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「自信がある人」をどう評価すべきか〜根拠のない自信最強説〜

曽和利光人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長
「私は偉い!」(写真:maroke/イメージマート)

■あまりイメージのよくない言葉、「自信」

「自信」と言う言葉は、採用面接においては良く使われる言葉ではありますが、人によって様々な使われ方をする要注意ワードです。謙虚さを美徳とする文化を持つ日本の社会においては比較的「社会的望ましさ」の低い言葉のようであり、例えば「彼は自信家だ」と言う場合、なんとなく「鼻持ちならない不遜な人物」であるような悪い印象を持ちませんか。

■「自尊心」の意味で使われていることが多い

そのためか、「自信」は本来の「自分を信じる(self-confidence)」というフラットな意味合いよりも、「自尊心(self-esteem、pride)」的な「自分を偉いと思っている」というような意味合いで使われるケースが多い。ですから、私はあまり「自信」という言葉をそのまま使わずに、特別な意味と捉えてもらえるよう、あえて「根拠のある自信」「根拠のない自信」というような修飾語をつけて使ったり、「自己効力感(self-efficacy=「ある結果を生み出すために必要な行動を、自分はうまく行うことができるという信念を持った状態」)」のような定義が明確に定まった心理学用語を使ったりするようにしています。

■根拠の「ある」自信と「ない」自信

「根拠のある自信」とは、「私は東大出身だから」「体育会で主将をやっていて、大会で優勝したから」「会社で部長をしており、年収1000万円超だから」等々の、なんらかの現実世界における事象を根拠として生じる自信を指します。上述の言葉で言えば「自尊心」にやや近い内容の言葉遣いかもしれません。

「根拠のない自信」とは、特に何の根拠もなく、「努力は報われる」「なんとなくうまく行くような気がする」「人は信じるに足るものである」「未来は明るい」などの信念を持つような自信を指します。上述の「自己効力感」や、その他「楽観的(optimistic)」「基本的信頼(basic trust=「世界に対する基本的な信頼感。アイデンティティの概念を提唱したエリクソンの用語」)「ポジティブ思考(positive thinking)」等に近い言葉かもしれません。

■「ない」ものは崩せない

多くの会社の求める人物像を聞いていると、上の2つの「自信」(根拠のあるなし)は、「ない」という言葉の否定的なニュアンスとは違って、「根拠の『ない』自信」タイプが重視されています。というのは、「ある自信」は、根拠があるがゆえに崩れることがあるからです。「東大だから」と言っている人は、ハーバード大学の人が来たらシュンとなってしまう。一方、「ない自信」は、根拠がもともとないが故に、あまり崩されることがなく、より「強い」自信であると思われているようです。

さて、皆さんの会社ではどちらを重視していますでしょうか。

人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長

愛知県豊田市生まれ、関西育ち。灘高等学校、京都大学教育学部教育心理学科。在学中は関西の大手進学塾にて数学講師。卒業後、リクルート、ライフネット生命などで採用や人事の責任者を務める。その後、人事コンサルティング会社人材研究所を設立。日系大手企業から外資系企業、メガベンチャー、老舗企業、中小・スタートアップ、官公庁等、多くの組織に向けて人事や採用についてのコンサルティングや研修、講演、執筆活動を行っている。著書に「人事と採用のセオリー」「人と組織のマネジメントバイアス」「できる人事とダメ人事の習慣」「コミュ障のための面接マニュアル」「悪人の作った会社はなぜ伸びるのか?」他。

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