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#こども基本法、どのような法律に?こどもまんなか、子供も大人も幸せな日本のための理念法

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員
(写真:アフロ)

こども基本法は、なぜいま必要なのでしょうか?

そしてどのような法律になるのでしょうか?

こども緊急事態宣言とも呼ばれる、深刻な状況の子供たちが日々増加する日本において、子供に関わる大人たちの、こども基本法が必要だという思いが、こども基本法を国会で成立させようという動きを引き起こしてきました。

子供たちが幸せに生きていくための法律

子供の目線に大人も立ち、ともに考え進むための法律

これによって子供も大人も幸せな日本にするための法律

私自身はこども基本法をそのような法律だととらえています。

1.日本国憲法に定める基本的人権の保障、児童の権利条約(子どもの権利条約)がどのように盛り込まれるか?

―子供自身が基本的人権を保障されるひとりの人間であること

―生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利

こども基本法がどのような法律になるべきか、必須といえる2つの規定があります。

1つめの規定は、日本国憲法第11条に定める基本的人権の保障が、子供にも適用されるという条文になります。

こども基本法には、未成年であっても、子供にも人権はある、という条文が必要です。

当たり前のことをなぜわざわざとお考えの読者のみなさんもおられるでしょう。

なぜ子供の基本的人権を、こども基本法に書かなくてはならないのか、その理由である日本の子どもの現場の深刻な状況については後で述べます。

第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

2つめの規定は、わが国が1994年に批准した児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)のもっとも重要な規定とされる4つの一般原則を条文にすることです。

子どもの権利条約の4つの一般原則とは次の規定になります。

・生命、生存及び発達に対する権利(命を守られ成長できること)

すべての子どもの命が守られ、もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療、教育、生活への支援などを受けることが保障されます。

・子どもの最善の利益(子どもにとって最もよいこと)

子どもに関することが決められ、行われる時は、「その子どもにとって最もよいことは何か」を第一に考えます。

・子どもの意見の尊重(意見を表明し参加できること)

子どもは自分に関係のある事柄について自由に意見を表すことができ、おとなはその意見を子どもの発達に応じて十分に考慮します。

・差別の禁止(差別のないこと)

すべての子どもは、子ども自身や親の人種や国籍、性、意見、障がい、経済状況などどんな理由でも差別されず、条約の定めるすべての権利が保障されます。

※日本ユニセフ協会HP「子どもの権利条約」より

わかりやすく言うと「生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利」の4つは特に子どもにとって大切な権利なので、こども基本法に規定されるべきだということです。

子どもの権利条約では、そのほかに親を含む大人の暴力から守られる権利、教育を受ける権利などたくさんの規定があります。

関心のある方はこちらからご覧ください(日本ユニセフ協会「子どもの権利条約全文」)。

こども基本法に書かれていない権利だから大事ではない、のではありません。

子供を基本的人権を持つひとりの人間であると位置づけたときに、子供が尊重されるべき権利は法律に書かれていなくても大切な権利だということです。

こうした当たり前のことが、国内法に規定されてこそ、子供間の人権侵害行為(いじめ)の改善や、不登校の子どもたちの育ち学ぶ権利を支えたり、親ではない大人からの子供への暴力・性的虐待・暴言・ネグレクトから、子供たちをしっかりと守るための重要な理念が我が国に今まで以上にしっかり位置づくのです。

たとえば親を含む大人からの暴力から守られる権利、性的搾取から守られる権利などは、こども基本法に書かれなくても、重要な規定であり、児童虐待防止法や児童買春・児童ポルノ禁止法などの国内法もありますが、国内法にもなお進化の余地があります。

こども基本法が制定されたのちには、とくに子供の「守られる権利」を実現するための国内法のいっそうの整備も急ぎ進むことを期待します。

2.なぜこども基本法が必要なのか?

―当たり前のことを法律にしなければならない「こども緊急事態」の日本

―大人ファースト、加害者天国の日本から、子供を守り切るこどもまんなかの日本国へ

イー・ウーマンというサイトで「こども基本法の成立、必要ですか?」というテーマについて、高祖常子さん(NPO法人児童虐待 防止全国ネットワーク理事)が、ユーザーのみなさんとの検討をしてくださいました。

なぜ当たり前のことを法律にしなければならないのか、次の意見は、普段から子供を大切にしている日本の大人の多くが、同意されるのではないでしょうか。

必要と思うのですが、昭和人間の自分は「なんで法律に頼らなければいけないのか?親、祖父母、親戚、学校の先生が色々守ってきた事が今は出来ていないのだろうか?省、庁、一つのところで何故解決してあげられないのだろう」と思い、こんな時代に反発の意味でNOにしました。現実にはそれで済んでいないので、法律の成立は必要だと思います。

「なんで法律に頼らなければならないのか」、私も共感します。

しかし「こども緊急事態」とでもいうべき深刻な状況が日本にはあるのです。

過去最悪の不登校・子供若者の自殺・虐待件数

学校・教育委員会ぐるみでいじめ自殺を隠蔽してきた教育委員会

幼児にとっては危険も多いマスク着用を小児科医などの専門家の意見も聞かず強要しようとする政治家

勇気を出して親の虐待を相談したアンケートを親に見せ、子供の命を奪った教育委員会

性犯罪者が子供に関わる現場で堂々と働き、多くの性犯罪被害者を産む日本

大人ファースト、犯罪者天国の日本という厳しい実態、そしてそこで傷ついた子供若者に関わってきた支援者たちからも、こども基本法を切望する声があがってきた深刻な状況があるのです。

私自身も教育政策の研究者として、子供を傷つけながらも自分を守ることだけに一生懸命な、ひどい大人たちにたくさんあってきました。

子供たちが安全安心に、そして幸せに育つこどもまんなかの国になるためには、子供の人権・権利を国内法に位置づけ、子供に関わるすべての大人たちの「共通の理念」「共通ルール」にすることが必須である。

私自身がこども基本法が必要だという理由はここにあります。

もちろん多くの大人が子供たちに優しい国でもあります。

しかし、子供が安全安心に「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」は実現されているでしょうか?

このような理不尽な状況を改善したいときに子ども自身の意見や声を聞く「参画する権利」を大人たちは大切にしているでしょうか?

法律とは、国民に共通のルールです。

こども基本法がこの国に実現すれば、子供に関するあらゆる場面で、子供自身の生命・人権と尊厳を大切にすることが、次第に当たり前のことになっていくのです。

3.子供たちが自分自身を大切にするためのこども基本法

―子供も大人も幸せな日本にするための理念法

―あらためて大人たちが子供を大切にする「共通理念」に

第1弾記事(こども家庭庁設置法がすごかった!でもやはり #こども基本法 が必要な2つの理由,2022年3月1日配信)の最後に私はこのように書きました。

こども基本法が必要な理由は2つです。

1.こども政策に横串を通すために全関係者が共有する「共通理念」が国内法として必要

2.こども家庭庁設置法だけでは、「共通理念」は明記しきれない

このような状況の中で、こども家庭庁と同時に、こども基本法の成立が重要であり、自民党公明党も議論を進めているのです。

実は、これも大人ファーストの論理にすぎません。

こども基本法は何よりも子供自身にとって、大切な法律なのです。

私自身も、子どもの権利を知る大人として、我が子をひとりの人間として尊重し、守り、育て、子供自身の意見・声(様子も含めて)をなるべく大切にしながら、関わってきました(百点満点の育児ではありませんが)。

そのようにして育った我が家の子供たちは、自分自身を大切にし、友達のことも大切にできる子供たちでもあります。

もちろん友達と喧嘩をしたり、ときどき距離を置いたりすることもあります。

しかし自分や関わる人達を大切にできる子供たちであることには間違いありません。

友達や学校の先生方、大人たちも、子供たちを大切にしてくれる中で、伸び伸びと我が家の子供たちは育っています。

それは当たり前ですが、幸せなことです。

こども基本法は、その当たり前をすべての子供たちに実現するための法律でもあるのです。

子供たちに関わる大人たちの「共通理念」「共通ルール」にすることは、子供たちの安全安心で幸せな毎日にとっての基本です。

こども基本法の意義は、子供も大人も幸せな日本にするための理念法という点にもある、私自身はそう考えています。

こども基本法とは、子供たちが自分自身を大切にできるための法律でもあるのです。

そして日本の大人たちが子供を大切にするための法律でもあります

イ―・ウーマン「こども基本法の成立、必要ですか?」において、こども基本法について次のようなことを指摘してくださった方がいました。

この基本法が(虐待の)当事者の子どもに「あなたのせいじゃないよ、少しも悪くない」と言って抱きしめてあげられる他者が増える一助となってほしい。

こども基本法を契機として、あらためて子供たちを大切にする大人が増えてほしい、これも私の願いです。

あなたはつらい目にあった子供たちを抱きしめてあげられる大人ですか?

子供たちを大切にしていますか?

自分を大切にしていますか?

子供の権利を法に位置づけ、子供も大人もそれを共有し実現していくこと、それは子供も大人もお互いを大切にし、幸せな日本になるための大切な一歩なのです。

こども基本法の制定を願っています。

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

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