■採用はどんどん「スカウト型」へ

少子化や景況感を背景とした採用難によって、より効果的なアグレッシブな採用をしようと、スカウト型採用(企業による積極的で主体的な人材採用)への移行が進んでいます。

求人広告からの応募や人材エージェントからの紹介を待って対応する「待ち」の採用から、リファラル(社員や内定者からの紹介)やソーシャルメディアによる候補者集団探しや、ビズリーチ等のスカウトメディア(人材データベース)でスカウト活動を行う「攻め」の採用へと、軸足を移す企業が増えてきました。

この流れは不可逆で、「攻め」の採用ができない企業は人材獲得競争に敗れて、場合によっては事業が立ち行かなくなる恐れすらあると私は思います。

■フォーマルな採用活動では面倒なことは起こらないが・・・

ただ、スカウト型採用が効果的な採用手法であることに疑問の余地はないのですが、経営や人事がヘッジしておくべきリスクはもちろんあります。それはダイレクト化することによって、採用がカジュアルなものになっていくということから生じるものです。

昔ながらの「待ち」の採用は、最初からフォーマルな採用選考で始まります。応募者は履歴書などを持参し、応接室に通され、訓練された採用担当者からしっかりとした面接を受けるわけです。こういうお互いが真面目にしっかりとした意識で参加しているフォーマルなプロセスにおいては、あまり想定外な変なことは起こらずに、粛々と進んでいきます。

■「スカウト型」へのシフトは「カジュアル化」につながる

しかし、採用がスカウト型へシフトすると「待ち」の採用より活動がカジュアルになります。それは「攻め」の採用の本質は、就職・転職活動意識が低い「潜在層」にまでアプローチするということだからです。

就職・転職などをあまり考えることなく、ふつうに日常生活を送っている人に手を伸ばすということで、どうしてもフォーマルな採用の雰囲気は出しにくい。その気のない人に、履歴書を出させたり、志望動機を聞いたりはできません。

それゆえ、企業側が候補者に対する姿勢は、ガツガツした採用活動でなく、できる限り気軽なノリのものにしなければいけません。例えば、会社説明会や採用面接ではなく、OBOG訪問や、情報交換会、イベント、会食などの形式になる。場所も応接室ではなく、会社か学校の近くのカフェ、場合によってはレストランやバーになるかもしれません。

■その「カジュアルさ」がハラスメントを生む

とにかく気軽に、と考えれば、そうなっていくわけです。しかし、ここにリスクがあるのではないかと私は思います。

気軽な場での出会いは、お互いリラックスしているため、軽率で粗忽な言動が出てしまいがちになります。いつもは礼節を保っている社員も、カジュアルな場で後輩に会えば、偉そうにマウントするかもしれません。

カジュアル化することで、様々なハラスメントが発生する可能性があります。実際、リクルーターがOB訪問に来た学生にセクハラをしたという事件も既に発生しているのは皆さんもご存知でしょう。他にも、相手が傷つくひどい発言をしたり、人事や偉い人に紹介してあげるからと何かを強要したりと、パワハラやモラハラ的なことも、事件化しないまでも起こっています。

■雰囲気は「カジュアル」でも、採用担当者は気を引き締めて

こんなことが起こっては、企業ブランドは地に堕ち、せっかく効果の高いスカウト型採用も意味がなくなってしまいます。

採用活動の「カジュアル化」というのはあくまで候補者にリラックスしてもらうことで気軽に企業と接触してもらうことであり、採用担当者(人事に限らず、現場リクルーター等も含め)がリラックスする必要はありません。

表向きはカジュアルに振舞っても、頭の中はフォーマルな採用活動と同じように企業を代表するつもりで人に接しなくてはいけません。採用をスカウト型へシフトする企業は、担当者が「カジュアル」だが「フォーマル」というダブルバインドをこなせるように教育することが必須でしょう。