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2017年・このK-POPがおもしろかった![ガールズ編:3]──TWICE、BLACKPINKなど

松谷創一郎ジャーナリスト
TWICE「KNOCK KNOCK」MVより

■10~6位

▼第10位:K.A.R.D「Hola Hola」

(YouTube: 約2125万views/2018年1月29日現在)

 2016年末に姿を現したK.A.R.D(カード)は、K-POPでは珍しい男女混成4人組のグループ。昨年は「Don`t Recall」「RUMOR」など5曲のMVを発表するなど、精力的に活動を繰り広げました。音楽的にもパフォーマンス的にも非常に高度で、新人とは思えないレベルです。

 この「Hola Hola」は、彼らの正式なデビュー曲。ジャンルで言えば、昨年注目されたムーンバートンです。EDMの一種ですが、それほど速くないテンポなのが特徴です。男女の歌い分けやダンスの挿入、加えて落ち着いたメロディーラインと、非常にバランスが良い一曲です。

 K.A.R.Dは、おそらく男女混成という点がプラスにもマイナスにも働くでしょう。日本でも韓国でも、男女混成グループはなかなか成功しない傾向にありますが、ただしそれはアイドルとして受容をされた場合です。しかし、K.A.R.Dはおそらくアイドルファン層は狙っておらず、完全にアーティスト志向。もっと言えば海外志向でしょうか。昨年BTS(防弾少年団)がグローバルにブレイクするなど、K-POPはさらに存在感を増していますが、その波に乗れそうな気配を漂わせています。

▼第9位:ジェシカ「SUMMER STORM」

(YouTube: 約402万views/2018年1月29日現在)

 2016年にソロデビューし、「Fly (Feat. Fabolous)」(昨年3位)などでその実力を見せつけた元少女時代のジェシカ。昨年も自分が信じる方向に堅実に進んでいる姿が、しっかりと感じられたのがこの「SUMMER STORM」です。

 ヴォーカリストとしての能力が抜群であることは当然として、そうした自分の魅力をどのような楽曲で引き出すか、非常によくわかっているなと思いました。ただ、ジェシカの場合は今年が勝負かもしれません。ソロデビュー3年目ですが、少女時代のときからのファンをこれからもどれほどフォローしていくのか、そのへんをはっきりさせることを問われるでしょう。より具体的に言えば、アイドル的な売り方からどれほど離れるかがポイントです。年齢も30に近づいていますしね。

▼第8位:テヨン「Make Me Love You」

(YouTube: 約1007万views/2018年1月29日現在)

 ソロ活動3年目に突入し、昨年は4月に1stアルバム「My Voice」を発表したテヨン。秋以降、少女時代は活動停止状態に入りましたが、冬にはミニアルバム『This Christmas』を発表するなど、精力的な活動を続けています。

 昨年は、「Fine」「I Got Love」、SHINeeの故・ジョンヒョンの「Lonely」などでその活躍は見られましたが、そのなかでテヨンの緩急あるヴォーカルが活かされていたのは、この「Make Me Love You」でした。今年から少女時代がないので、ソロ活動はさらに拡大すると思われます。個人的には、もっとアップテンポの曲をやってもいいのではないか、と思います。テヨンはその伸びやかなヴォーカルが特徴ですが、速い曲にも対応できますからね。ちょっと気になるのは、10代のときからともに頑張ってきて、姉弟のような関係だったジョンヒョンが昨年末に突然亡くなったことです。葬式で憔悴しきっていた姿を見て、ちょっと心配になりました。

▼第7位:ソンミ「Gashina」

(YouTube: 約4802万views/2018年1月29日現在)

 2015年にまさかの復活を果たし、昨年も「Why So Lonely」で5位にランクインしたWonder Girlsですが、デビュー10周年目の2017年1月に解散を発表。新たな展開を見せてくれていただけに残念ですが、大ヒットにならなかったので、それぞれの人生を歩むことになったのでしょう。

 そのなかで結成時のメンバーでもあるソンミは、他の事務所に移りさっそくソロ活動を始めました。それがこの「Gashina」です。アレンジやBメロが後期Wonder Girlsを思わせますが、やはりそれは彼女自身がプロデュースに参加しているからでしょう。また、そのルックスの高さもありますが、年齢もまだ25歳と十分に伸びしろがあります。今年は1月早々にダンスミュージック「Heroine」を発表し、こちらも安定感があります。

▼第6位:キム・ドヨン「All night (Feat. Kim Doyeon of Weki Meki)/LONG:D」

(YouTube: 約98万views/2018年1月29日現在)

 昨年夏にデビューしたアイドルグループ・Weki Meki。I.O.Iのメンバーふたりがいることでも注目されますが、そのうちのひとりがキム・ドヨンです。173センチと、K-POPガールズのなかでもかなりの高身長で、Weki Mekiのデビュー曲「I don't like your Girlfriend」でも、頭ひとつ目立っていました。

 LONG:Dのアルバムにフィーチャリングで参加したこの「All night」は、とても素晴らしいダンスミュージック。川を一望できるビルのヘリポートで、ひとり普段着のままダンスするドヨンの姿と音楽が見事にマッチしてもいます。手足が長いから、ひとりでダンスしてもさまになるんですよね。将来がかなり期待できる大型新人の登場です。

■J-POPアイドルを吸収するK-POP

 ここ数年、K-POPアイドルでしばしば見られるのがリアリティーショーと呼ばれるテレビ番組と、そこから生まれたアイドルグループの大ヒットです。2016年であれば、I.O.Iの大ブレイクが記憶に新しいですよね。昨年から今年にかけても、そうした番組がいくつも創られ、そのなかからアイドルグループがいくつも誕生しています。

 そうしたグループには、ある程度特徴があります。それはスクールガールのスタイルを強調していることや、あるいは「かわいさ」をアピールしていることです。語弊を怖れずに言えば、日本のアイドルのようになっています。以下、いくつか見ていきましょう。

▼アイドル学校「綺麗だから」

(YouTube: 約589万views/2018年1月29日現在)

 昨年7月から9月まで放送された『アイドル学校』は、I.O.Iを生んだリアリティーショー『プロデュース101』と同じMnetの番組です。41人が競い合い、最後に残った9人が11月にfromis_9としてデビューしました。

 このMVは番宣用のものではありますが、日本のアイドルを知っている者にとってはものすごい違和感を受けます。はっきり言って、悪夢的な気持ち悪さを感じます。個人的には、古屋兎丸のマンガや園子温の映画『自殺サークル』を連想しました。

 なぜか?

 それはスクールガール的なファッションや楽曲が日本のアイドルと遜色ないにもかかわらず、そのダンスのパフォーマンスの質が高く、さらに個々人のかわいさアピールなどが過剰だからです。ある種のローファイ的な(ゆえにハイコンテクストな読解を必要とされる)日本文化を、韓国的なハイパフォーマンスでやっているからこそ、われわれはそこに強い違和感を受けてしまいます。この路線はfromis_9にも引き継がれています。

 韓国は日本統治下の時期もあり、距離も言語も近いので、日本文化の影響をそもそも受けています。もちろんこの『アイドル学校』が日本に強く影響されたとは言い切れませんが、その非常に媚びるパフォーマンスは日本のアイドル文化とやはり近いです。タイプは異なれど、ひとむかし前はK-POPアイドルがギャグにしていたような過剰なブリッコ的なアイドルが、最近K-POPにも増えてきているのです。それは数年前からのA PinkやGFRIENDあたりから強まり拡大している印象を受けます。

▼B-Side (Real Girls Project)「THE IDOLM@STER」

(YouTube: 約28万views/2018年1月29日現在)

 昨年4月からAmazonプライムビデオで公開されている『アイドルマスター.KR』。リアリティーショーを当事者が再現するという、非常に変わった形式のドラマですが、そこから生まれたのがReal Girls Projectとそのユニット・B-Sideです。

 もともと日本のアイドル育成シミュレーションゲームが原作なこともありますが、そのコンセプトは非常に日本のアイドルっぽい。もちろんパフォーマンスのレベルは高いのですが、それゆえアイドル学校と同じような違和感を受けます。ざっくり言えば、「日本のアイドルみたいなのに、上手!」というものですね。

 このようにK-POPとJ-POPのアイドルは徐々に距離が近づいていますが、それが決定的となったのは、今年秋元康さんが参加するMnetの『プロデュース48』。要は、専用劇場を準備するなどAKBグループのシステムをK-POPに取り入れるというものです。これまで受け手主導だからこそヘタウマなパフォーマンスが愛されたJ-POPアイドルですが、秋元康プロデュースであるにもかかわらずK-POPのウマウマなパフォーマンスが生まれるわけで、これは日本のアイドルにとっては驚異的な存在になるかもしれません。

■5~1位

▼第5位:EXID「Night Rather Than Day」

(YouTube: 約1030万views/2018年1月29日現在)

 3年ほど前からじわじわと人気を拡大させてきたEXIDですが、昨年はメインヴォーカルのソルジが病気で活動を停止中。4人で活動を続けました。MVでは、この曲と「DDD」を発表しました。最近はガラの悪さをアピールしてきましたが、狙うは女性ファンのハートをつかむ「ガールズ・クラッシュ」。ただ、2016年ほどの人気の獲得は見られませんでした。ソルジがいない状態は、ちょっと厳しいのかもしれません。

 とは言え、この「Night Rather Than Day」は、下品さはそこそこに、ネオンカラー溢れる世界で美しいメロディーを見せています。ファッション的には90年代前半で、音楽的にはオリジナル・ラブを連想しました。今年、渋谷系がリバイバルする可能性がある日本で出したらけっこういい線いくんじゃないかな、という気がします。

▼第4位:TWICE「KNOCK KNOCK」

(YouTube: 約1億6784万views/2018年1月29日現在)

 デビュー3年目を迎え、2017年は日本でも大ブレイクして『紅白歌合戦』にも出場したTWICE。1年間、日韓を行き来しながら働き詰めという印象でした。MVは、2月に発表したこの「KNOCK KNOCK」を皮切りに、5月に「SIGNAL」、6月に日本デビュー曲の「TT -Japanese ver.-」、10月に「One More Time」(日本語オリジナル)、同じく10月に「LIKEY」、12月に「Heart Shaker」と発表してきました。1年間でこの量はすごいです。1月にも日本オリジナルの新曲MV「Candy Pop」を発表したばかり。その快進撃は凄まじく、去年のK-POPシーンは完全にTWICEを中心に回っていたという印象です。YouTubeの再生回数も、日本語曲以外はすべて1億回を超えています。

 そのなかでもっともおもしろかった曲は、この「KNOCK KNOCK」です。「SIGNAL」のような複雑さはないものの、そのシンプルさが上手く働いたポップスです。「SIGNAL」よりも「KNOCK KNOCK」のほうがじゃっかん評判良かったのは、もしかしたら事務所のJYP側も意外に感じているかもしれません。MVもそれほどお金をかけていないことがうかがえますが、ダンスシーンではおもしろい演出をしています。おそらく1/2倍速の音楽に合わせたダンスを倍速で再生することで、早送りみたいな動きのダンスを表現しています。こうしたちょっとした工夫もおもしろいですよね。

 このようなTWICEの快進撃を見ていると、やはり少女時代の全盛期(2009~2011年頃)を思い起こさせます。「Genie」、「Gee」、「Oh!」、「Hoot」、「Run Devil Run」、「Mr. TAXI」と続いたあの流れです。デビューから1年でブレイクしたTWICE人気は、少女時代以上に長く続きそうな予感がします。

▼第3位:ジンソル(今月の少女[LOOΠΔ])「Singing in the Rain」

(YouTube: 約234万views/2018年1月29日現在)

 12人組グループアイドル・今月の少女[LOOΠΔ]は、18ヶ月間かけて毎月ひとりずつシングル曲をリリースし、加えてグループ内ユニットも発表するというもの。そのなかで光っていたのが、ジンソルのこの曲でした。

 これは、かなりかっこいいです。ジャンル的にはフューチャー・ベースだそうですが、とにかくクオリティが高い。ダンス、ヴォーカル、ルックス、すべてがハイレベルです。新人でいきなりこれですから、そのポテンシャルはすさまじいと思います。

 こうしたメンバーを抱える今月の少女[LOOΠΔ]が、今年完全体でどのようなデビューを見せるのか、非常に楽しみです。

▼第2位:BLACKPINK「AS IF IT'S YOUR LAST」

(YouTube: 約2億3051万views/2018年1月29日現在)

 2016年の1位だったBLACKPINKですが、今年も強かった!

 昨年はこの曲だけの発表となりましたが、最近はリアリティショーなどで普段の姿を見せています。BTS(防弾少年団)やTWICEとともに、グローバルに展開する現在のK-POPシーンを牽引しています。昨年日本でもデビューし、渋谷ではTWICEが、原宿ではBLACKPINKが宣伝展開をしていたのが個人的には興味深かったです。若いファンが「TWICEのほうがすごい!」「いやいやBLACKPINKのほうがかっこいい!」といがみ合っているのも含めて、なかなか興味深いなと思っております。仲良くしろよー。

 日本ではTWICEのほうがずっと人気はありますが、YouTubeの視聴回数では2億回を突破するほど。東アジアに特化したTWICEと、それだけでなく欧米にもリーチするBLACKPINKとの違いが、この視聴回数に表れているのでしょう。

 「AS IF IT'S YOUR LAST」は、これまでの4作よりもメジャー感が強い一曲です。サビは非常に聴きやすいメロディーラインで、全体的にも構成はそれほど複雑ではありません。個人的には、その存在感は2NE1における「Go Away」(2010年)にあたるのかな、と思いました。非常に汎用性があるという点で。

 となると、次は「I AM THE BEST(ネガチェイルチャラガ)」のような、強いユニークさとそれによる爆発性がある曲をリリースできるかがポイントとなるでしょう。今年中のカムバックが予定されており、現在はミニアルバムのレコーディング中とのこと。韓国や日本でどうブレイクするかというだけでなく、欧米でどれほど評価されるかが今年のポイントとなります。期待したいです。

▼第1位:IU「昨夜の話(Last night story)」

(YouTube: 約873万views/2018年1月29日現在)

 今年、私がもっとも聴いた曲はIUの「昨夜の話(Last night story)」でした。聴けばすぐにわかりますが、日本ではダウンタウンなどがカバーした「オジャパメン」。原曲は、男性3人組のアイドルグループ・消防車(ソバンチャ)の1987年の大ヒット曲です。それを30年後にK-POPの若手女性シンガーでもっとも実力のあるひとりIUがカバーしたのです。

 詳しくは上の記事でもう書いたのですが、ただ漫然とカバーするのではなく、そのアレンジやファッション、MVと、ノスタルジックながらも現代風にアップデートしているところが、K-POPの地力を感じさせます。80年代の派手なアイドルソングが、こんなにもオシャレで落ち着いた曲になるというのはすごい。それが可能なのは、やはりIUの表現力があるからでしょう。3段ブースターでブレイクしたIUですが、これほどまでに切ない歌い方もできるのです。年々その表現の幅を広げていて、これぞ歌手だなと感嘆させられます。MVも4:3のスタンダードサイズの画面にくすんだカラー、衣装も70年代と90年代を織り交ぜて独自の時代感を表しています。

 ここ10年近く、韓国では音楽だけでなく、映画『サニー』やドラマ『応答せよ!』シリーズなど、過去をいかに捉え直すかという「復古調」のカルチャーが一定の支持を集めてきましたが、「昨夜の話(Last night story)」は単なる「復古調」というよりも「リブート(再起動)」に近いものです。過去の文化資産をいかに未来に向けて運用するか、そのことに自覚的だなと思いました。

 というわけで、ここまで30組30曲のミュージックビデオを観てきましたが、やはりK-POPは豊かですね。2018年のK-POPからも目が離せません! それではまた来年!

【2017年・このK-POPがおもしろかった![ガールズ編:1]──ヒョナ、Oohyo、イ・ヒョリなど】

【2017年・このK-POPがおもしろかった![ガールズ編:2]──エイリー、Red Velvetなど】

■2016年

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ジャーナリスト

まつたにそういちろう/1974年生まれ、広島市出身。専門は文化社会学、社会情報学。映画、音楽、テレビ、ファッション、スポーツ、社会現象、ネットなど、文化やメディアについて執筆。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(2012年)、『SMAPはなぜ解散したのか』(2017年)、共著に『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』(2017年)、『文化社会学の視座』(2008年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(2008年)など。現在、NHKラジオ第1『Nらじ』にレギュラー出演中。中央大学大学院文学研究科社会情報学専攻博士後期課程単位取得退学。 trickflesh@gmail.com

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