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12月18日、またまたYouTuberがPPVでファイト

林壮一ノンフィクションライター
Stephen Dunkley/Queensberry Promotions

 SHOWTIMEが、12月18日のPPV放送にYouTuber、ジェイク・ポール(24)を起用する。今回の対戦相手は、WBCヘビー級王者、タイソン・フューリーの実弟であるトミー・フューリー(22)。

 現地時間24日にロンドンで、メディア向けの発表が行われた。プエルトリコでトレーニング中のポールはオンラインでの出席となった。

Stephen Dunkley/Queensberry Promotions
Stephen Dunkley/Queensberry Promotions

 オンライン会見でジェイク・ポールは言った。

 「トレーニングキャンプは、巧く運んでいる。バケーションも兼ねているがな。もう2カ月になるよ。トレーニングし、クルージングも楽しんでいる。最高の経験だね。

 フューリー兄弟は俺を過小評価しているが、その過ちを正したい。トミーは単なる新人だよ。いくら兄がチャンピオンのように扱ったって、そんなレベルじゃないさ。

 タイソン・フューリーは弟をプロモートしてカネ勘定しているんだろう。俺はそう思う。俺自身も全ての試合を自分で演出しているからな。そういった姿には敬意を払うが、今回KO勝ちして、彼らのファン全員をこちらに頂くよ。俺はチャンピオンになるんだ」

 4戦4勝3KOの選手がPPVでメインイベンターとなることなど、本来ならあり得ない。だが、このYouTuberは、大言壮語を繰り返すことで登録者を獲得し、カネを生んできた。ボクサーとして真っ当な道ではないが、SHOWTIMEが煽ることで、ビジネスとして成立してしまったのだ。

Stephen Dunkley/Queensberry Promotions
Stephen Dunkley/Queensberry Promotions

 一方、スーツに身を包んで記者会見場にやって来た7戦全勝4KOのトミー・フューリーも語った。

 「戦うことへの意欲が漲っている。五輪選手や世界チャンプなどとのスパーリングを重ね、毎日、自分を追い込んでいる。誇大広告で戦いには勝てない。口でも戦いには勝てない。拳が全てを決めるんだ。単純なことさ。俺はメディアを使った戦いはやらない。そんなことに興味は無いし、ヤツの挑発も気にならない。

 自分はYouTuberではない。レスラーでもバスケットボール選手でも、UFC選手でもない。俺の鋭いジャブを喰らった時に、ヤツは分かるだろう。『どうして、こんなところで戦ってしまったんだろう?』ってさ。

 4~5ラウンドで仕留めるよ。こんな楽な試合でカネを稼ぐ機会を与えてもらったことに感謝したい。まるで宝くじに当たったようなもんだよ」

Stephen Dunkley/Queensberry Promotions
Stephen Dunkley/Queensberry Promotions

 弟をサポートするWBCヘビー級チャンプ、タイソン・フューリーは話した。

 「これは2人の若者によるエンターテイメントだ。どちらかが打たれ、傷つく。どちらかは、ボクシングで勝ったということになる。ジェイクはプエルトリコで、トミーはモアカムでハードに練習中だ。12月18日は、ちょっと老いてきたジェイク・ポールが酷いダメージでKO負けするだろうな」

 需要があるからこそ、PPVが成立するのは事実である。しかしながら、元統一ミドル級王者、"マーベラス"・マービン・ハグラーが、実力者でありながら世界タイトルを獲得するまでに時間が掛かったように、地道に、ひた向きにキャリアを積んでいるボクサーたちにとって、YouTuberを主役とする興行など唾棄すべきものであろう。

 世界王座に就いても、なかなか幸せになれない男たちと付き合って来た私自身も、やり切れない思いである。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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