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14戦全勝12KOの指名挑戦者は3階級制覇チャンプに挑めるか?

林壮一ノンフィクションライター
(C) Esther Lin/SHOWTIME

 昨年12月5日、3階級制覇王者のジャーボンテイ・デービスがイサック・クルスを116-112、115-113、115-113の判定で下して、WBAライト級タイトルを防衛した。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20211207-00271435

 目下、26戦全勝24KOで、パウンド・フォー・パウンドでも上位に名が挙がるデービスにしては、苦戦を強いられた。

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 この日のファイトでデービスは、代役を相手にした。本来なら、14戦全勝12KOの挑戦者、ローランド・ロメロを迎え撃つことが決まっていたのだ。会場はLAのステイプルズ・センター。同アリーナは、クリスマスに「Crypto.com(クリプトドットコム)アリーナ」という名に変わることが決まっており、ステイプルズ・センターとして最後のボクシング興行であった。

 対戦相手が急遽変わったことが、デービスのモチベーションを下げた、という説もある。

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 当初、デービスvs.ロメロという26歳の全勝同士の対決は、注目を集めていた。試合決定の記者会見の折、ロメロは挑発気味に語ったものだ。

 「12月5日は、ジャーボンテイがこの俺にノックアウトされる様を目にすることになる。2008年に俺とヤツはスパーをやることになった。でも、あいつは2回もすっぽかしやがった。俺にビビったのさ。

 17歳からボクシングを生業としてきた俺の人生を見せてやる。ジャーボンテイは、リングで逃げ回ることが多いが、あれはアマチュアのやることだ。俺には滑稽に映るね」

 しかしその直後に、ロメロから性的暴行を受けたと主張する女性が現れ、ネバダ州ヘンダーソン警察が本格的な捜査を始めたことから、無敗のチャレンジャーはリングに上がれなくなった。

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 ヘンダーソン警察の数カ月間を費やした検証の結果、ロメロは「シロ」と断定される。無敗の挑戦者はこの程、SNSで現在の心境を綴った。

 「俺は潔白だ。そんな申し立てが実証される筈も無い。全てが終わったが、虚偽の発言によって自分はチャンスを失ったよ。夢を破壊されたし、大金を稼ぐ機会も奪われた」

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 ロメロはWBA1位で、指名挑戦権を持っている。彼とデービスとのファイトはPPVでの放送も決まっていた為、早目に仕切り直してほしい。

 思いがけない形で2021年7月17日以来リングに上がれていないロメロだが、パフォーマンスに影響が出ないことを祈るばかりだ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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