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「死に票」などない!子育て世代・若者こそ投票に行こう #衆議院選2021 #なくそう子育て罰

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員
政府広報より、若い世代の投票率は低い

若い世代(20代30代)の投票率が1%下がると、年間7万8000円損をする、そんな衝撃的な試算が出されました。

※ハフポスト「若い世代の投票率が1%下がると、年間7万8000円損をする?私たちが選挙に行くべき理由を考えてみた。」(2021年10月19日)

逆にこの世代が投票に行けば、若者や子育てに有利な政策につながります。

若者の投票率の低下には、このような思い込みが作用していると考えられます。

・落選する候補者に投票しても意味がない。

・落選した候補者への投票は「死に票」になると学校で教わっている。

これらは有権者のビッグデータ解析があたりまえのこととなっている、現代日本の投票行動の中では、当てはまらなくなっています。

私は教育政策の研究者ですが、社会科学の重要分野である政治学での投票行動の計量分析の発展には目を見張るものがあります。

「死に票」概念は時代遅れの思い込みといってもいいでしょう。

わかりやすく言えば、投票された票に「死に票」などないのです。

ほんとうの「死に票」は投票にいかなかった人の票です。

1.「死に票」などない

ビッグデータ解析があたり前の現代社会

ビッグデータ解析が当たり前の現代社会では落選候補への投票も、意味があるデータとして分析され、政党・政治家の行動にインパクトを与えることができるのです。

主要政党は選挙の投票行動の分析結果をコンサルタントから入手します。

20代30代の投票率が上がり、投票行動が、子ども若者にやさしい候補者に投票する方向に変化していることが把握されれば、若い世代の票を集めるために、政党や政治家は若者や子育てに有利な公約政策を打ち出すことになるのです。

たとえばYahoo!も大阪都構想の投票を詳細に分析しており、世代別の投票行動が分析されています。

※Yahoo!・大阪都構想投票2をビッグデータで振り返る~なにわの地域分断なぜ~

Yahoo!大阪構想投票2をビッグデータで振り返るより
Yahoo!大阪構想投票2をビッグデータで振り返るより

もちろんここでのビッグデータはどの個人のデータかはわからないプライバシーが守られる仕組みになっています。

2.得票最大化行動という政治家の本能

政治家は選挙のために活動している!?

20代30代が投票に行けば若者が得をする、そんなうまい話しがあるものか、と思う方もいるでしょう。

しかし、政党や政治家は、選挙のために一票でも多く得るために活動しているのです。

そうしなければ、選挙で落選し、失職(失業)するので、必死です。

政治学の言葉で「得票最大化行動」といいます。

アンソニー・ダウンズというアメリカの政治学者が理論にしたので、ダウンズ・モデルと呼ばれています。

経済学者の A.ダウンズの唱えた投票・政治モデル。このモデルは,経済合理性を備えた投票者と候補者 (政党) から成る。候補者は政治的支持の最大化,つまり得票最大化を目指し,有権者のほうは,候補者 (政党) 間の政策によって生じる効用の差を見て,投票を行なう。効用の差がないときには棄権するが,逆に最も高い効用を与える政党に投票するというモデル。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「ダウンズ・モデル」の解説

とくにいままで投票率が低かった若い世代の投票率があがることは、政治家にとって脅威です。

高齢者の票で当選していた自分が、若い世代に人気のあるライバル候補に負けてしまうかもしれないのですから。

つまり若い世代の投票率があがれば、政党・政治家は次の選挙に20代30代の票を得るための公約や政策をさせていく強い動機を持つのです。

若者にとっては高校大学の入学金授業料が安くなったり、ブラック校則がなくなったりする公約・政策が充実していくでしょう。

子育て世代にとっては、出産の無償化、児童手当の増額、0-2歳保育の充実、教育費の軽減など、いままで自民党が塩対応してきた政策が充実していく流れができるのです。

投票に行きたくなってきませんか?

3.誰に投票するかは「自分の好み」できめていい

「わたし」にとって大切なことのために投票することは、政治的に正しいこと

まず投票所での投票の仕方がわからない方はこちらをご覧ください。

郵送の入場券がどこかに行っても、身分証があれば大丈夫です。

高校生大学生なら生徒手帳や学生証でも大丈夫ですよ。

※NHK・投票のキホン(2021年10月12日)

さて誰に投票するか、どこに投票するか、決まっていないので投票しづらいという方も多いと思います。

私も子育て世代向けの、政党公約比較、推し候補者を記事にしています。

※末冨芳「#なくそう子育て罰 立民・国民・共産・公明は公約充実、 スカスカの自民 #衆院選2021政策比較」(Yahoo!記事・2021年10月18日)

※末冨芳「#なくそう子育て罰 #親子にやさしい推し候補者 超党派リスト公開! 子育て罰候補者は誰だ? #衆院選」(Yahoo!記事・2021年10月29日)

また大学生は「ただちに学費値下げに踏み出すことを政策として掲げ」、具体策も回答した候補者のリストを公開しています。

※FREE高等教育無償化プロジェクト・候補者検索サイト現在のFREEマーク候補者は 134名 

Yahoo!もみなさんがアンケートに回答すれば、相性の良い政党を示してくれるサイトを開設していますし、NHKや日本テレビも候補者のアンケートを公開するなど、役立つ情報はたくさんあります。

※Yahoo・政党との相性診断

※NHK・衆院選2021・候補者アンケート

※日本テレビ・zero選挙・2021衆院選・候補者アンケート

簡単にいえば、誰に投票するかは「自分の好み」できめていい、というのが私の意見です。

「わたし」にとって大切なことのために投票することは、政治的に正しいことなのです。

個人的なことは、政治的なこと、という有名な言葉があります。

1960年代アメリカの若者や女性の政治運動から生まれたものですが、若者・女性自身の問題や課題は、個人で解決できず、政治で解決すべき課題として、政治家につきつけ、アメリカの民主主義を変化させた言葉でもあります。

あなた自身が良くしてほしいこと、困っていることに、具体的な政策を示している政党・政治家に一票を投じれば、それが同じような考えを持つ他の人のためにもなるのです。

自分のために投票することが、他人のためにもなる、投票とはそうした性質を持つという意味で、面白い行為でもあるのです。

さあ、あなた自身のために、誰かのために、投票に行きましょう♪

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

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