■女性活躍を何十年も推進してきた

男女雇用機会均等法が施行され、すでに30数年が経ちました。それ以前、女性は時間外労働が制限されていたり、深夜残業が原則禁止されていたりしたわけですが、均等法施行後は、採用や教育、配置、福利厚生などで女性であることを理由とした差別的取扱いが禁止されました。

これで、女性がどんどん社会進出をしていくことで、多様性が高まって組織の創造性が向上し、少子化によって厳しくなってきている労働力不足の対策にもなり、万々歳となるという目論見でした。

■しかし、残念ながら成功したとは言えない

ところが、HR総研の2018年の調査によれば、現在でも社員数300名を超える企業の女性正社員比率は30%未満が約7割、管理職にいたっては10%未満が約8割です。

世界経済フォーラム(WEF)の男女平等度を示すジェンダー・ギャップ指数でも、2019年末の調査で、日本は過去最低の121位(153カ国中。120位アラブ首長国連邦の下)という状況です。

もちろん、ジェンダー・ギャップ指数の計測方法等、いろいろ議論があるのは承知していますが、さまざまな状況証拠を客観的に見れば、日本で女性活躍が成功しているとは決して言えないでしょう。

■男性側のぼやきもせつない

さらにせつないのがこれらの報道などを見てネットなどにあふれる男性側のぼやきです。

曰く、「働かなくていいのであれば、オレだってそうしたい」「男性だと無職で、女性だと主婦。うらやましい」「管理職なんてなりたくない」「幸福度は女性のほうが上だし、自殺率は男性のほうが高い。これで男性上位の社会だなんて言えるのか」云々。

即座に肯定する気にはなりませんが、良し悪しは別として「女性が活躍できていない」報道を見ている男性陣の本音がみえているように思えます。男性とて、今の状況を望んでいないということです。

■お互い疑心暗鬼で「相手が悪い」と思っている

問題はかように複雑です。もっと社会進出したいのに「ガラスの天井」に阻まれて、結果として活躍できない女性は女性で辛いでしょう。男性は男性で個々人では自分が女性の活躍を拒んでいるわけでもないのに、それを世界中から男性中心社会だ、閉鎖的な社会だと非難されて忸怩たる思いに苛まれている。

そして、どちらも「誰かが悪い」、もっと言えば「相手が悪い」とナイーブにも裏では思っているのではないでしょうか。男性は「機会均等なのに女性が活躍しないのは頑張ってないからでは」と思い、女性は「男性は表面的な機会均等だけ取り繕って、本当は女性の活躍を望んでないのでは」と思っているということです。

■おそらくそこには「黒幕」などいない

人は複雑な問題が生じたとき、「あいつのせいだ」とわかりやすい「黒幕」を仕立て上げたがります。そう考えれば、怒りをぶつける対象ができ、ストレスを軽減することができるからです。

シンプルな問題なら、本当の原因である「黒幕」を倒せば一件落着となることもあります。しかし、女性活躍のように、数十年間多くの人がさまざまな方法で挑戦しているのに解決しない問題では「黒幕」はスケープゴートにすぎないことがほとんどです。

女性活躍の原因は、男性でも女性でもなく、システム全体の問題でしょう。私の周囲を見ても、女性の社会進出を阻もうとしている人などいるようにはみえません。仕組み、構造の問題なのです。

■自分から容疑者に名乗りでることなかれ

それをわかりやすい「黒幕」のせいにするのは思考停止です。しかし、そうしてしまうぐらい、女性活躍の問題が難問であったことも事実です(まだ解決できていませんし、私にも正解がわかっているわけではありません)。

そんな状況の中、おじさん上司が軽々しく「うちの会社も、もっと女性が働きやすい職場にしなくちゃなあ、ははは」などと言おうものならどのような反応があるかは想像がつきます。

「あなたのようなおじさんたちが、結局何も効果的なことをしなかったから今の状況があるんじゃないですか」と、せっかく本質的に考えていたかもしれない人たちを、ふたたび「黒幕説」に引き戻してしまうことでしょう。格好の「黒幕」役が現れたのですから。

■「実現しない理想」よりも「具体的な行動」を

女性活躍は30年以上解決できていない難問であるということを心底認識することから始めなくてはなりません。

そもそも「女性も働きやすい職場が大事」であるなんてことはきわめて当たり前のことで、「世界が平和であったらいいのになあ」と言っているようなものです。しかも30年も待たせているわけですから、何もしていない(ように見える)上司が実現しもしない浮ついた理想を具体論もなしに語れば、「本気ではない」と疑われるのは当然です。

それならば小さなことでもいいので、自分がマネジメントしている職場でできることをして、「この人は本当に女性が活躍できる場を作ろうとしている」と感じてもらうのが先ではないでしょうか。

OCEANSにて若手のマネジメントについての連載をしています。こちらも是非ご覧ください。