしばらく吹き続け、宮崎や高知などを中心に、あさって31日(日)頃まで長丁場の大雨が続くおそれがあります。

あす30日(土)午前6時までに予想される雨の量は、いずれも多い所で、九州南部200ミリ、奄美150ミリですが、さらにあさって31日(日)午前6時までの24時間に、九州南部や四国で100ミリから200ミリの雨量が予想されており、その後も雨が降り続くおそれがあります。(気象庁の台風情報

長丁場の大雨の他、奄美地方を中心に、強風や高波にも、十分な注意、警戒が必要です。

参考:デジタル台風(国立情報学研究所)

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

人の生活と気象情報というのは切っても切れない関係にあると思います。特に近年は突発的な大雨が増えるなど、気象情報の重要性が更に増してきているのではないでしょうか? 私は1995年に気象予報士を取得しましたが、その後培った経験や知識を交えながら、よりためになる気象情報を発信していきたいと思います。災害につながるような荒天情報はもちろん、桜や紅葉など、レジャーに関わる情報もお伝えしたいと思っています。

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