SMエンタは“韓国のジャニーズ”になれるか──東方神起の兵役、EXOメンバー脱退騒動などに揺れる現状

映画『I AM: SMTOWN LIVE WORLD TOUR~』(2012年)

SMエンタが抱える難題

 K-POP界でちょっとした変動が起こりつつあります。東方神起や少女時代を抱える韓国最大の芸能プロダクション・SMエンターテインメントが、徐々に力を落としつつあるのです。実際、最近のSMエンタには4つの難題が生じています。

 ひとつが、東方神起・ユンホの兵役による活動停止です。先日もお伝えしたとおり、今年数え年で30になるユンホは、年内に兵役入りすることが確定的です。これによって2年以上の活動停止を余儀なくされます。予定されていたこととは言え、このダメージはかなり大きいでしょう。

 次に挙げられるのは、昨年秋のジェシカ脱退やメンバーの恋愛ゴシップによる、少女時代人気の上げ止まりです。そもそもジェシカ脱退の背景にも恋人の存在がありましたが、サニーとソヒョンを除くメンバー6人の恋愛がスクープされました。先日もユリと阪神タイガースのオ・スンファン投手の恋愛が発覚したばかり。今後予想されるのは、メンバーの突然の結婚などによる活動停止でしょう。

 そして、最近噂されているのは、EXOの中国人メンバー・タオの脱退騒動です。先月、タオの父親がWeibo(中国版Twitter)で脱退を匂わせる発言をし、今月に入ってからはタオ自身のInstagramのプロフィールから「EXO」という単語を削除されました。どのように決着するかは、まだ見えません。EXOは、昨年も中国人メンバーのクリスとルハンが突然脱退しており、現在中国人メンバーはレイひとりだけとなりました。

Red Velvetの1stミニアルバム『Ice Cream Cake』
Red Velvetの1stミニアルバム『Ice Cream Cake』

 最後にもうひとつ加えるならば、昨年夏から続くf(x) ・ソルリの活動停止と、新人ガールズグループ・Red Velvetの伸び悩みです。ソルリはドラマ『花ざかりの君たちへ』で主演に抜擢されるなど、“f(x)の顔”といった存在でした。しかし、ネットでのファンからの誹謗中傷によって傷つき、いまだに復活できません。つい先日も、ソルリを除いた4人で広告撮影を行われ、その去就が注目されています。一方、昨年デビューしたばかりのRed Velvetは、少女時代やf(x)ほどの勢いはまったく見られません。3月にはいきなりメンバーをひとり増やしたほど。

 こうした状況とは、世代交代が上手くいっていない状況だと捉えられるでしょう。ベテラン勢(東方神起・少女時代)が上げ止まりするなかで、その下の若手がEXO以外は上手く育たず、さらにEXOは中国人メンバーのゴタゴタが生じているのです。

北米に目を向けるYG

 SMエンタの陰りは、実際に格付けにも表れています。つい最近、韓国の格付け会社・ブランドストックは、エンターテインメント部門でSMエンターテインメントを2位に格下げしました。代わって1位に立ったのはYG ENTERTAINMENT。YGは、2年前に世界的なブレイクを果たしたPSYをはじめ、BIGBANGと2NE1も世界的に人気が高まっています。特に注目されているのは、年内に予定されている2NE1・CLの全米ソロデビューです。

 YGとSMエンタは、その方向性が明確に異なります。YGは、PSYのまさかの世界的ブレイクもあり、明確に北米に照準を絞っているように見えます。それは、音楽性にも強く表れているでしょう。BIGBANGの新曲「Loser」「BAE BAE」もそうですか、そこでは中国や日本ではハードルが高そうなゴリゴリのサウンドが繰り広げられています。

 対してSMエンタは、日本のアイドルグループ文化の影響も受け、現在も中国と日本をはじめとする東アジアに狙いを定めています。SUPER JUNIORやEXO、f(x)に中国人メンバーを入れ、中国ではSUPER JUNIOR-MやEXO-Mと個別に活動しているように、台湾やシンガポールなども含む中華圏を強く意識しています。実際、SMエンタのキム・ヨンミン社長は東アジアに照準を絞っていることを早い段階から明言しています(※)。

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 上の図のように、SMエンタは順調にグループ数を増やし盤石の体制を築きあげようとしてきました。しかしここにきて、若手が順調に育たず、頼みの綱であるEXOも中国人メンバーの脱退が相次ぐなど、その戦略に陰りが出てきたのです。

過去のジャニーズに重なる姿

 こうしたSMエンタの不調で思い出すのは、むかしのジャニーズ事務所です。SMエンタの戦略は確実にジャニーズをお手本にしていますが、ジャニーズもずっと順調だったわけでもありません。

 特に90年代前半は、ジャニーズにとっては苦しい時期だったかもしれません。光GENJI・男闘呼組・忍者が相次いで解散し、SMAPに人気が集中する状況が続きました。当時は、小室哲哉プロデュースのtrfや安室奈美恵、華原朋美などが大人気だった頃。デビューから間もないTOKIOやV6にはそれほどの勢いは見られませんでした。

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 上は80年代以降のジャニーズ所属グループの変遷ですが、順調と言えるのはやはりSMAP以降と言えるでしょう。もちろんSMAPですらメンバー脱退や2度の不祥事があったように、ずっと安定していたわけでもありません。しかし、そういうことを乗り越え、数年おきに新グループをデビューさせ、各世代にファンを作る戦略を続けてきた結果として、現在のジャニーズ帝国が完成されていったわけです。

 SMエンタの現在とは、この90年代前半のジャニーズに重なります。若手が上手く育たず、さらに兵役という韓国独自の難関もあります。ジャニーズと異なるのは、ガールズグループも事務所の柱だということ。そこで重要視されるのは、少女時代はもとより、f(x)とRed Velvetの将来でしょう。この2グループがブレイクしないことが、もっとも気がかりです。

SMエンタは新たな未来を切り開けるか

 以上のことは、ティーンを中心とする若い層に向けたアイドルを抱える芸能プロダクションとしての難関であるとも言えます。奇しくも3年前、SMエンタのキム・ヨンミン社長は、「アイドル歌手の寿命はどの程度なのか?」という質問に対し、以下のように回答しています。

それは、「鶏が先か、卵が先か」という問題だ。日本ではSMAPが20年以上、嵐も10年以上活動している。しかし、国内アイドル歌手たちは、自分たちの寿命を自ら制限・規定していることが悲しい。ちゃんと自己管理できれば長期間活動できて、アイドルの寿命はいくらでも長くなるでしょう。

出典:ソウル新聞2012年4月3日付「キム・ヨンミンSMエンタテイメント代表が語る『Kポップと韓流の未来』」(韓国語)

 ここで、SMAPや嵐が例として出されているのは興味深いところです。なぜなら、韓国ではアイドルが長く活動するという前例が、まだあまりないのです。兵役を経てメンバーが再結集し活動を再開した神話(シンファ)が新たな前例を作り上げたように見えますが、ガールズグループでは日本のMAXのような例はまだありません(Brown Eyed Girlsがそうなりつつあるとも言えますが)。

 SMエンタがこのまま凋落していくのか、ジャニーズのように新たな未来を切り開くことができるのか、今後の注目はそこにあるでしょうか。

※……ソウル新聞2012年4月3日付「キム・ヨンミンSMエンタテイメント代表が語る『Kポップと韓流の未来』」(韓国語)

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