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新入社員も入社半年経過。季節外れの「五月病」にご注意。原因の多くは上司自身です。

曽和利光人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長
「嗚呼・・・なんだかもう限界・・・」(写真:アフロ)

■そもそも「五月病」とは?

もともと「五月病」とは、医学的な病名ではなく、大学生が入試までは気を張り詰めて頑張っていたのに、入学すると早々に無気力になってしまうことを指した言葉でした。もちろん、「五月病」がひどくなれば、うつ病など本当の病になることもあります。

そして近年では、新卒で入社した社員が入社直後に無気力になることにも使われるようになりました。

さまざまな調査によるとおおよそ4人にひとりは(あくまで主観的にですが)「五月病」らしきものを経験するということで、どんな人でも陥ってしまう可能性のある「病気」です。

皆さんにも経験された方がいらっしゃるかもしれません。

そして、コロナ禍でテレワークが増え、対面コミュニケーションが減った今、もしかすると、五月病になるタイミングが遅くなっているかもしれません。ある会社の調査によれば、入社1年後の新入社員の半数以上が転職したいという気持ちになっているという結果もありました。

■最近でも入社後に無気力になる、という問題は変わっていない

このように、何十年も前から巷間に知られていた「五月病」ですが、その実情は今でも変わっていません。

「オンボーディング」(新入社員の定着を促進する諸施策の総称として最近使われている言葉。もともとは飛行機や船への搭乗などを意味する)などと言って、会社側も意識して新入社員が五月病になって、メンタルヘルスを悪化させたり、ひいては早期退職につながったりしないように努力してきてはいます。

しかし、それでも入社後3カ月以内に新入社員に何らかの精神的問題が起こりやすいという事実はあまり変化していません。

そのせいか、何十年もの間、大卒新入社員の3年以内の離職率は約30%のまま推移しています。

■なぜ「五月病」が起こるのか

このように、やっとの思いで採用した新人が潰れたり、早期退職したりと、甚大な問題を起こす「五月病」ですが、なぜ起こるのでしょうか。

大きな原因のひとつと考えられているのは、リアリティショック(入社前に抱いていたイメージと現実とのギャップ)です。

2019年のパーソル総研の「就職活動と入社後の実態に関する定量調査」では8割近くの新入社員がリアリティショックを感じているとのことです。

同調査によれば、最もギャップを感じるのは、給与や昇進スピードなどの「待遇面」ですが、その次がやりがいや達成感などの「仕事面」、そして上司の能力への失望や関係性など「上司との関係面」でした。

■「上司」が問題であることも多い

待遇は会社のルールなので、コントロールしにくいところです。しかし、仕事のやりがいや達成感などは、上司が新人に対して、仕事の価値や意義、ゴール設定などをきちんと意味づけができていれば解決できることです。

同じ仕事をしていても、意味づけによってモチベーションは大きく変わります。

仕事で能力を見せつけて「うちの上司はすごい」とリスペクトを獲得できてなかったり、部下と人間関係を作れていなかったりする、いわゆる上司に対するリアリティショックは、言うまでもなく上司が解決すべき問題です。

要は「五月病」は上司が原因の可能性も大きいということです。

■「自分がつらいのは、上司のあなたのせいなんですよ!」

それなのに当の上司が、自分が原因であることに全然気がつかずに、落ち込んでいたり無気力になっていたりする新人に対して、「どうした? 大丈夫? それ、五月病なんじゃない?」などと軽口をたたけば、相手は「あなたが原因なんだけどな……」と心の中では思っているかもしれません。

もちろん、人間関係が築けていない上司に、新人がストレートにそんなフィードバックをしてくれるはずがありません。

苦笑いしながら「そ、そうですか……」ぐらいの力無い返事ぐらいが関の山でしょう。

「この人には何を言ってもダメだ」と思われてしまうと、その先はサポートしたくても相手は心を閉ざすばかりです。

新人にではなく、マネジメントに問題がないか振り返る

■人は、自分を正当化しがちな存在です。

採用したばかりの新人が仕事や職場に馴染めずにいれば、それを新人本人の問題と思ってしまうことも多いでしょう。

実際、すぐに「あいつは採用ミスだ」と言うような心ない上司たちを何人も見てきました。

もちろん、新人個人に原因があることもあります。しかし先に述べたように、五月病やリアリティショックは多くの人が陥ってしまう現象であり、多くは仕事環境、つまり上司やマネジメントに問題があることは明らかです。

もし自分の職場の新人が五月病的な症状になっていたら、マネジメントに不適切なところがないかを真っ先に疑うべきです。

■「できない人を活かし、できる人に変えていく」のがマネジメント

もっと言うと、万が一、新人個人に大きな原因があったとしても、それを「採用ミス」だと言って対処を放棄する人は、上司失格だと私は思います。

「できる人をマネジメントする」ことは誰だって簡単にできます。マネジャーとは「できない人(に現状なってしまっている人)をなんとか活かして、できる人に変えていく」ことではないでしょうか。

それを「採用ミス」だと大声で主張するのは「私にはマネジメント能力はありません」と宣言しているようなものです。

この少子化時代、すなわち人手不足時代は、育成力勝負の時代とも言えます。

五月病に陥った新人を救い出す力は、上司の皆さんには必須の能力なのです。

OCEANSにて若手のマネジメントに関する連載をしています。こちらも是非ご覧ください。

人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長

愛知県豊田市生まれ、関西育ち。灘高等学校、京都大学教育学部教育心理学科。在学中は関西の大手進学塾にて数学講師。卒業後、リクルート、ライフネット生命などで採用や人事の責任者を務める。その後、人事コンサルティング会社人材研究所を設立。日系大手企業から外資系企業、メガベンチャー、老舗企業、中小・スタートアップ、官公庁等、多くの組織に向けて人事や採用についてのコンサルティングや研修、講演、執筆活動を行っている。著書に「人事と採用のセオリー」「人と組織のマネジメントバイアス」「できる人事とダメ人事の習慣」「コミュ障のための面接マニュアル」「悪人の作った会社はなぜ伸びるのか?」他。

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