少子化対策?菅総理「やった感」の#子ども庁ではなく子ども若者への投資が先です#子育て罰をなくそう

「子ども庁」創設へ自民初会合 13日にも 成長阻む人口減に目配り(日経新聞・4月10日)という報道が流れました。

子ども庁は、少子化対策や人口減少対策のためという目的が報道されています。

研究者として違和感があり、菅総理や自民党の議論が的外れなものにならないか心配しています。

今日から開始する自民党の議論を観察する際に、読者のみなさんの手がかりにするために記事を書きました。

1.少子化主要因は日本の女性の非婚率上昇と女性・子育て支援政策不足

子どもを産み育てたくない「子育て罰」大国を変えられるか?

子ども若者への大胆な投資こそ、少子化対策

複数の先行研究が明らかにしてきた通り、少子化の原因はとくに女性の非婚率の上昇、そして既婚女性の労働環境、家事負担や家計負担が厳しすぎ子ども数が増えないことにあります。

「子育て罰」とは子どもや子育てに厳しい政治や社会が、子どもや親、若者、女性の結婚や出産、恋愛すら制限してしまう冷たいこの国の問題をあきらかにするための言葉です。

子どもを産み育てたくない「子育て罰」大国を変えるために、カネをともなわない子ども庁だけではなんの問題の解決にもなりません。

※参考記事:末冨芳「こども庁は財源論と子ども基本法とセットで本気の公約!#子育て罰をなくそう、#児童手当削減やめよう」(4月2日Yahoo!個人記事)

たとえばシカゴ大学の山口一男教授は、2004年の論文で次のように指摘しています。

わが国で少子化を促進してきた主な原因については女性の非婚化と晩婚化であるというのが人口学者の結論である。

非婚化・晩婚化は急激な少子化を経験してきた韓国や南欧諸国にも当てはまる。しかし一方日本を含めてこれらの国々は米国や他の西欧諸国に比べ家庭での妻の家事育児の負担度が高く、「家族に優しい」職場環境も比較的整わず、出産による離職後の再就職にハンディの大きい国々でもある。少子化はこういった既婚女性を取り巻く社会環境にも大きく影響される。

山口一男,2004,「少子化の決定要因と対策について:夫の役割、職場の役割、政府の役割、社会の役割」,RIETI Discussion Paper Series 04-J-045

 山口教授は、少子化対策として、結婚対策だけではなく、結婚後にカップルが子どもを産み育てるための支援政策を重視されています。以下の指摘も重要です。

「育児の機会コストの高さがまず問題だ」

「やはりワークライフバランスや育児支援が最重要だ」

山口一男,2014,「わが国の少子化対策は何を重視すべきか」

女性が子どもを産みたくない、産んでも子どもにもママパパにも優しくない「子育て罰」国家である日本です。

山口教授の指摘にあるように、子育て・教育費支援の拡充、男女ともに若者や子育て世代のワークライフバランスの早急な改善が重要になります。

具体的には以下のような政策に対する政府投資が必要で、ただちに子ども庁のような組織が必要だとは考えられないのです。

児童手当の増額

若者や女性の低賃金・長時間労働問題の早急な解決

出産及び妊婦検診の完全無償化

児童手当増額と所得制限の撤回、教育の無償化の所得制限撤廃等

2.子ども庁・最悪のシナリオ

カネとヒトを増やさない自民党ファーストの組織づくりで終わらないか?

内閣府・子ども・子育て本部に参事官2名を文科厚労から吸い上げて終わりでは?

そもそも膨れ上がった内閣府に子ども庁はふさわしいのか?

私自身が、菅総理と自民党案の子ども庁に対し警戒感を隠さないのは、菅総理に高所得層の児童手当を廃止しようとしているという「子育て罰」厳罰化のマイナスの実績があるからです。

せっかく、自民党の若手・中堅議員が財源8兆円増額、子どもを性暴力や虐待から守ろうとする、子どもファーストの素晴らしい提言をとりまとめたとしても、それがどの程度実現されるのか、心配しているのです。

子ども庁の最悪のシナリオは、内閣府の組織改編で終わり、ヒトもカネも増えないということです。

幼保一元化ならいまの子ども・子育て本部に、参事官(幼稚園担当、文科省より人員吸い上げ)と参事官(保育園担当、厚労省より人員吸い上げ)というイージーな改革手法で「やった感」は出しやすい政策なのです。

下の図に、イージーかつカネもヒトも増やさない子ども庁イメージを示しておきました。

筆者作成
筆者作成

官僚も増えなければ、政策のフロントラインにいる参事官1名ずつを減らされる文科省と厚生労働省では今以上の人手不足が起き、子どもに関わる法案や政策などについて、ミスが多発することも懸念されます。

また、内閣府と文科省がそれぞれ子ども庁の組織案を示したという報道も行われましたが、すでに様々な業務で膨れ上がり、なんとか業務を減らせないかと苦悩する内閣府の実態があります

ご参考までに内閣府の組織図を示しましたが、子ども分野だけで子どもの貧困対策、子供・若者育成支援推進大綱、そして子ども・子育て本部等の業務を、限られた数の官僚が、とても忙しく切り盛りしています。

内閣府HPより転載
内閣府HPより転載

北方領土、地方創生、自衛隊PKOなど、失敗の許されない国内外の重要政策や、学術・原子力政策などの重要政策も内閣府の所管であり、すでに業務はふくれあがっているのです。

この状態の内閣府に子ども庁を設置しても、本気で出生率を回復させる少子化対策や、子どもの命や権利を守る専門性の高い業務が行えるかと言われると、内閣府の状況を知る政府委員のひとりとしては疑問です。

3.子ども庁はそもそも必要か?

子どもの命と権利を守る子ども基本法成立が優先

子どもを守る機関として法務省への設置案も提案します!

そもそも子ども庁は必要なのでしょうか?

選挙対策のためだけならむしろ有害です。

ヒトとカネを増やさない口先だけの公約なら、失望する有権者も多いのではないでしょうか?

私自身は、子ども庁は、子どもの命と権利と尊厳を守る組織としてなら、必要だと考えています。

この場合、まずは、子どもの命と権利と尊厳を我が国の法として規定し、政府の責務を定めた子ども基本法の制定が優先されます。

そして子ども庁の業務は、自民党若手・中堅議員の提言通り、以下のようなものになります。

子ども自身の権利を擁護する子どもコミッショナーや子どもオンブズパーソンの配置

子どもからの性暴力や虐待の相談と改善支援

子どもにかかわる有償無償の仕事をする大人に性犯罪歴がないか証明する日本版DBSの運用など

この場合、子どもの権利擁護に関する職務が多くなるので、専門性の高い法務省に子ども庁を設置することも一案でしょう。

菅総理や自民党が、本気で子どもを守るつもりなら、もしかしてそうした提案も出て来るかもしれません。

批判すべきところは批判していますが、菅総理は小学校35人学級を実現したり、ふたり親困窮世帯への給付金を決定するなど「仕事人内閣」にふさわしい実績もおありです。

だからこそ、菅総理と自民党の議論を私は注視します。

子ども庁は少子化対策のためでなく、子ども自身を守るために設置すべきです。

子どもを大切にする国であれば、子どもを安心して産み育てることができます。

子ども若者を守らない、投資しない、児童手当や教育の無償化も十分ではない、日本からそんな「子育て罰」をなくしていくことが、少子化対策の王道だと私は考えています。

読者のみなさんも、菅総理と自民党が、子ども若者を大切にし投資するかどうか、ともに注視しましょう!