クリント・イーストウッドがメガホンを握り、第77回アカデミー作品賞、監督賞などにセレクトされた映画『ミリオンダラー・ベイビー』。個人的には内容が突飛過ぎて感情移入出来なかったが、GLEASON’Sジムを撮影現場とした点には親近感を覚えた。

写真:ロイター/アフロ

 そのニューヨーク、ブルックリンに建つGLEASON’Sジムが20周年を迎える。そして8月11日から4日間のスケジュールで、恵まれない環境で生きる若者たちと交流するサマーキャンプを企画した。場所はブルックリンではなく、ニュージャージー州アトランティックシティー。

撮影:筆者 GLEASON’Sジム近くの風景
撮影:筆者 GLEASON’Sジム近くの風景

 同ジムで指導者として汗を流すマーク・ブリーランド、アイラン・バークレー、ファン・ラポルテ、そして、女子ボクシング界の強豪ヘザー・ハーディ、更にはWBC会長のマウリシオ・スライマンがキャンプに参加する。

WBCのマウリシオ・スライマン会長
WBCのマウリシオ・スライマン会長写真:ロイター/アフロ

 トップ選手が集うことが目的のキャンプではない。ボクシングについて語り合い、レジェンドたちと練習し、またはアドバイスを受けたりと、困難に立ち向かった先人たちの生の声を若者に伝えることが目的だ。

 Gleason’sジムのオーナーであるブルース・シルバーグレードは「男性、女性、子供、ボクシング経験がゼロでも参加可能。初心者も豊富な経験のある方も、それぞれに合うメニューを組みます。どうぞいらして下さい」と呼び掛けている。

撮影:筆者 GLEASON’Sジムのパーカーを着る3階級制覇チャンプ、アイラン・バークレー
撮影:筆者 GLEASON’Sジムのパーカーを着る3階級制覇チャンプ、アイラン・バークレー

 今回、そのスタッフの顔ぶれの中に、アイラン・バークレーの名を見付けて嬉しくなった。WBCミドル級、IBFスーパーミドル級、WBAライトヘビー級チャンピオンとなった男である。3本のベルトを獲得したうちの2回は、あのトーマス・"ヒットマン"・ハーンズを下しての戴冠だった。

 が、プロモーターに<斬られ役>として扱われ続けた彼は、実力に見合うだけの功績も財も残せず、一時はホームレスシェルターで暮らしていた。生活費を工面するためにと、50歳に手が届きそうになりながらも、現役選手としてリングに上がりたいと語ったこともある。※バークレーについて詳しくお知りになりたい方は、拙著『マイノリティーの拳』(光文社電子書籍)をご覧ください。

撮影:筆者
撮影:筆者

 「人間なんて信用してたまるかよ。俺は奴隷として利用されたんだ」

 現役時代も、引退してからも何度となくバークレーはそんな言葉を発した。そんな元チャンピオンの心の叫びを耳にする度に、私の胸も締め付けられるように感じてきたが、このところ精神的に落ち付いているようだ。

 素敵なサマーキャンプとなることを心から祈る。