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博物館から盗まれたチャンピオンベルト

林壮一ノンフィクションライター
(写真:Shutterstock/アフロ)

 1990年、シュガー・レイ・レナードが南アフリカを訪れた折、釈放された直後のネルソン・マンデラにWBCのベルトを贈呈した。その後、このベルトはヨハネスブルグ内のソウェトに建つ国立マンデラ博物館に飾られていたのだが、先月、盗難にあったことが明らかになった。

 同ベルトは博物館で最も貴重な展示品の一つであり、およそ2950ドルの品だという。TimesLIVEが報じた。南アフリカ大統領を務めたマンデラが鬼籍に入ったのは2013年12月5日。故人を偲ぶ思い出のベルトを盗んだ人間がそれを売りに出せば、容易に身元が割れるだろう。

写真:ロイター/アフロ

 当時について、レナードは想起する。

 「南アフリカを訪問した際、彼に招待されて夕食をご馳走になったんだ。私がマンデラ氏の自宅前の玄関前に佇むと、ドアの向こうから彼の声が聞こえた。想像できるかい? その状況を。

 ドアが開かれるとマンデラ氏は私を抱きしめてくれた。そして、『あなたとお会い出来るなんて感動です』と仰ったんだ。私も『いえいえ。こちらこそ、感動しています』って言ったんだよ。足に力が入らず、よろけそうになったよ」

写真:ロイター/アフロ

 2022年7月1日、博物館の職員が出勤すると鍵が開けられていたので、前日の犯行だと見られている。地元警察は現場に残った指紋を採取・検出して捜査を続けている。

 一刻も早くベルトが博物館に戻ることを願ってやまない。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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